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21.

 加護というのは、龍神様の力を全身に纏わせるようだ。邪気から身を守る事ができると言う。

魔法が毒になること説明すると、リオウとランスロットは既知の事実に頷いたが、国王は初耳だと酷く驚き怒った。

今回の火傷はアルフレッドの意図的な攻撃魔法だと思っていた国王は、事の次第を改めたようだ。


「レイ嬢の弟は危険な魔法を当ててでも、レイ嬢を探したかったのだな」

「かなり焦っているようだね。まぁ、ランスロットが龍に乗って連れ去ったのだから、この国にいる事は察していただろうよ。だがこの国の位置は国家機密事項だ。場所を知られたのはまずいね」

「地上に降り立った龍達が最近次々に行方不明になっている。時間の問題だな」


深刻な話をする二人に身が縮こまる想いだ。

自分が原因で国を揺るがす大きな禍いが起こっているのだ。世間知らずなレイには未知の領域過ぎるからこそ、想定以上の事がスイッチひとつで起こり得る事態に怖くなる。


「私が地上に戻ればいい話では?」


事が大きくなり過ぎる前に収束させるのはそれが一番だ。先程リオウに真実を聞いたからこそ、アルフレッドと話す価値があると思った。

だが、その考えはここにいる全員から全否定される。


「なしなーし」

「却下だ」

「レイ様、馬鹿なことを言わないでください」


「うっ…」


下手に国交に口を挟むものではないのか。三人の冷たい言葉に心が折れた。


「今日呼んだ一番の理由はレイを守るためだよ。国の安寧の為にレイを国交の材料にするわけないから」

「我が国において、レイ嬢の存在は国の宝だ。第一にまだこの国に来て日も浅い。国民に披露目の会もしていないというに」

「レイ様、冗談はほどほどに。真面目な話です」


大人三人に説き伏せられる。なかなか精神的にきたレイは、大人しく口を噤んだ。


「私の力は魔法とは違うから、レイには効くといいのだけれど。ただ、特異体質のレイは例外だから、変な感じがしたらすぐ言ってね」


そう言って、リオウは掌を広げレイに向けた。僅かな風とともに光が集まる。

ゆっくりと、温かな風がレイの全身を纏った。

暖かく優しい風に身を委ねていたが、しばらくすると、レイは気持ちが悪くなって胸を抑えた。


「…リオウ……」

「おっと、ここまでか。僅かだが神力も拒否反応があるね。困ったな。最低限のことはできるけれど、万が一、病気や怪我をしたらレイを治すのは難しい」

「薬は大丈夫だと聞いた。タイザーと面識ができたそうだな」

「タイザーか、いいね。医術が使えるならまだ希望はある。だが、引き続き護衛は付けてね。何があるか分からないから」

「もちろんです」

「ランスロットは返事だけはいいなぁ。次に失態があったら、レイの護衛から外して、遠い辺境地に行ってもらうからね」

「う…、わ、分かってます」


気持ち悪さに耐えている頭上で、会話がされる。

そんな中でも、レイは(ランスロットが離れたら寂しいなぁ)と思い、怪我をしないよう努めようと思った。


リオウは力を解除して、レイを再び抱き上げる。


「ごめんね、辛かったね。だけれど、少しだけ力を与えたから邪気は跳ね除けられる。あとはコレを付けていて」


そう言うと、リオウはレイの左手を取り、中指に指輪をはめた。金色で装飾のないシンプルなものだ。ぶかぶかの指輪は、レイの指に入ると形を変えて指に吸い付くようにフィットした。


「これは?」

「加護とあわせて、保険だよ。コレを付けていればレイの命は守れる」


レイはマジマジと指を見た。僅かな力を感じるが、この小さな指輪が命を守るとは、どういう仕掛けだろう。

魔道具と同じだろうか?

深刻な話の間でも、つい探究心が湧いてしまうのはレイの悪い癖だ。


「あー、それにしても、本当にレイは小さくて可愛いね。前の子は竜族の男性だったからレイの倍はあった。こうやって抱きかかえたのは幼児の時だけだったよ」

「確かに、宰相殿はこの国でも群を抜いて体格の良い方だった」

「宰相…?前の黒龍の神子は宰相だったのか?」

「そうだよ。堅物でね、丈夫な子だったから100歳は生きてくれたね。政務に関わるなと言ったのに、宰相になって最期まで仕事をしていた。私は一人の子の命しか加護できない。そして命を終えれば次の命を生み落とす。そう繰り返してきた。その歴代でもレイの身体は小さくて神力も魔法も効かないから、なかなかに心配だね」


(そうか…一人なのか…)


レイは少なからず、自分と同じ黒龍の神子に会えると期待していた。だが、すでに先代は亡くなっていて、やはり黒髪黒目はこの世に自分だけなのだ。境遇の同じ仲間に会えないと知り少し悲しくなった。


「レイ嬢はオスカー殿にお会いしたか?」


以前、タイザーからも聞いた名前に、レイは反応する。


「いや、会った事はない。タイザーさんにも言われたが、オスカーさんというのは誰なんだ?」

「あー…」

「ランスロット、敢えて会わせないようにしているな?」

「はい…バレましたか」


国王とランスロットの会話に、ますます疑問になる。クエスチョンマークを掲げて首を傾ける。


「オスカーは今の宰相、先代の『黒龍の神子』の孫だよ」


見かねたリオウが、代わりに答えた。

先代の血縁者に、レイは興味惹かれる。だが、レイの反応とは裏腹にランスロットは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「オスカー殿には、会わないで済むならその方がいいです」

「なぜ?私は『黒龍の神子』の話を聞いてみたい」

「…いや、でも、まだレイ様と会わせる訳には…」

「だが、ランスロット。オスカー殿から逃げるのもそろそろ限界だぞ?」

「それは分かっているのですが…」


なんだ、その謎のやり取りは。二人の会話に入っていけない。ランスロットが会わせないという理由はなんだろうか。

訳を知っているリオウは頭上でケラケラ笑っている。


「私はレイとの逢瀬が解禁されて良かったよ。これからは、こんな堅苦しい神殿じゃなくて、いつでも会おう。呼べばすぐに駆けつけるからね。忘れないで、私は全てを差し置いてでもレイの味方だから」


リオウはそう言って、眩しいほどに微笑むと、再びレイの額に形の良い唇を落とすのだった。


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