第二話 第二の殺人
雨に濡れた夜道、街灯の光が濡れたアスファルトに乱反射していた。
高層タワーの霧がまだ残る都市の片隅で、次なる悲劇の匂いが漂い始める。
午前2時、警察無線がけたたましく鳴った。
「緊急! 第二の被害者、如月美羽。絞殺の可能性あり、現場はタワー西棟の屋上階。」
カズヤは瞬時に察した。
「麗花の死から間もない……これは計画的な連鎖殺人だな」
アル叔父・アイゼンハワードは、雨粒を払うようにしてコートの襟を立てた。
「ふむ……蝶に続き、今度は蛾か。あの羽と焦げた痕跡……演出が過剰すぎる。誰かが心理的に観察されることを意識している」
現場の状況
屋上は薄煙と焦げた匂いが立ち込め、床には黒ずんだ跡が点々と残る。
そして、無造作に落ちていた蛾の羽。
光を反射して、不気味に煌めいていた。
警察は混乱していた。男たちの証言は食い違い、矛盾だらけだった。
三原は「屋上には行っていない」と言う。
黒川は「美羽と最後に会ったのは20時」と証言する。
朝比奈は「誰も見ていない」と述べる。
蓮と一ノ瀬もまた微妙に時間軸がずれていた。
アル叔父は眉をひそめ、静かに煙の中を見つめる。
「ふむ…皆が嘘をついているのではない。皆が、自分の居場所を守ろうとしている。恐怖の中で、錯乱しているだけだ」
カズヤは現場に残された手がかりを手繰りながら、姉妹と男たちの関係に思考を巡らせる。
麗花が先に死んだことで、美羽の“支配力”が一時的に強化されていた
男たちは姉妹の間で巧妙に振り分けられ、各々が秘密の依存関係に組み込まれている
だが、支配構造は一見しただけではわからないほど複雑で、誰が本当にコントロールしているかは不明
カズヤは、証言の矛盾を見極めながら呟く。
「麗花が作った支配の網……美羽もその中に取り込まれていた。そして、最後に操るのは……」
アル叔父は煙る屋上を見上げ、皮肉めいた微笑を浮かべる。
「なるほど。人間は弱い。欲と恐怖が絡むと、誰も自分の手で運命を制御できなくなる。それを利用する者は……まさに、見えぬ影だな」
夜風が屋上を吹き抜け、焦げた匂いと蛾の羽が舞う。
事件は、姉妹間の力関係、男たちの秘密、そして事件の迷宮へと深化していた。
カズヤの目は冷静に、しかし鋭く光る。
「まだ、事件の全貌が……見えない。」
雨の夜、屋上に残された蛾の羽は、次なる恐怖の前触れのように、静かに揺れていた。
登場人物一覧
被害者・姉妹
如月 麗花:27歳/モデル・インフルエンサー(感電死)
如月 美羽:25歳/モデル・SNSインフルエンサー(絞殺?)
姉妹に関わる男性たち
三原 聡:30歳/会社員(商社勤務)
黒川 颯:28歳/IT企業勤務
朝比奈 透:26歳/フリーライター
蓮 京介:24歳/大学生(経済学部)
一ノ瀬 大地:29歳/サラリーマン(広告代理店勤務)
警察・マスコミ関係者
佐伯 翔:40歳/警視庁刑事
藤堂 翼:35歳/警視庁刑事
高橋 梨花:33歳/テレビ局記者
村田 悠人:38歳/週刊誌記者




