序章 急ぎ戦隊オクレンジャー参上
日本の街には、誰もが憧れるヒーローがいる。子どもたちに人気のスーパー戦隊その名は 急ぎ戦隊オクレンジャー。
彼らは、平和を脅かす悪の軍団 ノロイ と日夜戦い、街と人々を守る使命を背負っていた。
だが、この世界の戦いはテレビの向こうだけのものではない。オクレンジャーは、現実の撮影所でスーツアクターたちの肉体と技によって命を吹き込まれているのだ。
レッド、イエロー、グリーン、ピンク――それぞれのスーツアクターは、派手なアクションの裏で、孤独や確執、競争、時には恋愛の問題に悩みながら、ヒーローを演じ続ける。
紅一点のピンクは、美しい容姿と華麗なアクションで注目されるが、隊内では影の立場に立たされることも多い。
レッドは子どもたちに絶大な人気を誇るが、気配りのない性格ゆえにイエローとグリーンとの間に微妙な亀裂が生じていた。
イエローとグリーンは、互いに自分のスキルや見せ場を争い、影で隊内の確執を深めていた。
一方、遠く離れた地下基地では、悪の軍団ノロイが次なる侵略を企てていた。
「すべてを遅くする……時間の流れを支配し、オクレンジャーを無力化するのだ」
将軍の冷たい声が響き、街全体の時間の感覚が徐々に歪み始めていた。
スーツアクターたちの現場
撮影所では、今日もスーツアクターたちが命を削るようにアクションシーンの練習をしていた。
「はい、カット! 次はレッドのジャンプから!」
助監督の掛け声に合わせ、レッド役のスーツアクターが走り出す――はずだった。
しかし、外の空気は異様に重く、動きは思うように遅くなる。
グリーンは足元の床を蹴る力が伝わらず、ジャンプが半分しか跳べない。
ピンクは決めポーズを取ろうとしても、腕が重く、遅れて動く。
「……遅い……!」
街の時間が狂うかのように、悪の軍団ノロイの力が撮影現場にも影響を及ぼしていたのだ。
レッド役のスーツアクターは焦りながらも叫ぶ。
「みんな、諦めるな! 俺たちはオクレンジャーだ!」
それでも、撮影班や美術班は動きの遅さに混乱する。助監督は慌てて叫ぶ。
「危ない! セットから離れろ!」
レッド、イエロー、グリーン、ピンク――スーツアクターたちは遅い動きの中で必死に戦う。
その姿は、テレビの画面越しには見えない、リアルな戦いそのものだった。
そして、遠くの街角には、次の襲撃を計画するノロイ軍団の黒い影が忍び寄っていた。
「次はもっと、時間を奪うのだ……」
こうして、遅くなる街と撮影現場
スーツアクターたちは、アクションシーンの撮影に臨んでいた。