第1話 さらに南の国へ裏切り宣言
【オープニングナレーション】
さあ、行くぜ。
今夜もまた、ちょっとおかしな冒険が始まる。
主役は、この砂漠の熱風にも負けない男アイゼンハワード。
天才か、皮肉屋か、あるいはただの子ども好きか。誰にもわからない。
そして、その相棒ルアーナ、17歳の科学少女。
素直で真っ直ぐ、でも時々ブチ切れる。アイゼンの無茶には泣くしかない。
さらにリュカ、元囚人、15歳の少年。
華奢だが瞳は澄み切り、静かで優しい。だけどお化けにはめっぽう弱い。
最後に―“死神”と呼ばれた男、レイヴ。
数百歳、自由気まま、毒舌と悪戯で仲間を翻弄。
弱点はヌルヌルしたもの、でも仲間思いな一面もある。
裏切りか、それとも…ただの冗談か。誰にも真相はわからない。
旅の行き先は、風まかせ、砂漠まかせ。
敵の罠、巧妙な暗号、そして死神のイタズラに振り回される、
笑いと涙、友情と裏切り、甘酸っぱくもスリリングな冒険。
果たして、この旅の終わりに
生き延びる者はいるのか?
そして、友情は守られるのか?
さあ、砂漠都市の風が、今、彼らを誘う
『アイゼンハワード最後の旅5 ハメられた罠と笑う死神、盗まれた友情』、開幕だ。
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漠の黄昏は熱をまだ捨てきれず、乾いた風が砂を巻き上げていた。
その真ん中で、死神レイヴが――例のあの適当な笑みを浮かべながら、
いきなり爆弾を投げるように言った。
「俺、あっち敵側に行くわ。」
瞬間、時間が止まった。
ルアーナは解析中のホログラムを落とし、
リュカは手に持っていた水筒を逆さにして、
アイゼンハワードは目を細めて鼻で笑った。
アイゼンハワード
「……な、なんで急に裏切るんだお前は。
昼飯のことで恨んでたか?」
死神レイヴ
「いや、単純に“あっち”のほうが面白そうかなって。」
ルアーナ
「ノリで裏切るなァァァァ!!」
リュカ
「レイヴ……嘘だよね?ね?嘘だって言って……!」
リュカの声が震えていた。
彼だけはレイヴを“怖い存在”ではなく、“大切な兄貴分”として見ていた。
レイヴは一瞬だけ、目を細める。
砂漠の夕陽が、その黒い瞳に縦線の光を落とした。
死神レイ死神「まあ、強いて理由を言うなら――」
ビュオオオオオッ!!
砂嵐が吹きつけ、レイヴのマントがバサァァッとめくれ上がる。
死神レイヴ
「……ッ砂ぁ!!口に入った!!」
ルアーナ
「死神でも砂は食うんだ!?いや知らんけど!!」
レイヴは口を砂まみれにしながら、
「裏切る男のカッコつけ退場」が完全に台無しになっていた。
しかし、本人は気にしない。
去り際、ふとこちらを振り返り、
いつもの毒舌なのに、どこか優しさが混ざった声で言った。
死神レイヴ
「ま、あんまり心配すんなよ。
お前らは俺がいなくても死なねぇ。たぶんな。」
ルアーナ
「たぶんって何!?確率低そうなんだけど!?」
死神レイヴ
「じゃ、敵になったら――
遠慮なく俺を殴れよ、リュカ。」
リュカの肩が震えた。
死神レイヴはそれ以上何も言わず、
砂煙を巻き上げながら砂漠の奥へと消えた。
残された三人は、沈黙。
ルアーナは暗号デバイスを握りしめたまま、
リュカは砂に座り込み、
アイゼンハワードは風に背を向けながら静かに笑った。
アイゼンハワード
「やれやれ……あいつ、絶対裏があるな。
裏切るにしては、目が優しすぎる。」
ルアーナが顔を上げる。
「……やっぱり、罠?」
アイゼンハワード
「罠か、芝居か……
もしかすると、“俺たちを守るため”の裏切りかもしれん。」
リュカは小さな声で言う。
「……連れ戻す。
レイヴは、あんな顔で本気の裏切りなんて……しない。」
アイゼンは肩を竦め、砂を払った。
「よし……行くぞ。
あの死神の正体を暴いて、ついでにぶん殴ってやる。」
ルアーナ
「解析しながらね!」
リュカ
「絶対、絶対レイヴを助ける!」
三人は砂漠の向こう、死神が消えた方向へ歩き出した。
砂漠都市の夜が迫り、
風はまるでどこかで笑っているように吹き抜けた。
こうして、死神レイブの裏切りの謎を追う旅が始まる。
友情が盗まれたのか。
それとも、盗まれたふりをしているだけなのか。




