第五話 親友の墓標、秘密の真相
砂塵の舞う遺跡で、アイゼンハワードたちはローレムの墓標を前に立ち尽くした。
冷たい石に刻まれたインシグニア、それは誰も解けない古代の暗号。
ルアーナが慎重にスマートフォンで石碑を撮影する。
「これで拡大して解析できるわ。石碑の亀裂や微妙な傾きまで、全部データに入れられる」
リュカが静かに覗き込み、指で写真の細部をなぞる。
「……ここ、石の割れ目の方向に意味がある。ローレムが昔話してた符号に似てる」
シグルは石碑の前でふわりと浮かび、薄笑いを浮かべる。
「イヒヒヒ…写真だけじゃなく、俺の感覚でも罠は察知できるイヒヒヒ」
アイゼンハワードは渋くツッコミ。
「ふざけるな、今は笑い事じゃない!」
ルアーナは写真を拡大し、石の表面の微細な文様を順に解析する。
「文字の配置……曲線の角度……ローレム、これ、単なる暗号じゃない。個人的な癖が絡んでる」
アイゼンハワードの脳裏に、遠い記憶が蘇る。
◇◇◇
過去の回想
戦争の戦場、砂煙が目に染みる日。魔族として人間と戦い、互いの命を何度も救い合ったあの日々。
ローレム
「アイゼン、俺たち、勝つためだけじゃなく、大事なものを守るために戦うんだ」
アイゼンハワード
「分かってる。俺たちは戦う理由がある。…お前を、俺たちの友情を、守るためにな」
そして、戦場の合間に笑いあった日々。
小さな町で出会った少女二人の間で揺れる感情、三角関係のもつれ。
ローレムの笑顔と、彼女の瞳を思い出すたび、胸が締め付けられた。
墓標写真を前に、アイゼンハワードは思い出の断片を照合する。
「……あの時、ローレムが俺に教えたことだ。暗号には必ず『友情の証』が隠れている」
ルアーナ
「え……もしかして、石の模様ってローレムの手癖に沿った記号……?」
リュカ
「ここ……角度と線の繋がりを昔の会話に当てはめると、意味が見えてくる」
シグルはにやりと笑う。
「イヒヒヒ、さすがアイゼンの記憶力だイヒヒヒ」
時間をかけ、写真を分析し、回想と照らし合わせることで、暗号の構造が少しずつ解き明かされる。
ローレムの遺言。自らの最期を告げるメッセージ、そして敵の正体に迫る手掛かりが浮かび上がった。
アイゼンハワードは拳を握りしめる。
「……これでわかった。ローレム、お前は最後まで俺に託したんだな」
ルアーナは緊張を和らげるため、ルパン三世風のコミカルな作戦会議を開始する。
「よし、暗号を手掛かりに敵を誘導する方法を考えましょう!」
リュカは肩をすくめる。
「石碑で大真面目に作戦会議…ま、いいけど」
シグルはにやりと笑う。
「イヒヒヒ、こういうときにこそ冒険の醍醐味だイヒヒヒ」
アイゼンハワードは深く息をつく。
怒りと悲しみの中で、冷静さを取り戻し、復讐への決意を固める。
「奴を殺した者を、必ず見つける。ローレム……俺がこの手で裁く」
砂塵の舞う遺跡に、4人の影が長く伸びる。
墓標の前で立ち上がる姿は、哀しみと友情を背負いながら、未来へ進む覚悟を示していた。
そして、笑いと策略を武器に、復讐と真実を追う旅路が再び始まる。




