第七話 追跡戦! 空中浮遊装置の悲劇
東西両国の裏で密かに開発されていた 浮遊装置――
本来は都市間輸送用の“魔導飛行車”の予定だったが、秘密裏に軍事利用され、設計には重大な欠陥が潜んでいた。
その欠陥が、ついに街の上空で現実となる。
ルーメン共和国の 上層街工業区。
市場や工房の屋根を抜けて浮遊装置が舞い上がる。
初めは穏やかに浮かんでいた飛行装置が、突如振動を始め、爆音と共に部品が飛び散る。
「ぐわあっ!」
ルアーナの実験機が装置の衝撃で吹き飛ばされ、煙と火花が街を覆う。
リュカは瓦礫をかわしながら、咄嗟に符文の痕跡を確認する。
アイゼンハワードは杖を握りしめ、眉間にシワを寄せる。
「……くたびれるな。毎度、俺の年寄りの腰を狙う事件ばかりだ」
肩に乗った 死神シグル は、笑いながら宙を漂う。
「これは死ではないイヒヒヒ、殺しだイヒヒヒ!
若い子で逝きたいねイヒヒヒ!」
市民たちはパニックに陥り、飛び散る浮遊装置の残骸に悲鳴を上げる。
瓦礫に当たった屋台は炎上し、飛び跳ねる野菜や肉がまるで戦場の煙幕のようだ。
リュカは呆れ顔でシグルを睨む。
「……本当にこの死神、やばすぎる」
瓦礫の中、奇跡的に残った 符文入りの浮遊装置部品 が光を放つ。
ルアーナが解析すると、それは皇女リディアが残した「脱出用指示の痕跡」だと判明。
しかしその瞬間、秘密警察の 追跡部隊 が上空から降下してきた。
街の大通りは戦場さながら。火花と煙、浮遊装置の部品が飛び交い、追跡者と逃亡者が入り乱れる。
「さあ、若者たちよ。逃げるが勝ちだ!」
アイゼンハワードは杖を振ると、浮遊装置の破片を魔導で跳ね返す。
ルアーナは「おじいちゃん、後ろ後ろ!」と絶叫しながら、リュカと共に煙の中へダッシュ。
シグルは肩から飛び降り、空中でくるくる回りながら叫ぶ。
「捕まえるならオレを捕まえてみろイヒヒヒ!
逃げるならついてこいイヒヒヒ!」
瓦礫と炎、飛び散る部品と火花、街中の叫び声
空中浮遊装置の欠陥が引き起こした事故は、単なる“事件”ではなく、都市国家レベルの 大惨事 となった。
そして、光る符文が一行を導く。
皇女リディアが残した痕跡は、秘密警察を巻き込みながら一行を核心へ導く鍵となる。




