第二話 陽気なる召喚士
「誰だお前!」
飛空艇の格納庫に響き渡る声。
リスクが眉をひそめ、謎の男を指さした。
鮮やかなターバン、首元に揺れる魔法銅貨のネックレス、手には踊るような指先、異国の空気をまとったその男は、堂々と両手を広げて叫んだ。
「ワタシはユスフ=メルハバ!砂漠の魔道具師にして爆裂召喚士!今この瞬間から、あなた方の操縦士だッ!よろしくな、ワッハッハッハ!」
「……知らん!」
「え、勝手に入ってきたの!?」
「なんで指名されたの!?」
騒然とする中、エジソンソンが涼しい顔で現れた。
「彼こそが、かつて"月落としの誤爆"で砂漠都市を半壊させた伝説の召喚士にして、空間認識力A+の飛空艇マイスター。ま、操縦は超一流ってことだ。」
「あれは誤爆じゃなくて芸術だ。爆発は、魂の花火だからな!」
「なるほど。うるさいのは仕方ないとして、腕は確かってわけね。」
マーリンが呟く。
命名の議論は長く、激しく、そして混沌を極めた。
「ドラゴン・バースト・ヘヴン号!!」
「却下だユスフ!!」
「聖なる飛び魚グローリア号……」
「それは君の朝食だ、マリア。」
最終的に落ち着いたのが、リスクがひらめいた一案
『アストラ=バルムガンド』号
星を駆け、雷を裂く空の覇者!
「アストレリオンの格式と、バルムガンドの重厚さ……合わせてどうだ?」
アルベルトは腕を組んでうなずく。
「……なるほど、融合だな。」
エジソンソンも目を細め、
「やるじゃないか小僧!魔法と科学だけじゃなく、名も融合とは!」と満足げ。
ユスフは爆笑しながら、
「まあ爆裂は入らなかったけど、カッコいいから許す!」
マーリンは艶やかに微笑んで、
「悪くないわ……ふふ、これで天まで堕ちられるわね。」
「その言い方はやめなさい。」
シスターマリアが冷ややかにたしなめた。
爆裂気質とは裏腹に、操縦席についたユスフの手さばきは見事だった。
「重力制御、風圧調整、エンジンの魔導気流…よし、よし……イグニッションッッ!!」
魔導心臓が唸りを上げ、飛空艇《アストラ=バルムガンド》は静かに浮き上がる。
「……安定している。」
「意外と繊細な操作……本物ね。」
「当たり前だ!ワタシの操縦は、空のバクダン職人って呼ばれてるからな!」
いよいよ、その時が来た。
エンジンが鳴動し、甲板の魔法陣が光を放つ。
全員がブリッジに集結する。
「……本当に飛ぶのか、これ?」
「飛ぶとも!空を裂くぜ、この雷翼でな!!」
「風向き良し、気圧安定……問題なし。」
マリアは十字架を握り、
「主よ、どうかこの空の旅に、導きを……」
マーリンは高らかに笑い、
「じゃあ行きましょうか。私たちの空への物語の第二章へ」
「魔導飛行船アストラ=バルムガンド、発進!!」
雷鳴とともに、飛空艇が空へと浮上する。
雲を突き抜け、青空を裂き、魔導と科学の結晶が、世界にその姿を示す。
かくして、空の冒険が幕を開けた。




