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33.

 やがて、到着した建物。ここがブラウンズ博士の家だ、とタイザーは案内し馬車から降りる。煉瓦造りで平家の小さな外観に、なぜか玄関扉は溶接した金属で出来ていた。その扉には取っ手がない。隙間もなく、壁のように埋まっている。


「どうに開けるんだっけなぁ」


タイザーは扉を前に頭を掻く。ふと、思い出して手をそっと扉の前に掲げた。

すると、扉に稲妻のような光が入る。タイザーの掌の形に光が集まると、金属の扉は透明になりスッと消えた。


「?」

「なんです、この仕掛け…入れるんすか?」

「えー…たしか掌の静脈認証だったか、家族の血管情報が登録されてて、それが鍵になってるって言ってたな」

「ジョウミャクニンショウ????」

「そこのとこ詳しく!」


食いつくレイと、聞かなきゃよかったと嘆くロキ。正反対の反応にタイザーは苦笑した。

入り口から説明してたら日が暮れると、タイザーは中に入る。中は中で一癖も二癖もある仕掛けだらけなのだ。


まず、平屋と見せかけて、中に入った途端に、宮殿以上の広間が広がっていた。

噴水もある。水を囲むように白樺の木が立っている。ベンチも置かれて一見新緑の別荘のようだ。

噴水を中心に円状になった広間は、壁沿いに10個ほど扉が付いて部屋が分かれていた。


「え?どういうこと?この広さ…異空間なのか?」

「外観は見せかけらしいな。仕掛けは俺もよく分からないが。あ、下手に触るなよ。何が発動するか分からん」

「え」


ロキはもう遅いとばかりに、手に謎の球体を持っていた。

鉄で出来た球体は、ロキが触れた途端に黒色から青く色を変える。

そして、そのまま宙に浮いた。


「言ったそばから、なにをしてる」

「手が離れないっす!どうゆうことー?」


球体を持ったまま、宙を右往左往するロキ。操縦不能でされるがままに空を舞う。


「ロ、ロキ!大丈夫か?!」

「わーん、どうすればいいんですかー?」

「ったく…じぃさん、じぃさーん!居るんだろ?!どこだ?!」


大声をあげて祖父を呼ぶ。何度目かの呼び掛けのあと、10個のうちの一つの扉が開いた。

出てきたのは、白髪白髭の老人。高齢だが背筋はピンとのび、白衣を着ていて清潔感のある男性だった。


「誰かと思えば、タイザーじゃないか。久しぶりだな」


ニカっと笑う顔は、どことなくタイザーに似ている。

ブラウンズ博士だ。

レイは、憧れの人の登場に胸が高鳴る。


「じぃさん、まずはこの仕掛けを解除してくれ」

「だーはっはっは!良いぞ良いぞ。試作品を使ってくれる輩を探してたんだ」

「被験者じゃない、客人だ。降ろしてやってくれ」

「えー…魔力をこう、エイッとやれば解除する」

「俺、魔力使いこなせません!」

「しまった。竜族仕様じゃなかったか」


失敗失敗、とロキをそっちのけでメモを取りはじめる。

どうやら解除方法がないらしい。

レイはロキに向かって魔法陣を描く。発動した魔法はロキを包み、ゆっくりと地面に降りてくる。

とりあえず地に足を着いたが、どうしようと、レイは悩んだ。


「レイ様、ありがとうございます。でも身体めっちゃ重いっす」

「すまない、とりあえず10倍の重力をかけただけで、解除したわけではないんだ」

「一歩も動けないっす」

「下手に触るからだ…鍛錬だと思って頑張れ」

「えー?!」

「大丈夫じゃ。その装置の効果は一時間しか保たん」

「一時間このままっすか!?」


ギギギ…とロボットのように固まったロキを差し置いて、ブラウンズ博士はレイを見た。

目が合ったレイは慌てて、頭を下げる。


「はじめまして、ブラウンズ博士。私はレイ・フォン・ファルセンと言います。ブラウンズ博士の論文、愛読してます。お会い出来て光栄です」

「ファルセン…?もしやファルセン侯爵の?珍しい、地上の客人か?」


ブラウンズ博士は髭を指で撫でながら、レイをマジマジと見る。


「黒髪黒目、まさか地上にいた黒龍の神子って奴か」

「じぃさん、直球で聞くなよ。俺の弟子だ。じぃさんに会いたいっていうから連れてきた」

「わしに?しかもお前の弟子だと?ますます珍しい奴だな」


レイの周りをグルグル回りながら、360度から観察される。どう反応すればいいか、レイは固まった。


「ふむ…稚児か」

「!」

「こう見えて成人してる。気にしてるんだ、言わないでやってくれ」

「だーはっはっは!すまんすまん!」


背中をバンバン叩かれる。驚くほど気持ちの良い性格は、さすがはタイザーの血縁者だと、レイは思った。


「まぁ、立ち話もなんだ。茶でも出そう。客人は珍しいからな」


ブラウンズ博士はそう言って、ニカっと笑った。

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