炉簿戸家のチャミ(3)卒業写真のあの人この人
お婆さんと、若い女性が炬燵の上にアルバムを広げて歓談をしていました。そこへお父さんが盆にお茶と菓子器を乗せて部屋に入ってくると「いらっしゃいませ、あまりおかまいできませんが」と、それを炬燵板の上に置きました。
「突然すみません、同期のハヤシと言います」若い女性は、笑みを浮かべました。
「え?じゃあ京子を起こします?」お父さんは、足を止めました。お母さんは仕事で疲れて寝ていたのです。
「いや私の同期だよ」お婆さんが言いました。「ほれ、見てみ」とアルバムを指で指しました。
「ええ?」お父さんは、若い女性とアルバムを交互に見て驚きの声をあげました。それは古い学校の卒業アルバムのようです。そこには、他の写真で見たことのあるお婆さんの若い頃の姿がありました、そしてその隣には、目の前にいる女性そっくりの女性が映っているのです。
「ウラシマ効果でね・・・」と婆さんは腕を組み真面目な顔付きで言いました。
お父さんは、驚きを隠せないようでした。「まさかもう光速エンジンのロケットが?そんな事が・・・まさか」という言葉が喉に詰まってしまいました。そして、ぽかんとした声で、「どうぞごゆっくり」と言って部屋から出て行きました。
「堅物をからかうと面白いだろ」おばあさんが言いました。
「大丈夫ですか、いくら私が祖母の若い頃にそっくりといっても、やりすぎじゃあ?」
「いいの、いいの。で、ミヨちゃん元気かい?」
「はい、とっても。若返り処置が落ち着いたら来るそうですよ。」