序章 霧の高級分譲タワーマンション
東京、深夜。濃霧に包まれた高級タワーマンションの一室で、如月麗花(27)の死体が発見された。
現場には黒い蝶の羽が散らばっており、初動捜査では自殺の可能性が高いとされた。
だが、ニュースが流れるや否や、世間は瞬く間に騒然となった。
テレビ・ワイドショー
「モデル美女、深夜のペントハウスで感電死!」
「驚きの死……自殺か、それとも他殺か?」
リポーターはスタジオで眉をひそめ、事件の詳細を連日特集。
CGで再現されたタワーマンションの室内が画面に映し出され、黒い蝶の羽も大きく拡大表示された。
SNS上では
「麗花ちゃん…若すぎる…どうして?」
「これってただの自殺で片付けていいの?」
「蝶の羽って…何か意味あるの?」
ハッシュタグは瞬く間に拡散し、一般市民が推理を語り合うコメントが膨大に並ぶ。
週刊誌・ネットニュース
「美女モデルの不可解死。自殺説に疑問の声」
「高級マンションで発見された麗花の死、その裏には何が?」
「麗花が交際していた男性たちに不穏な影……?」
編集部は、麗花の華やかなモデル人生や交際遍歴を大きく取り上げ、センセーショナルに煽る。
街の反応
コンビニのテレビで事件速報を見た若者たちが、深刻な顔で話し合う。
タクシー運転手は、「あのタワーの部屋か…高級すぎて、誰でも入れないのに」とつぶやく。
通行人はスマホで写真を撮影、SNSにアップして一気に情報が拡散される。
世間は麗花の死を単なるニュース以上の“物語”として消費し始める。
美貌、若さ、謎の死。
黒い蝶の羽は、事件の象徴として都市全体に不穏な空気を拡散した。
誰もがその意味を理解できず、噂と推測だけが膨らんでいく――
そして、この事件は表向きのニュースの背後で、暗い人間関係と恐ろしい計画の序章に過ぎなかった。




