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【ランキング12位達成】 累計58万PV 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
「アイゼンハワード最後の旅4 ―墓標(インシグニア)に眠る暗号」

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第三話 影の組織、偽りの仮面

南国の古い宿の一室。

ルアーナが広げた魔導解析盤に、古代文字の一部が光を放つ。


「ここ……“影の組織”って読めるわ。ローレムが追ってた連中よ」


アイゼンハワードの手がわずかに震える。

あれほど強かった彼がこの名を前にして、硬直する。


「影の組織……まだ生きていたのか」


リュカが小さく息をのむ。

「アイゼンさんの知り合い……?」


「かつて戦争の裏で暗躍していた暗殺者集団だ。表向きには消えたはずだったが……」


死神レイヴがベッドの上で逆さに寝転び、ニヤリと笑う。

「フフフ……偽りの仮面をかぶる者たちの匂いだねイヒヒヒ。こういう闇は僕の得意分野なんだけどイヒヒヒ?」


「ふざけてる暇があったら手伝え、死神」

アイゼンハワードが低い声で制す。


死神は肩をすくめる。

「わかってるよおじいちゃん。ローレムの魂のこともあるしねイヒヒヒ」


その一言に、空気が重くなる。


南国特有の蒸し暑い裏路地。

街灯がチカチカと明滅し、人の気配が妙に薄い。


アイゼンハワードは杖を軽くつく。

「ローレムが最後に接触した情報屋が、この先にいるはずだ」


だが、路地の奥にいた男は、どこか目が泳いでいた。


「……アイゼンハワードさん。あんたを……待ってた」


ルアーナが不自然さに気づき、肩を引っ張る。

「先生、後ろ……!」


ガシャァン!!


頭上から鉄網、両側からナイフ飛来。

床には爆裂魔法のトラップ。


リュカの反応が早い。

「ルアーナさん、伏せて!」


レイヴがひょいと手を伸ばし、死の気配で位置を読み取る。

「三つ、罠があるよイヒヒヒ。飛んできたのは投擲ナイフ、右は魔力トラップ、上から落ちるのは鉄製のおまけイヒヒヒ!」


アイゼンハワードが杖を軽く振ると――


「《逆相転移カウンターシフト》」


罠が全部、敵の情報屋の方へ反射的に飛ぶ。


「ぎゃあああああ!!」


ルアーナが目を丸くする。

「相変わらず……そんな反応速度、70代のじいさんのじゃないでしょ!」


「まだ退職した覚えはないさ」


リュカが小声で笑う。

「……強いな、やっぱり」


レイヴはケラケラ笑う。

「フフフ……おじいちゃん、今のカッコよかったよイヒヒヒ!」


アイゼンハワードは倒れた情報屋に歩み寄る。


「お前をここに送ったのは誰だ?」


震えながら男は答える。

「……“仮面の使い(マスク・テイカー)”だ……。ローレムを殺した連中……あんたも狙ってる……!」



敵の名を聞いた瞬間、アイゼンハワードの心に再び炎が走る。

ローレムと酒を酌み交わした夜。

戦場で背中を預けあった瞬間。

そして――幼い頃に出会った彼女を巡って、本気で殴り合った日。


「ローレム……なぜお前が、こんな連中に……」


胸が痛む。

怒りと悲しみが混ざる。


その肩に、リュカがそっと手を置く。

「……大丈夫。僕たちがいる」


ルアーナが深く頷く。

「一緒に、犯人を見つけましょう」


レイヴが珍しく真顔で言う。

「ここで死んだ魂は、まだ諦めていないよ……イヒヒヒ」


「……ローレムの魂が、何かを伝えようとしてる」


アイゼンハワードは決意を込めて言う。


「進むぞ。“仮面の使い”の正体を暴く。

ローレムの死の理由……すべて、俺が暴く」


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