第3話 影の都市、 盗まれた友情
砂漠都市の高層建物が夕陽に赤く染まる。
アイゼンハワード、ルアーナ、リュカの3人は、裏通りに立っていた。
「この都市、影が深すぎるな……まるで友情まで盗まれそうだ」
アイゼンは皮肉を混ぜつつ仲間を鼓舞する。
ルアーナは手元の暗号解析に集中しながら、
「アイゼン、冗談言ってる場合じゃない!この暗号、敵のアジト直結だわ!」
リュカは少し顔を曇らせながらも、二人に合わせて足を踏み出す。
砂埃が舞う路地を抜け、敵の監視網をかいくぐる。だが、都市内には奇妙な障害が次々現れる。落とし穴、罠付きの扉、突如出現する警備ロボット――
リュカが華奢な身体を駆使してくぐり抜け、ルアーナは科学的知識で機械を無効化。
アイゼンは皮肉を交えた掛け声で、
「やれやれ、この都市、忍者修行のコースより難しいな」と笑い飛ばす。
◇◇◇
都市の高台にある敵幹部室。日差しを受けて砂埃が舞う中、影のような人物が忍び寄る。
「――レイヴ?」誰も呼ばぬ声。
その頃、幹部室では敵幹部が書類を前に、部下に指示を飛ばしていた。
「奴らが都市に侵入してきた。罠を強化しろ」
部下たちはざわつく。
その時、ドアが激しくぶつかる音と共に、レイヴが乱入する。砂埃まみれ、衣服は逆さまにめくれ、まるで砂漠で転げ回った後のようだ。
「お邪魔しまーす!今日のコーヒーはブラックでいいですか?」
その声は明るく、まるでお茶会に招かれた客のようだ。敵幹部は一瞬、言葉を失う。
「…なんだその格好は…!?」威圧的に構える幹部。
レイヴはにっこり笑い、つまずきながら机に近づく。手が滑って書類をばら撒く。
「ふふ、ちょっと滑っただけですよ…ほら、偶然敵の書類が落ちましたね!」
幹部は眉をひそめる。
「おい、その動きは…まさか――!」
だが次の瞬間、レイヴは床に転がった暗号メモを拾い、素早く懐にしまう。
「いやー、今日の砂は滑りやすいですね~」
部下たちは混乱。幹部は声を荒げるが、レイヴはさらなる滑稽ギャグを連発。
「書類の整理、手伝いましょうか?あっ、手が滑りました!あら不思議、書類がまた床に!」
その度に幹部は苛立ち、部下たちは呆然。レイヴは笑顔を絶やさず、巧妙に情報を引き出す。
部下が漏らした小声の指示
書類の隙間から読み取れる暗号
目を離した瞬間の文書落下
死神レイヴはすべて手に入れる。滑稽に見える行動の裏で、情報を収集していた。
「ふふ、今日はこのくらいで勘弁してやりますか。…さて、次はどの書類を…」
その姿は無邪気で、笑いを誘う。しかし、その背後にある意図は、誰も知らない――仲間にとっては、ただの裏切りのように見えるだけだ。
砂漠の風が吹き抜け、レイヴの笑い声だけが、幹部室に残った。
◇◇◇
都市の影が深まる中、仲間たちは高台で一息つく。
「レイヴ……どこにいるんだ?」リュカは呟く。
アイゼンは砂埃を払いながら笑い、
「奴は……相変わらずおかしな奴だ。でも、この混乱を利用して何かやってるはずだ」
ルアーナも少し笑みを漏らし、
「敵も油断しすぎ。死神のギャグは最強の武器かもしれない」
砂漠都市の夜風に吹かれながら、3人は友情と信頼を再確認する。
そして、どこかでレイヴが滑稽に動いていることを知らず、次なる試練に向けて歩みを進める。




