第十話 モグラたたき作戦
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名前 地底竜 ティアマット
レベル:99
体力:9999
攻撃:5600
防御:8000
素早さ 999
魔力:5000
賢さ:999
運:200
【頭部構成】
メインヘッド(中央):黒炎ブレス(全属性を混合した破壊火炎)
右首(上):土崩ブレス(大地を崩壊させる岩石弾)
右首(下):毒霧ブレス(即死レベルの猛毒霧)
左首(上):死霊咆哮(死者を蘇らせる音波)
左首(下):魔力吸引(魔力を吸い尽くす竜吸)
この世界で遥か太古、地底世界を統べていた“5つの頭を持つ”伝説級のドラゴン。その身体は地殻の魔力を吸収しており、全身が黒曜石のように硬化している。5つの首はそれぞれ異なる属性のブレスを吐く。神々によって封印されていたが、勇者の血によって闇の司祭カザールが復活させた。
固有スキル 地の王(地属性無効)再生因子《竜核再臨》たとえ首が切り落とされても、時間が経てば再生する。
五属性ブレス連携5つの首が持つそれぞれの属性ブレスを、同時または連続で発動可能。
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勇者アルベルトは、重々しくドラゴンシールドとドラゴンバスターを地面に置いた。そして、静かに腰の左右に収めていたリンゼルの双剣を抜く。最後の特攻をしかけようとしていた。
「リンゼル兄さん……」
そこへ
「アルベルト!あんた、まだ生きてたの!?」
「おいおい、死ぬには早いぜ!村人の作戦をちゃんと聞けよな!」
振り返ると、煙の向こうから現れたのはリスクとカンナ姫だった。
「カンナ、リスク……!来てくれたか!」
「当然でしょ、バカ。勝手に死なれたら困るんだから」
「シスターマリアも無事だ!あとは、アイツを倒すだけだッ!」
ティアマットの五つの首がうねり、咆哮を上げる。大地が揺れ、岩が砕ける。
「行くぞ!なづけて作戦名モグラたたきッ!!」
「……は?」
「……ぷっ、ダッサ。でも嫌いじゃないわ」
リスクが説明する。
「アルベルトと俺で首を切り落とす。そのあと、再生してくる首を……」
「……私が、このグラン=ツァンハンマーで叩き潰すわけね。ふふ、面白い」
「2歩進んで1歩下がる。もぐらたたき、開始だ!」
その時、ティアマットの全ての首がブレスをチャージし始める。
「来るぞ……五属性連携ブレス!!」
「シスターマリア、俺に“アレ”を頼む!」
「はい!リスクさん、ディーペイトですね!」
聖なる祈りの言葉が空気を震わせる。
「―《聖なる風よ、リスクに鈍足を》!」
【リスクの素早さが0から−45へ低下しました】
次の瞬間、リスクの全身が黄金の光に包まれた。
「発動した……ゼロ能力者のスキル!」
俺の全身が金色の光に包まれる
《Lightspeed Execution――ライトスピード・エグゼキューション》
光となって疾走するリスクは、一瞬でティアマットの懐へと飛び込んだ。
「なに!? いつの間にッ!!」
距離が近すぎて、ティアマットの首たちはブレスが撃てない。代わりに、鋭い爪がリスクを切り裂こうと振り下ろされる。
「はああああッ!!」
リスクは咆哮と共に、道具袋から黒ずんだ盾を取り出し、ガシャンと装備する。
破滅の盾、呪いが起動!!
【リスクの防御が0から−100へ低下しました】
「ぎぃゃあああああああああああッッ!!」
「ちょっ、これホントやばい!魂がズタズタになる感覚なんだけどッ!!誰かやめさせてッ!!」
俺の全身が銀色の光に包まれる
《Aegis Absolute――アイギス・アブソリュート》
【リスクの防御が+900されました】
「顔色やべーけど、リスク!耐えろッ!」
ティアマットの巨大な爪がリスクを襲う!
カキィーーーーン!!
「効いてない……!?ば、馬鹿な!!」
「今だッ!!アルベルト!!」
「喰らえ!《双影斬ッ!!》」
アルベルトの双剣がクロスし、ティアマットの右首(上)が切断され、地面に落ちた。
「再生するぞッ!!カンナ、たのんだ!!」
「任された!!――《重圧撃グラヴィティクラッシュ》!!」
カンナ姫のハンマーが空間を歪ませ、再生しかけた首を叩き潰す!!
「これでひとつッ!!」
リスクは再び道具箱から腐海なダケを取り出し、口に放り込んだ。
もぐもぐ。
「…………うああああああああああああああッッ!!」
「だ、大丈夫かリスク!?」
「……な、なんだこの不快感……!上司に全部押しつけられて叱責された時みたいな気分だ……!」
【リスクの攻撃力が−5になりました】
「くっ……くそっ、ふざけんなよ……こっちは命かけてるんだ……!」
その瞬間、リスクの全身が銅色に光りはじめた。
「……来る!ゼロの能力者の3個目のスキルッ!!」
《Excalibur――エクスカリバー》が発動した。
そして
金、銀、銅―三つの輝きが交差し、リスクの身体が蒼白く輝く!
「これが……ゼロの力……!!」
「《最弱》にして《最狂》――ゼロの能力者の真価、見せてやるよ!!」
「ティアマット……!この最下層で、あんたを《ゼロ》にしてやる!」
ティアマットの瞳に、一瞬の恐怖が浮かんだ。
俺にゼロの法則が発動された。