第十話 闇の将軍ガルスの逆襲―動き出す影の兵団
東の首都ヴァルト、地下深く。
鋼鉄の扉、警備兵、レーザー網
完璧すぎる牢獄。
だが、その静寂を破るのは……
カチリ。
アイゼンハワードが老人らしい咳払いをしながら、
レーザー網の真ん中に立つ。
「いやぁ……最近の牢屋は眩しいねぇ。
まぶしくて眠れやしない」
ルアーナがツッコむ。
「おじいちゃん、それレーザー!
死ぬから動かないで!」
死神シグルはレーザーに顔を近づけてニヤァ。
「イヒヒヒ……頬に当たると蒸発しちゃうヤツだよ……」
「絶対触るな!!!」(全員)
リュカはホログラム端末を操作して淡々と呟く。
「……よし、ガルス将軍の防衛システムを90秒だけバカにしたよ。
行くなら“今だけ”。」
チャララ~~ン♪(ル〇ンのBGM感)
牢獄の扉が、音もなく開いた。
そこにいたのは――
痩せ細り、それでも毅然とした瞳を持つ 皇女リディア。
彼女は驚きのあまり声を失う。
「あなたたち……誰……?」
アイゼンハワードが柔らかく微笑む。
「いや、ただの老人仲間さ。
たまたま世界を救いに来ただけのね」
ルアーナ
「たまたまじゃないよ!?」
リディアは震える手で胸元を押さえた。
「“真実の書”……
あれを奪われたら、戦争は永遠に止まらない……」
リュカが頷く。
「大丈夫。あれはガルスの金庫にある。すぐ取り返す。」
シグルが皇女を覗き込み、顔を近づけ……
ニタァ……。
「イヒヒヒ……
ほぉぉ……あなた、“死んでない”ね。
ギリギリのところで踏ん張ってる生の匂いがする」
皇女
「っ!? な、なに、この子……?」
ルアーナ(悲鳴)、アイゼンハワード(ため息)。
騒音とともに、地下牢の警報が鳴り響く。
ドォォン!!
壁が破壊され、黒い軍服の兵士たちが雪崩のように突入。
マントを翻し、将軍ガルスが現れた。
「……貴様らか。
“世界を乱す三匹と一体”と言えば聞いていたが……」
アイゼンハワード:
「三匹って誰だい。老人を混ぜるんじゃないよ」
ルアーナ:
「そこ!? そこツッコむの!?」
ガルスは皇女を睨みつける。
「皇女リディア――
お前は国家の裏切り者だ。
死んでもらう。」
死神が一歩前へ。
「イヒ……ヒヒ……
“死んでもらう”?
その台詞、ボクの前で言うとね……」
彼は口角をゆっくり上げた。
「と~~ってもムカつくんだよ」
空気が一瞬凍りつく。
リュカ
「ルアーナ、天井の排煙ダクトを開けて!」
ルアーナ
「よっしゃ!ピッキング3秒!」
アイゼンハワード:
「皇女殿下、失礼。おじいちゃんの背中に乗りなされ。」
皇女
「えっ!? あ、あのっ、そんな――」
死神
「はいはい、お姫様抱っこでもしてあげようかぁイヒヒヒ」
「絶対イヤ!!!」(皇女)
爆発音が響き、影兵団が迫る。
全員
「走れぇぇぇぇぇ!!!」
ダクトへ飛び込む瞬間
ガルスが怒りに満ちた声で叫んだ。
「追え!!逃すな!!
あの老人だけは絶対に殺せ!!!」
アイゼンハワード
「わし!? なんでわし!?」
リュカ
「おじいちゃん、東西の国家データ全部抜いたからだよ」
アイゼンハワード
「そんな覚えは……あるわ」
(あるんかい!)
全員が息を切らしながら逃げる中
狭いダクトで、皇女と死神が向かい合う。
リディア
「どうして……
私は、生き延びてしまったの……?」
死神は静かに微笑んだ。
「イヒ……
生きる理由なんて誰にもわからないよ。
でもね……“死にたくなかった人”ほど、
魂は必死に世界にしがみつくんだ」
皇女
「……私、怖かった。
でも、戦争を止めたかった」
シグル:
「うん。
だからあなたはまだ“死んでない”。
誰かのために動ける魂は……
死神の目には、とても眩しいのさ」
皇女が涙を落とす。
アイゼンハワードはそっと肩を支えて言った。
「泣いていいんだよ、皇女殿下。
人質なんかじゃない。
君は、戦争を止めようとした“勇気そのもの”だ。」
地下から脱出した瞬間。
東の城壁が開き、
黒い影兵団が一斉に行進を開始する。
ガルスの狂気に満ちた声が響く。
「反逆者どもを捕らえろォ!!!
皇女も、老人も、死神も、全員だ!!
“影兵団作戦”を開始する!!!」
リュカ
「……まずい、始まっちゃった」
ルアーナ
「これって……全面戦争……?」
アイゼンハワード
「まだ終わらんよ。
むしろここからが本番だ。」
死神シグルは笑う。
「イヒヒヒ……
戦争の魂、全部まとめて裁いてあげるよ……?」
夜の首都ヴァルトが、赤い警報灯で染まっていく。




