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第1話 イーリスの村

魔界へ向かう旅の途中、リスクたちは忘却の町イーリスに立ち寄った。

その名の通り、この町は地図からも記憶からも薄れつつある神秘の地。


挿絵(By みてみん)


イーリスの村は、標高の高い山々と澄み切った空の狭間に浮かぶ、まるで天上の楽園のような場所だ。

その空間そのものが虹の光で満たされ、太陽の角度によって、村全体が七色のオーラをまとったように見える。


だが、ここには黒魔術師マーリンの古き友であるライラが住んでおり、次なる敵、悪魔王ガイアスの情報を求めて訪れるには最適な場所だった。


挿絵(By みてみん)


イーリス族それは、虹を神格化した天翔ける一族の名。彼らの始祖である女神イーリスは、七色に輝く衣を身にまとい、大きな翼を背に持つ美しき存在。天空を音もなく駆け抜けたその飛翔の後には、いつも虹がかかり、天と地を繋いだ。慈愛に満ち、希望を運ぶその姿は、神々の使者として、世界の調和を保つと信じられている。


そんな高貴な一族の末裔にして、見た目も言動も完全にギャルなライラは、マーリンを見つけるなり手を振って駆け寄ってきた。

町の広場に着いたリスクたちのもとに、きらびやかな羽を揺らしながら金髪ギャルが駆け寄ってきた。


「マーリン~~! 超ひさしぶりじゃん! 生きてたんだ~ウケる~!」


挿絵(By みてみん)


現れたのはイーリス族のギャル、ライラ。

虹色のミニスカとハイヒール、唇には艶やかなピンクのグロス、そして背中から生えた七色の羽。どう見ても神の使いというより、ギロッポンのクラブのVIP席にいそうなタイプである。


「……ライラ、お前、相変わらず派手だな」

マーリンは小さく笑った。


「そっちこそ~。昔は悪さばっかしてたのに、今じゃ立派なパーティーの一員とかマジ草」


リスクが不思議そうに尋ねた。

「悪さ……って?」


するとライラは目をキラキラさせて言った。


「昔ね~、アタシとマーリン、魔界でスナック開いてたんだよ! 看板に『人間食べ放題』とか書いて、実は中身ただのネギトロ巻きとかでさ~!」


「それで悪魔たちに襲われかけたんだよな。あのときはヤバかった……」

マーリンが苦笑いする。


「それだけじゃないよ。あたしたち、あの時代、魔界の商人詐欺もやってたし、天界の水ぶっこぬいてマナポーション売ってたし……」


「ちょ、ライラ、そこまで言うな……」


「なーにを今さら~。真面目な顔して人間守るとかウケるんですけど~?」


リスクたちの前にいた黒魔術師マーリンが、かつては魔界でイキっていたチンピラ系だったとは誰も想像していなかった。

だが、それだけにライラとの絆は深い。互いの命を何度も救い合った、戦友でもある。


そんなライラが、悪魔王ガイアスについてぽつりと語った。


「……あいつね、マジでヤバいよ。不死身の体に、チョーベリーマッチョなイケオジフェイス。ぶっちゃけ、アタシのタイプだけどね~♪」


「……いや、そこはどうでもいい」マーリンが冷たく言った。


ライラの話によれば、ガイアスは魂を複数の異界に分散させており、肉体を滅ぼしても何度でも蘇る。しかもそのたびに筋肉量が増える謎仕様。


「どうにかして、戦わずに魔界に入れないか……」

リスクは考え込んだ。


そんな彼に、ライラがポンと肩を叩いた。


「だったらさ、アタシが魔界の門まで案内してあげる! ウチ、裏ルート知ってるから、魔界の税関もスルーできるよ~!」


「裏ルートって……何でそんなの知ってるんだ?」


「昔ナンパした悪魔の元カレが持ってた闇の通行証、まだ使えるかも~って♪」


正直、信用していいのか不安だった。

だが、今のところ、それが唯一の希望でもあった。


勇者アルベルトに授けられたのは、ギリシア神話の神ゼウスの名を冠した装備


イージスの剣

イージスの鎧

イージスの盾

イージスの兜

イージスの具足


〈イージスシリーズにより物理防御・魔法防御 +20%アップ)


さらにシスターマリアには、大魔導士専用の装備が渡された。


大魔導士の杖

大魔導士の法衣

大魔導士のフード

大魔導士の靴

〈大魔導士シリーズにより全ての属性の魔法防御 +20%アップ)


俺、村人リスクにも一つ、特別な武器が用意された。


イージスの弓


道具として使うと風属性魔法『タイフーン』が発動。

空を飛ぶ敵に確率でスタン(気絶)を与える。

※ただし、村人は装備できない。


「……やっぱ俺はサポート役か……」


落ち込みそうになったが、マーリンが笑って言った。


「アンタがいなかったら、アタシもここにいないよ。道を選ぶのは“誰”かじゃなく、“どう歩くか”だからさ」


虹の向こうに続く魔界への扉は、もうすぐそこまで来ていた。

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