表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【45万PV突破 ! 全話 完結】運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:規制虫 管理人殺人事件』
1013/1101

第5話 管理会社の闇

管理会社「セントラル・エステート」の会議室は、無機質な蛍光灯の下で息を潜めていた。

東条健二は、冷えたコーヒーを指で転がしながら、壁際のファイル棚を睨んでいた。そこには“今永規制虫”の名がついた報告書が並んでいる。


「……スパイ、だと?」

カズヤが呟いた。


机の上に置かれた封筒。中から出てきたのは、監視カメラの設置指示書と、不動産オーナー・大河原修の署名だった。


だが。その指示書には、東条の名も連なっていた。


アイゼンハワードが静かに言う。

「つまり、管理会社が“住民を監視していた”ということだな。しかし今永も、その監視をさらに監視していた……」


東条は目を細め、わずかに笑った。

「今永は、こちら側の“協力者”のはずだったんですよ。彼は報告していた。“不審な住人の動き”をね」


「不審な住人……とは?」

「南田、岡田、それに三好だ。あのマンションには“隠したい者たち”が多すぎた」


ファイルを開くと、住民ごとの報告メモが並んでいる。

その多くに、赤ペンで「録画済」「証拠保全」の印。


だが奇妙なことに、今永の最後の報告だけが破り取られていた。


沈黙の中、カズヤが気づく。

「……この印字。誰かが“外部から”データを書き換えている」


「つまり、管理会社のサーバーにも“侵入者”がいるということか」

 アイゼンハワードの声が低く響いた。


東条の顔から血の気が引いた。

「まさか……“本当の監視者”が、俺たちを……?」


その瞬間、会議室の照明が一斉に落ちた。

非常灯の赤い光が、壁の一点――監視カメラのレンズを照らした。


アイゼンハワードが目を細めた。

「……やはり、このビルにも仕掛けられていたか」


モニターの奥で、誰かがこちらを見ている。

その“誰か”の正体を知る者は、もうこの部屋にはいなかった。


そして、暗闇の中で大河原の低い声が録音から流れ出す。

『監視を止めるな。あれは、税務より恐ろしい“もの”を見張っている』


カズヤとアイゼンハワードは無言で顔を見合わせた。

“税務より恐ろしいもの”それは一体、何を意味するのか。


遠くのモニターに、一瞬だけ、ノイズ混じりの映像が浮かんだ。

夜のマンション前に立つ黒い影。

そして、その影を撮る、もう一つのカメラのレンズ。


監視する者と監視される者。

その境界は、とうに消えていた。



今永辰夫(いまなが たつお・58)

 リバーサイド大河原の管理人。極端な規制好き。被害者。


岡田涼子(おかだ りょうこ・42)

 シングルマザー。管理人とたびたび対立していた。息子を守るため過剰防衛気味。


東条健二(とうじょう けんじ・37)

 不動産管理会社の担当。冷徹で無表情。実は今永を“ある理由で”監視していた。


大河原修(おおかわら おさむ・65)

 マンションのオーナー。住民たちの苦情を無視していた。裏で脱税疑惑あり。


南田薫(みなみだ かおる・28)

 YouTuberの住民。規制に反発して“監視カメラを逆に撮る動画”を投稿していた。


田所章(たどころ あきら・50)

 清掃員。今永の古い知人。事件前日、口論する姿を目撃されている。


三好梨花(みよし りか・31)

 シェアハウスとして違法に部屋を貸していた住人。秘密の副業がある。


日下部礼司(くさかべ れいじ・45)

 マンション理事長。几帳面で正義感が強いが、極端なルール主義者。


白鳥舞子(しらとり まいこ・26)

 夜勤の看護師。ゴミ出しの朝、最初に死体を発見した人物。記憶に“抜け落ち”がある。


川村俊介(かわむら しゅんすけ・33)

 外部の配送員。事件当夜、マンションに入っていたが記録が残っていない謎の人物。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ