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【45万2千PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『 カズヤと魔族のおっさんの事件簿:騎士道 フェンシング王者殺人事件』
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序章 絶対的王者

その姿は、まるで美しい白銀の彫像だった。


ライトの下、フェンシング・ピスト(試合台)の上に立つ男


如月レオン。


長い手足、無駄のない構え。

構えた瞬間、空気が変わる。

対峙する相手は皆、心臓の鼓動を制御できなくなる。

彼の剣は予告のない稲妻。防ぐより先に勝敗が決していた。


顔よし、頭よし、運動神経抜群。

海外留学を経て帰国し、語学も完璧。

取材ではいつも柔らかく微笑み、ファンへの対応も紳士的。

それでいて、フェンシングに関しては一切の妥協を許さない。


「勝利とは、礼節の上に立つものだ」

彼の言葉は、ただのスポーツ選手の発言ではなかった。

それは、“騎士道”を現代に蘇らせた男の信条だった。


剣を振るうとき、彼の動きは美しく、どこか悲しい。

観客はその姿を“華麗な舞”と呼び、ライバルたちは“理想の亡霊”と呼んだ。

勝ちすぎた王者。完璧すぎる男。

だが、彼自身の中では、いつしか「勝つこと」そのものが苦痛になっていた。


「僕は、誰のために勝っているんだろう――」


その疑問を抱いた瞬間、彼の運命の歯車は狂い始めた。

フェンシング協会の不正、スポンサーとの軋轢、

そして“剣の魂”に魅入られた者たち。


彼の理想は、現実を焼き尽くす火になった。


やがて、如月レオンは最後の試合を迎える。

勝敗のつかぬ“決闘”の果てに、白いピストを赤く染めて。


もう二度と、このような選手は現れない。

彼は唯一無二の存在だった。


誰よりも強く、誰よりも純粋で、そして誰よりも孤独だった。

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