第12話 魔導エンジンと新たな旅路へ
魔塔融合生命体の崩壊は、静寂とともに訪れた。
巨大な両腕が崩れ落ち、地面に突き刺さる。
続いて、膝が砕け、大地にめり込むように崩れ落ちる塔の巨人。
最後に、その禍々しい顔面――塔の中心部であった巨大な頭部が、垂直に倒れこみ、ドォオン!と土煙を上げて勇者アルベルトのすぐ目の前に落下した。
「ぎぁあああああああああッ!?お、お、おいぃぃ! もうちょっとでぺしゃんこだったぞ!?やりやがったな、リスクーーッ!!」
アルベルトが全身で怒鳴る中、辺りには凄まじい静寂が広がる。
「……勝った、のか?」
「うん……やった、よね?」と、マリアが小さく呟いた。
「ふむ。終わったわね」と、マーリンが汗をぬぐう。
俺たちは魔塔融合生命体に勝利した。
その瞬間、四人の身体に、じんわりとした温もりが広がる。光が降り注ぎ、空中で粒子が踊り出す。
魔導生命体ルナアクシスを倒したことにより
一気にレベルが3も上がった。
《勇者アルベルトのレベルが上がった!》
《体力が200上がった!》
《力が100上がった!》
《防御が96上がった!》
《素早さが65上がった!》
《賢さが30上がった!》
《魔力が32上がった!》
《運が60上がった!》
《新しい魔法「タッタママネル」を覚えた!》
「……ん?タッタママネル?なんだこの魔法……“立ったまま寝る”だと!? 使い道、あるのか!?あるのかコレ!?」
「冒険で寝袋がない時に便利だよ!きっと!」
シスターマリアが笑いながらツッコむ。
《シスターマリアのレベルが上がった!》
《体力が75上がった!》
《魔力が80上がった!》
《素早さが24上がった!》
《賢さが90上がった!》
「わたし……まだ強くなれる。よかった……まだ、皆を守れる……!」
彼女の周囲に舞う光は、まるで祝福のように温かかった。
《リスクのレベルが上がった!》
《運が80上がった!》
《賢さが45上がった!》
《新しいスキル「バナナのたたき売り」を覚えた!》
「……なんだよこのスキル名。どういう戦術なんだこれ……」
《説明:テンションを上げ、敵のガードを下げる。ノリで防御無視ダメージを与える。》
「バカか!ふざけてんのかスキル枠ッ!」
「でもリスクさん、バナナのたたき売り似合ってるよ?」
シスターマリアが微笑む。
《黒魔術師マーリンのレベルが上がった!》
《魔力が120上がった!》
《賢さが70上がった!》
《運が15上がった!》
《新しい呪文「黒鏡の審判」を覚えた!》
「ちょっとマーリンさん!?その呪文、なんかやばそうだよ!?」
「……黙っていればその通り、話せば危険なこともある。私の魔法に言及するのは、三度までにしておくといい……」
リスクが小声で
「それが一度目なのか、すでに三度目なのかが分からないんだよな……」とボヤいた。
そして、リスクの手には、ついに――
魔導エンジンとなる「魔導心臓」が握られていた。
ツタのような魔導血脈がまだ微かに脈打っている。だが、もはやそれは、闇を動かす力ではない。
「これで……これでエジソンソンさんに飛空艇を作ってもらえる……!」
リスクは、深く息を吐いた。
アルベルトが肩を組んできて、笑う。
「よーしよしよしッ!次は空だな、空の旅だ!リスク、約束だぞ!今度こそ、オレが主役だ!」
「はいはい。わかったよ、勇者様」
マリアも手を合わせ、祈るように言った。
「でも、次の目的地……“竜の谷”って。聞いたことある。とても危険な場所……」
「それでも行くしかない。魔導心臓を飛空艇にして、空を越えなきゃ――あの、災厄の源に近づけない」
リスクは、魔導心臓をしっかりと背負った。
マーリンが静かに呟いた。
「……次は竜の谷と呼ばれる天空竜のいるところよ。」
そして、リスクたちは「竜の谷」へ向けて新たな旅を始める。
【第八部 完】




