第7話 雷堂兄弟、レンジの涙と家族の再生
ONI組の実質ボス、雷堂レンジ。
普段はケンカ無敗、強気、無口、ツンデレ、全部盛り。
そんなレンジの家で
弟・タクミ(小6)がいじめで心を閉ざしたという緊急連絡が入る。
レンジ
「……俺のせいだ。
俺が不良だから、弟まで狙われるんだよ!」
机を拳で殴る。
ガロ
「机が悪くないのは俺でも分かる」
さっちゃん(即ツッコミ)
「レンジ、暴れるな!強さと自責をセットにするんじゃありません!」
レンジ
「ほっとけよ!!」
さっちゃん
「ほっとけるか!強がりを一人で抱え込むの禁止!」
さっちゃんはレンジの弟のタクミも学校に呼んだ。
ONI組の教室の真ん中に、小さく座るタクミ。
タクミ
「……兄ちゃん、ごめん。
僕が弱いから……いじめられて……」
レンジ
「やめろ!お前のせいじゃねぇ!」
アヤメ
「レンジ、言葉荒れてる。
弟に“強面の愛情”ぶつけるの違うでしょ」
さっちゃん
「そうそう。
レンジの兄貴力は100点なのに、表現力が赤点なのよ」
レンジ
「どうすりゃいいんだよ…もう分かんねぇ…」
さっちゃん
「よし、授業、再開します。
今日のテーマは——
“兄弟の心をもう一回、つなぎ直す”
これだけです」
教室がシン……となる。
さっちゃんがこういう時だけは、声が低くて優しい。
ミナト
「……なんか今日はいつもと違うな」
カホ
「うん、いつもは“はい静かにしろバカたれ共〜!”なのに」
さっちゃん
「ちょっと! そこで余計な実況すんなカホ!
今日は真面目な授業なんだよ!」
教室の空気が少しだけ和む。
ミナト
「……つながせる?」
さっちゃん
「そう。
人の心はね、壊れたり折れたりするんじゃなくて、
“ほどける”時があるの。
ほどけたまま放っておくと、
大事な想いも、大事な人も遠くなってしまう。
だから今日は——
ほどけた兄弟の心を、
みんなで優しく“結び直す授業”よ。」
レンジ
「……先生……」
コトリ
「……きれい……」
アヤメ
「なんか今日の先生、詩人みたい」
さっちゃん(軽ツッコミ)
「いつも詩人みたいでしょっ!」
黒板に書かれたのは、ひらがな三文字。
「 に い ちゃん 」
レンジ
「……ッ!」
タクミ
「……あ……」
二人の肩がピクリと動く。
二人の肩がピクリと動く。
さっちゃん
「この言葉、
タクミにとっては“憧れ”で、
レンジにとっては“責任”で、
二人にとっては“本当は宝物”なんだよ」
レンジ、歯を噛みしめる。
タクミは小さな声で
「……兄ちゃん……」
とつぶやく。
さっちゃん
「さ、タクミ。
自分の言葉で伝えていいよ。
噛んでも、泣いても、途中でセキ出てもいい。
誰も笑わないから」
タクミ
「……うん……」
ONI組全員が静かに見守る。
誰一人として茶化さない。
このクラスは、こういうときだけは本当に強い。
タクミ
「——兄ちゃんはね……
怒るし、うるさいし、ゲーム下手だし……
でも……」
泣き笑いみたいな顔をして続ける。
タクミ
「俺のヒーローなんだよ……!
ずっとずっと……!」
レンジの目から、
ガラの悪さ全部吹き飛ぶくらいの涙がドバァァァァと落ちた。
レンジ
「っっだああああああああああああああ!!
タクミぃ!!
お前そんなこと思ってたのかよ!!
お兄ちゃん死ぬほど嬉しいぞぉぉぉ!!」
ミナト
「死ぬな!」
カホ
「いやこの泣き方は天寿まっとうしそう」
サク
「涙で床浸水してんぞ雷堂!」
レンジ
「泣くなって言われても無理だろぉぉぉ!!」
タクミもついに泣き出す。
兄弟、抱き合って号泣。
さっちゃんはそっと近づき、ポンと二人の背中を叩く。
さっちゃん
「……レンジ。
タクミが助けてって言えなかったのは、
お前が悪かったわけじゃない。
“守りたい人ほど、本音言えない”なんて、
よくあることなんだよ」
レンジ
「さっちゃん先生……」
さっちゃん
「でも今日こうして話せた。
それだけで家族はもう前に進めるの。
——兄ちゃん、立派だったじゃん」
レンジ
「……ッ」
再び涙が溢れる。
するとONI組全員が立ち上がり、
「兄貴ーッ!!」
「レンジかっけぇぇぇ!!」
「家族バンザーイ!!」
と、よく分からないコールが始まる。
さっちゃん
「ちょっと待て、なんでライブ会場みたいになってんのよ!
これは授業!! 情緒!!」
でも、怒りながらも笑っている。
教室の空気は、泣きながら笑って、
笑いながら泣いて——
まるで本物の家族みたいだった。
タクミ
「……ONI組って、なんかすげぇな」
レンジ
「おう。
俺の仲間だからな。
世界で一番めんどくせぇけど、世界で一番あったけぇんだ」
ミナト
「褒めてるのか悪口なのかどっち!」
さっちゃん
「レンジ。タクミ。
今日のことで、気持ちはちゃんとつながった。
でもね——
家族って、“1回泣いたら終わり”じゃないの。
これから何度もぶつかるし、綺麗事じゃ済まない時もある」
兄弟、そっと頷く。
さっちゃん
「だからこれ。
二人にだけ、特別な宿題を出します」
タクミ
「……特別?」
さっちゃん
「うん。
毎日でいい。
寝る前に——
“今日のありがとう”を一つだけ伝え合うこと。
口でもいいし、
恥ずかしかったらメモでもいい。
ケンカした日ほど、やりなさい」
レンジ
「……そんなのでいいのか?」
さっちゃん
「そんなのが一番むずかしいの。
でも、一番つよいんだよ」
タクミの目に、また涙が溜まる。
タクミ
「……やる。
俺……兄ちゃんに……
もっと“ありがとう”言いたいから」
レンジ
「タクミ……ッ! 俺もだ……ッ!!」
ミナト
「また泣くんかい!!」
サク
「今日のレンジ、涙の総量バケツ2杯いってるからな」
レンジ
「うっせぇ!! 泣くんだよ今日は!! 兄ちゃん忙しいんだよ!!」
カホ
「忙しい理由そこ?」
さっちゃんは、しんみりするクラスを見渡し——
照れくさそうな顔で言った。
さっちゃん
「……まあ。
ONI組は家族みたいなもんだからさ。
今日はちょっと、いい授業したわ私」
ミナト
「自分で言うんだ!」
サク
「でも今日の先生マジで良かったよ」
カホ
「いつも煽り散らすくせに、こういうときだけ優しいのズルいんだよねー」
さっちゃん
「黙んなさい褒めるな恥ずかしい!!」
ONI組全員
さっちゃん
「……よし。
雷堂兄弟。
今日からもう一回“家族”始めな」
タクミ
「……はい!」
レンジ
「任せろ!」
ONI組全員
「おおおおおおーー!!」
そして
教室は、笑いと涙が混ざった
“あったかい騒がしさ”に包まれていった。
【教師陣】
■さっちゃん先生
450歳の魔界鬼教師。外見は小学生。
毒舌・高速ツッコミ・恋愛と再教育のプロ。
魔力入りの杖で暴走生徒を物理的に止める。
「最初から不良の子なんていない!」が口癖。
【ONI組(問題児クラス)】
■雷堂レンジ(らいどう・れんじ)
ONI組の実質ボス。喧嘩無敗。
だが家庭環境が複雑で、心は誰より脆い。
さっちゃんの言葉に一番揺さぶられるツンデレ主人公枠。
■黒羽アヤメ(くろば・あやめ)
SNS女王。毒舌ギャル。
だが実は自己肯定感が極端に低い。
さっちゃんに輪郭補正を暴かれた瞬間、人生が変わる。
■水城ミナト(みずき・みなと)
人気配信者。ONI組の盛り上げ役。
「炎上は伸びしろ」を信じる危ない子。
さっちゃんによって“本当の承認欲求問題”に向き合うことになる。
■羽柴カイ(はしば・かい)
無口で影の薄い少年。
だが天才的な絵の才能を持つ。
ONI組の黒幕的存在という噂もあるが…実は違う。
■蘭堂コトリ(らんどう・ことり)
不登校気味の大人しい女子。
教室の隅でぬいぐるみと会話するタイプ。
だが内側に“破壊級の感情爆弾”を抱える。
■獅子山ガロ(ししやま・がろ)
元暴走族。腕っぷし最強。
筋肉で問題を解決しようとする脳筋男子。
しかし涙もろく、実は一番優しい。
■星野ルカ(ほしの・るか)
天才ハッカー。授業中も学校のWi-Fiを乗っ取る常習犯。
だがコンプレックスの塊で、愛情に飢えている。
【学校側】
■校長 閻魔
ONI組を「教育の敗北」と捉えてきた人物。
しかしさっちゃんが来て価値観が揺らぐ。
■教頭・鬼原
真面目すぎて石化しそうな人物。
さっちゃんに毎回煽られ、血圧が上がる。
【その他】
■クラスメイトの父兄、地域の人々
ONI組を“問題児の集まり”として恐れている。
だが次第に、さっちゃんの姿を通して価値観が変わっていく。




