終章 撮影所の朝、異様な緊張
駐車場に並ぶパトカー、覆面捜査車両、サイレンの音。
警察は現場に到着すると、田辺修一と村上光一の逮捕を実行した。
田辺は照明助手として勇也と同じ現場に長くいたが、彼の好意が高橋さくら(ピンクレンジャー)に向かうのを知り、嫉妬と怒りに駆られて犯行に及んだことが明らかになった。
村上は田辺を助ける形でセットに凶器や不自然な小道具を配置しており、殺害補助の罪で逮捕された。
警察官が手錠をかけると、田辺は動揺を隠せず、村上は冷静な表情を浮かべながら連行される。
次の日
撮影所の朝、異様な緊張が漂っていた。
赤城勇也の死は全国で報道され、「オクレンジャー・レッド殺害犯が逮捕!」の見出しが街を駆け巡る。関係者の逮捕により、 急ぎ戦隊オクレンジャーの放送はすでに禁止となり、セットには普段の賑わいは戻らなかった。
撮影所前には報道陣が押し寄せ、カメラとフラッシュが乱れ飛ぶ。
「オクレンジャー放送禁止!俳優たちに衝撃!」
「赤城勇也、恋愛絡みの感情のもつれが死の原因か!」
「照明助手と美術監督が逮捕、撮影所は大混乱」
記者たちが一斉に質問を浴びせ、警察の制止も虚しく、撮影所は報道の波に揉まれた。撮影セットの周囲には黄色い規制線が張られ、警官がマスコミを押しのけながら現場を封鎖する。
捜査により、犯行の動機は明確になった。
田辺修一は、密かに思いを寄せていた高橋さくらが、赤城勇也と不倫関係にあることを知り、嫉妬心と怒りに突き動かされ犯行に及んだ。
村上光一は、田辺の激情を見越し、殺害の補助としてセットに危険な小道具を仕込む形で関与した。
愛憎、嫉妬、欲望が交錯した末の悲劇であり、勇也の死は偶然ではなく、人間関係のもつれによる計画的な殺人だった。
撮影所では、現場を再開する計画が進む中、マスコミが押し寄せ、スーツアクターたちは再びフラッシュの嵐と質問攻勢にさらされる。かつてのヒーローたちの笑顔は、報道と憶測の影に覆われ、静かな悲しみと混乱が広がった。
カズヤとアイゼンハワードは、規制線の外から現場を見つめながら、事件を冷静に振り返る。
カズヤ「嫉妬と愛が、ヒーローさえも殺す……」
アイゼンハワード「正義と悪は表裏一体。人間の感情もまた、ヒーロー以上に危険だ。」
二人の目に映るのは、表向きは解決した事件の裏で蠢く“業界の影”だった。スーツアクターたちの友情や嫉妬、スタッフ間の確執、恋愛のもつれ――そのすべてが、次なる危険の予兆となっていた。
街のどこかで、まだ見えぬ影がゆっくりと動き始める。オクレンジャーの物語は、一度幕を閉じたように見えるが、正義と悪、愛と嫉妬の均衡は、いまも危うく揺れている。
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:正義と悪 若手俳優殺人事件』
ー完ー




