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テンプレ短編

婚約者は、わたくしに縛り付けられるのを望んでおります!!

作者: hoshiimo

性癖が極まっちゃって手遅れな元おねしょた。




「ちょっと!!あなた、こんなところで何をしているのよっ!!いい加減、彼を縛り付けるのはやめてっ!!」


 ドアをバンッとあけ放ち、いきなり部屋に飛び込んできたメイドがそう叫びます。


「……お騒がせしてしまったようで、大変失礼いたしましたわっ!!」


 思わず立ち上がり、直角に腰を折り謝罪の意を表したものの…、あら、防音の結界は正常に機能していますわね。

 仕事に一区切りがついたところに、可愛いペットがひゃんひゃん言いながら飛び込んで参りましたので、休憩がてら執務室で戯れておりましたの。

 うちの子サイコーと夢中になって撫で繰り回しているうちに、うっかり姦しい声が響いてしまったのかと…。冷や汗を掻きましたのに。

 

 けしてけして、サボっていた訳ではないのですが…、仕事場ということでね。

 周囲に色々とだだ漏れていたのかと、後ろめたかったのです。

 騒音への抗議の意を示す『壁ドンッ』の亜種の『ドアバンッ』を食らったものかと。

 

 とっさに謝罪したのですが、どうやら違うようですね……。


 ハッ!!もしや、盗み聞き?


 冷静になってみれば…、この方全く見慣れないわ。

 この辺りに出入りする女官は皆顔見知り。この方の身につけている王宮内の見習いメイド用の制服では、機密情報のある区域に立ち入りできない規則のはず。

 

 むしろあちらのほうが不審者というお騒がせな存在ではないの!! 彼女は怒りに顔を赤らめ喚き散らし己こそがわたくしの婚約者の真の理解者だなどと訴えます。


「……あの、いきなり入室してこられたあなたはどこのどなた様?わたくしどもに何か思う所があるのかしら?」


 怯えを悟られぬ様、なるべく冷静な対応をするしかありません。

 あとになって思い返してみれば、こういった状況は恋愛小説ではよくあるらしい定番ですよね。


 けれど、実際に遭遇した時点では『嘘でしょ。まさか彼が…』などと無実の婚約者に対して疑心暗鬼に陥る心理には、どうにも至れませんでしたの。もちろん『わたくしの様な者は彼には相応しくないのでは?』なんて陶酔型自己否定感情も発生しません。


 だって、婚約者の浮気現場に遭遇したのではなく、ただの不審者からの言いがかりですよ!!


 顔の良い貴族令息や、舞台役者、若手の騎士様などには人気が高まるあまり、厄介なファンが付いてしまうことなど、ままあることですし。


 夜会や茶会などで僻みや、陰口を叩かれることなどもございますが、それらは王族の婚約者の勤めの一つと割り切っておりますの。


 もちろんこちらも足を引っ張られないよう立ち回りますし、あちらも名家の御令嬢、お互いに立場というものを弁えております。


 本気で潰す気でいるのなら、表では友好的に振る舞い、裏で策略を練るのが貴族の嗜み。毒を盛る実行役でさえ素知らぬ顔をするものなのです。


 だから、ここまで怪しさ丸出しの不審者との接敵は、わたくし初めてなのですわ。

 一見武器も持たない無防備な小娘にしか見えない相手であれ、いえ、だからこそ身構えざるを得ません。


 ここは学園ではありません。学生間のトラブルでは済みません。

 ちょっとした苦言のつもりだろうと、見過ごしてあげる理由も御座いません。

 何せ王宮の王子の執務室(機密情報満載)への不法侵入ですから。


 衣装まで調達しているということは充分に計画的な犯行と見なされます。 

 既に危険人物で確定ですが、このまま過激なご意見や不快の念を訴えるだけで終わるのか、刃物や薬物、爆発物、魔法などよる傷害行為や窃盗にいたる予定であるのか、わたくしには判別できるませんもの。


 貧弱でしがない研究者のわたくしとしては、とにかく時間を稼がなくてはなりませんわ。



 聞けばこちらの自称男爵令嬢ちゃんは、本日絶賛開催中の、セミナー、夏休み限定学生対象王宮見学&お仕事体験会の参加者だとか。なるほど、そこで衣装を確保されたですね。


 先ほどお会いした第三王子殿下からの目くばせの合図に従い、お昼休憩の時間になったので、二人っきりの内緒のランチデート☆の予定でここまで来たのに、お邪魔虫のわたくしがいたことで驚きのあまり声を荒げてしまったなどと供述しております。


 内容はさておき、どうして執務室まで侵入出来たのかしら?見習い用メイド服の着用だけで誰何もされなかったというの!!

 

危機管理に不満を抱いたものの、これって、殿下が無駄に強力な防音の結界を張っていたことも一因ですわよね…。わたくし共の自業自得過ぎるけど、あぁー、誰か、早く助けに来て!!



「これ以上、殿下を縛り付けるのはやめてくださいっ!!あなただって本当は間違ってるってわかってるんですよねっ。だから謝ったんでしょう。4つも年上なんて絶対におかしいって。大人しく殿下を解放してっ!!」


 解放って、そんなことを言われましてもね。

 不法侵入者の分際で、こちらを立てこもり犯呼ばわりとは、非常に不愉快です。


 これも(何するか分からないから)ほっとけないタイプって言うのでしょうか。

 外見だけはいわゆる守ってあげたくなるような、あどけないかわいらしい容姿のお嬢さんですが…。


「間違いですか?」


「そうです。明らかに間違ってます!!殿下が病弱だった幼い頃の遊び友達だっただけのオバサン婚約者って、誰でも知ってるわっ。彼は学園のみんなからも慕われてて、陽だまりの王子って人気者なんです!!昔の思い出を盾にして縛り付けるなんて、最低よっ!彼の本当の幸せのためなら、()()としてただあたたかく見守るべきでしょう!!」


 ひだまり王子をあたたかく……。おもしれー女がおもしれーこと言ってるーけど、ここで笑ってはいけない。


 王族のみの使う光魔法を、第三王子殿下は光量、気温、地熱等の管理に活用し、栽培研究を行っております。各領地の気候や土壌に合わせた農作物の普及や品種改良を目的としたもので、王宮内の専用温室から始めた取り組みは、既に王領の一部での実地研究もなされていて、反応も悪くはありません。


 もっともこういったものは長期的な視野が必要なため、収益化にまで至っていない現状、公にできるアナウンスとしては、遊びではなく(王族の行う予算のかかる研究と言っても金を溝に捨てる類のものではなく)国益に繋がることをしてますよーという程度。詳細な情報を共有するのも限られた人員のみ。


 ゆえに『光魔法の活用にしては、地味でよく分からないし何の実績もないけど頑張っているらしい王子』という程度の残念な認知がなされており、第三王子殿下には『陽だまりの王子』という生ぬるい通り名が、学園内で生まれてしまったらしいのです。


「わたくしは、殿下の行っている栽培研究の、共同研究者でもあるの。過去の繋がりだけでなく未来に向けた国家の繁栄の政略も含めたご縁だと認識しているのだけど」


「政略だなんて、そんな冷たい関係、間違っているわ!!彼だってもっと本当の温もり、燃え盛るような恋や、情熱的な愛のカタチを望んでいるはずよ!!」


 今度は温もりね。この方脳内がホットで常春なお花畑ということかしら。流石はおもしれー女だわ。


 キャットファイトを楽しんでいる場合ではないのだけれど、惚気て煽っては危険だろうと、利を説いてみたところで、通じる相手がなかったわね。

 どうしましょう、時間は稼ぎたいけれど、もはや返事のしようも無いわ…。


「分かったでしょう。彼をもう、自由にしてあげてっ!!わたしは可哀想な彼を救ってあげたいの!!」


「……あなたは殿下の何をご存じで?彼はむしろわたくしに縛り付けられるのを望んでおります!!とりあえず、入室許可もない不法侵入者をこのまま解放する訳にはまいりませんのっ!!」



「大変お待たせしました!御協力感謝致しますっ」

「貴様、立ち入り禁止区域になぜ侵入している!!」

「連行しろっ!!」



 結界を解除して無音の非常時のサインを出し待つこと数分。

 警備の皆様の駆けつけてきた気配を察知したので、すかさず草魔法で拘束致しましたわ。


 最初からそうしてろよと思われるかもしれませんが、この蔦による拘束は熱にも刃物にも弱い、大変脆弱なものなのですよ。

 臆病者のわたくしとしては、こうして皆様に囲んで魔封じを掛けて頂く直前で無ければ、手を出せなかったという理由です。


 王宮内の警備の皆様と第三王子付き近衛の方々に事情を説明した後「気軽にガチな結界掛けるのはやめろ」とか「執務室では程々に」という耳に痛い御指摘を賜り黙して頭を下げるのみであります。


 ひとまず不審者を連行していかれましたが、これは確実にお説教くらう流れですわね。分かります。


◇◇◇◇


「……ふふふ、縛り付けられるのはお嫌でしたの?」


 前が覆われていて足元が見えないタイプの執務机で、本当に助かりましたわ。

 わたくしの足元に転がっていた第三王子殿下は、全裸で蔦に縛られたままプルプル震え、今まで全力で存在感を消していたのですから。


 近衛の方々には確実にバレてましたが、とりあえず直で目撃はされなくてよかった。本当によかった。お小言の前に着衣の乱れを整える時間まで頂き、部屋の外で待機して下さっている皆様の優しさには、感謝感激雨あられでございます。


「……もうっ。貴女になら、ずっと縛られていたいって分かってるくせにっ」


 そう言いながら私の手に縋りつき、頬をこすり付ける殿下は、本当に可愛いですわね。

 

 いやーうちの子、カワイイ!!先程までのチワワみたいに震えている様子もとっても可愛かったけれど、こうして安心しきった表情でわたくしに身を任せる姿の方がずっとずっと可愛いのですわ。


「……先程の方ご存じでして?」


「あー、学園の中庭や温室、図書館等でやたら絡んでくる男爵家の庶子の娘。妙に個人情報を知っている謎の不審者だよ。僕以外にも、複数の高位貴族子息に接触してくる、いわゆる迷惑行為の常習犯で警戒対象」


 あらあら、眉間に皴。駄目よっ、伸ばしてサスサスして痕が残らないようにしてあげましょうね!…やはりアレはそういう類の方でしたのね。

 


 本日のセミナーでは、彼も在学中の王族として参加者の方々に歓迎の挨拶をされていたそうなのですが、その際にも纏わりついて来られたそうで…。さらなる問題を招きそうな兆候も見受けられたため、急遽予定変更して昼食会の参加を見合わせることとなったのだそうです。


 同級生や他の学校の生徒さんたちに、公務に励む姿を見て貰える機会だと張り切ってらっしゃたのにね。未来の研究員をスカウトできる切掛になるやもとあんなに楽しみにされていたのに…、残念でしたわね。


 あの方は学園内でも問題視はされており、迷惑行為への警告まで受けていたのですが、ギリギリで一線を越えたという判定にまでは至っていなかった存在だそう。時間の問題ではあったでしょうし、本日で区切りがついて良かったと思いましょう。


 公務予定が流れた切なさを慰めて貰いたくて、わたくしに会いに執務室へ戻られただなんて、本当に殿下ときたら、もうっ、憎らしいほど可愛い方ですわねっ!!

「執務室でなんて……、今日はとっても積極的ねっ」とは思っていたのですよね。うふふふ。



◇◇◇◇



 幼少のみぎり、病弱な殿下は療養のため王領の中でも緑豊かな地に長期滞在することとなりましたの。王宮から一人離れた寂しさを少しでもお慰めしようと、代官を務めていた父がわたくしを派遣、遊び相手を務めさせて頂きました。


 読み聞かせや簡単な読書やお絵かきなど、室内での大人しい遊び。

 お体に障りがないものが多かったのですが、たまには違ったことも試したくなりますよね…。

 なので体調が良い時には特別に、殿下の大好きな物語に関するごっこ遊びなどもして、楽しく過ごしました。


 けれど九歳の子と、病弱な五歳の子とでは玩具の剣を振り回したり、駆け回ったりするのは危ないでしょう。


 そこで『魔物と攫われた王子』や『オークと聖騎士』ごっこなどの、あばれるより演じるという要素の多い遊びをしていたのです。


 体力が無い殿下は、人質役などの動きは少ないけれども非日常感のある縛られる役がお好きだとおっしゃっていました。


 植物魔法が使えるわたくしにキュッと蔦で括られては「クッスルモノカーッ」とお顔を真っ赤に染めて台詞を放つ殿下をコロコロ転がしたりあちこちをくすぐったりと悪戯しておりましたの。


 王室の皆様にとって、年の離れた末っ子だった殿下は、それはもう大事に育てられてきたそうで。幼いうちから病弱で可哀想で可愛い子だと大切にされておりました。そのような扱いしか知らなかっただけに、ごっこ遊びで味わった拘束や痛みや辱めなどの感覚が、あまり新鮮で、すっかり魅了されてしまったそうで……。


 そんな日々が三年も続き、体調が落ち着いて八歳となって王宮に戻られてからも、殿下は緑豊かな王領に度々遊びにやって来られました。

 そして更に三年ほど立ち、大人たちに()()()()が発覚した結果、わたくしは有難くも殿下の性癖を歪めた責任を取らせて頂けることとなりました。


 えぇ…、何かがおかしい気はしてましたわ。ですが気づかないふりをしておりましたの。

 田舎で多少わんぱくな振る舞いをするぐらいのこと、許されても良いのではないかと。


 『もっときつく縛ってくれ』『訓練の為だから』などの苦しい言い訳と、エスカレートしていく遊戯を、殿下もわたくしも、楽しんでいたものですから。


 小さな殿下が恥ずかしそうにプルプルと震える様に、キュッとされて浮かべる潤んだ瞳に、わたくしの中に込み上げる感情は、いけないことをしているのだと理解はしても、やめられないとも悟ったから。



 魔力過多症で苦しんでいた殿下が、療養の結果、野山を駆け回り、乗馬を楽しまれる程に、健やかになられたのです。また縁あるこの地の植物を王宮でも目にしたいと光魔法を使った研究も始められ、その向学心豊かな様に、王家の方々も、可愛い可愛い小さな王子が、元気になって王族としての責任感にも目覚めたのだと大変喜んでおられましたの。


 そんなものより早く、より強固に、特殊な性癖が目覚めていたのだと発覚するまでは……。


 かくして皆のアイドル第三王子殿下を汚した責任を取り、十五歳になったわたくしは、有り難くも十一歳の第三王子殿下の婚約者と相成りました。


 殿下の学園卒業直後に婚姻、思い出の直轄地と王宮の研究所を兼務する形での、臣籍降下の決定です。実質的には、王室からの追放です。


『この子ときたら、病弱だったせいか…のんびり屋さんに育ってしまって……、薄汚い宮廷政治の足の引っ張り合いには、ついていけそうもないわっ!心優しい子だから、大好きな植物の研究をさせてあげたり、長閑な土地で穏やかに領主業をさせるしかないのかしら……』涙ながらに語っておられた王妃様までもが、頭を抱えて諦めざるを得ませんでした。『よそ様の前で己のイカレタ趣味の話を絶対に漏らさないように!あなたは政治や社交の場からは、なるべく距離を置きなさい!!』 実の母がそこまで割り切らざるを得ない程、十一歳の殿下は、既に手遅れだったのですから……。



 あれから七年。なり行きと責任で婚約者となったわたくしですが、草魔法を用いて殿下の共同研究者としても認めて頂けるよう、日々精進してまいりました。


 結界の防音、光学迷彩で教育係や護衛の目を誤魔化すなど、殿下が豊富な魔力を生かして下さるお陰で、お仕事だけでなく日々も快適に過ごしております。


 もはや秘密の関係ではなく、正式な婚約者である以上、王宮内での振る舞いには、本当に気を付けなくてはなりませんね。


 二人だけの時間は特別なものですから、これからも秘密にしておかなきゃですからね。



全然反省していない破れ鍋綴蓋。

男爵令嬢ちゃんは乙女ゲー知識で攻略対象の出没エリアを常に察知していたけど、好感度は全く上がって無かった。


よろしかったら、感想やいいね、ブックマーク、★評価などでのリアクションをお願いします。

次作へのモチベが高まります。


他の短編も基本的に名前なしのテンプレで構成されています。

名前のある中編や長編もあります。

お時間のある方は、お読みいただけましたら、幸いです。

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