第4話 謎の男の影
夜の撮影所は、まるで息を潜めているかのようだった。
風が吹くたび、金属製の照明スタンドがカチリと鳴る。
その音の裏で、何かが“見ている”。
カズヤは防犯カメラの映像を何度も巻き戻していた。
映し出されたのは、午前2時14分。
閉鎖されたはずの裏門に、ひとつの影が現れる。
黒いパーカーにキャップ、顔を深く隠している。
その男は、まるで撮影所の構造を熟知しているかのように、
迷いなく美術倉庫の裏へと消えていった。
「……入っていくな。カギが折れていたのは、この時間帯だ」
アイゼンハワードの低い声が響く。
画面を停止させ、男の肩口を拡大する。
そこには、オクレンジャーのエンブレム
“赤い翼”の刺繍が、微かに光っていた。
証言① 警備員・中根の話
「深夜の見回り中に人影を見ました。けど……あれ、勇也さんかと思ったんですよ。背丈も似てたし、あの赤いジャケットみたいな服、着てたから」
カズヤが目を細める。
「勇也はその時間、すでに」
「亡くなっていた」
アイゼンハワードが静かに補足した。
警備員の顔から血の気が引く。
「じゃ、じゃあ……あれは一体、誰だったんです?」
証言② 衣装スタッフ・成瀬
「確かに、衣装部屋からレッドスーツの上着が1着なくなってました。
翌朝戻ってたけど、泥の跡がついてて……」
「泥?」
「はい。外から入ってきたみたいで。
倉庫裏の芝生の泥と一致してると思います」
カズヤの視線が鋭く光る。つまり、あの“謎の男”は、勇也の衣装を盗み、
勇也になりすまして撮影所をうろついていた。
「勇也殺害の目的が“個人的な恨み”だけなら、こんな回りくどい真似はしない」カズヤは独り言のように呟いた。
「誰かが“演出”している。まるで舞台のように……」
アイゼンハワードが腕を組む。
「つまり、真犯人はこの事件を“ショー”として見せたい。
観客がいる前提で動いている」
「観客……」カズヤがつぶやく。
ふと脳裏に浮かんだのは、モニター室にいた人物。
監督・本田直樹。
事件直後、彼は誰よりも冷静にカメラの保存データを確認していた。
夜更けの撮影所を離れ、二人は外の駐車場へ出た。
月明かりが差すアスファルトの上に、何かが落ちている。
それは焦げたような紙片
そこには、血のようなインクでこう記されていた。
「オクレンジャーは、六人じゃない」
アイゼンハワードが低く呟く。
「……第七の男、か」
カズヤはその紙片を握り締め、
見上げた夜空に沈む月を見た。
誰かが、まだこの現場の“裏側”にいる。
物語は、さらに深い闇の奥へ。
登場人物相関まとめ
オクレンジャー
赤 / レッド(赤城勇也) 被害者
中心人物。子どもに人気だが自己顕示欲が強く、内部で嫉妬や確執が生まれる。
黄 / イエロー(佐藤悠太)
堅実だが目立たない。レッドとの確執があり、自己評価は低い。
緑 / グリーン(田中拓也)
技術はあるが地味。イエローと微妙な競争関係にある。
ピンク / ピンク(高橋さくら)
紅一点。美貌とアクション力で注目される。レッドとの不倫噂あり。
黒 / ブラック(吉田翔)
控えめでサポート役。メンバーの動向を把握。
青 / ブルー(小林亮)
戦闘力高めで冷静。事件発生時に状況分析を担当。
撮影スタッフ
美術監督:村上光一
セット管理・美術デザイン担当。事件前後の異変に気付く。
助監督:斎藤健
撮影進行責任者。スーツアクターたちの動きを監督。
監督:本田直樹
制作統括。事件発生時の現場指揮。
撮影班スタッフ
アクションシーン補助担当。
事件関係者
謎の男
正体不明。事件に絡む怪しい存在。