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【45万2千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:三つ首灯籠の呪術寺 宗教家殺人事件』
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終章 村に朝が戻る

霧の谷に朝日が差し込む。

嵐の夜を耐え抜いた灯籠村は、静かに呼吸を取り戻していた。


焼け落ちた呪術寺の跡地からは、焦げた木と朱色の破片がまだ煙を上げている。


久遠祐真は、警察の手によって連行されていく。

その顔には、かつての威圧は消え、どこか諦観の色が混ざっていた。


カズヤは石畳に残る破片を踏みしめ、重い吐息をつく。

「呪い……とは、人の罪が形になったものだ。怨念、恐怖、欲望……それらが一つに凝縮されたもの」


アイゼンハワードは、遠くで煙を上げる寺跡を見やり、肩をすくめた。


「三つ首の灯篭は壊れ寺は焼け落ちた。封じるべきものは封じた。後は影がまた動くかもしれんがな。」

しかしその目は、どこか警戒を解かぬまま、遠い谷の影を見据えていた。


灰田カンナは崩れた祭壇の前に立ち、震える手で胸を押さえる。

「姉さん……ありがとう……」

涙が頬を伝い、心の奥で、封じられていた姉の魂が救われたことを確かに感じ取った。


白石薫は、密かに灯籠の破片を懐に忍ばせる。

「これは……研究材料として……まだ、利用できるかもしれない」

その背後には、まだ完全には消えぬ赤黒い光の残滓が、霧の中で微かに揺れている。


灯籠村は静寂を取り戻したように見える。

だが、谷の奥深く、影の中で微かな呻きが聞こえる。

封じられた魂の断片は、再び呼び声を放ち、次なる異変を予感させていた。


カズヤは遠くの森を見つめ、拳を軽く握る。

「……また、何かが起きるんだろうな」


アイゼンハワードは薄く笑みを浮かべた。

「心配するな、我々がいれば、死者も呪いも裁く」


谷に朝の光が降り注ぐ。

しかし、その光の向こうには、まだ見えぬ影と、終わらぬ因縁が息を潜めていた。


静かな村に、平穏な朝が戻った。


だがその頃、白石薫のポケットの中で、三つ首灯籠の破片が微かに脈動を始めていた。


『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:三つ首灯籠の呪術寺 宗教家殺人事件』





ー完ー


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