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 王都に戻ってすぐは、ユリアに突然出かけたことへの謝罪と、グロリアに祝福の力を無効化する剣の威力? 効果? どっちかよく分からないけど、まあ、それの話をしに行ったり、と慌ただしく過ごしていた。


 しばらくしたら落ち着けるからその時にラフォン様のことを聞こうと思っていたのに、それより先にお城へと呼ばれてしまった。


「何の用だろ?」

「シェスタ・マーベレストに関する話らしいが、僕まで呼ばれるのだからもしかしたら、向こうで何かあったのかも……」

「何かって何?」

「それは分からない。どうせ今から説明があるのだから、それを聞こう」

「うん」


 いそいそとジゼルと城の中を歩きながら、一体何があったのかと考えさせられる。


 シェスタ・マーベレストに入ったスパイが全員捕まってしまったとか?


 それだったら、別の人が行くみたいなことを聞いたことがあるから、多分違うよね。


 じゃあ、何だろう。ラフォン様に何かあったとか?


 でも、ラフォン様は王族だ。ラフォン様が危険な目に遭うとか早々ないはず。


 だから、何があったのか分からない。


 もしかして、何度も国境を渡ったからシェスタ・マーベレストの姫があたしに気付いてグレース側に身柄の要求をしてきたとか?


 それだったら、まだ納得は出来る。


 それで、しばらくどこかで大人しくしてろとか言われたりするんだろうか?


 これからどうなるのか分からないけど、なるようにしかならない。


 どんな話になるんだろうと、待っていたら王様が数人連れだってやってきた。


 その中にはグロリアもいたが、グロリアの顔色がちょっと悪いような?


 気のせいなのかもしれないけど、後で確認しておいた方がいいかな?


「皆、座ってくれ。今日は大事な話がある」


 挨拶もそこそこに着席させられた。


「聞いた者もいるだろうが、先日この国に来たシェスタ・マーベレストの王族のラフォン君と連絡が取れなくなった」

「え」


 ラフォン様と?


 というか、どうやって連絡を取れたんだろ?


 だって、結構距離があるし、ラフォン様は王族だから城にいる時間もそれなり以上にある。


 いくらグレースのスパイが優秀だからと言って、姫の祝福を掻い潜って、城の中まで行けるのだろうか?


 誰か他にも協力者がいるってこと?


 いや、それよりもラフォン様は大丈夫なんだろうか?


 王様の言葉にあたし以外にも驚いている人が数人いる。けど、グロリアは驚いた顔をしてないから多分知っていたんだと思う。


 グロリア以外にもわりと落ち着いている人もいるみたいだけど、この人たちも知っていたのかな?


「静かに! この件についてはまだ調査中だ」

「ですが、陛下。あの者はこちらの作戦のことはある程度知っています!」

「そうです! やはりシェスタ・マーベレストの者を信用するべきではなかったのですよ!」


 この場にいる人たちの口調が段々と荒くなっていく。でも、それよりあたしが気になるのはラフォン様が無事かどうかだ。


 グレースの王様が調査するとは言ってるけど、わざわざ人を集めて言うってのは、結構状況が悪いってことでしょ?


 そうじゃなきゃあたしたちまで呼ばないだろうし。


「ラナ、ラナ」

「え?」

「大丈夫か? 顔色が悪い」


 ジゼルに声を掛けられて、ハッとする。


 顔色が悪いといわれても、鏡を見る訳にもいかないので、自分がどんな顔色をしているのかは分からないけど、でも、ラフォン様が無事なのか分からないいのが不安で堪らない。


 それに、この騒々しさ、自分が糾弾されている訳でもないのに、凄く恐ろしいことが起こったみたいで、今すぐ逃げ出したくなる。


 だけど、今逃げ出したとしたらあたしもあの国の人間だもん、あの国出身ってだけで気に喰わないって人もいるんだから、ここで弱いところなんて見せられない。


 ジゼルには大丈夫だと伝えて深呼吸する。


 ラフォン様のためにも今ここで倒れる訳にはいかない。


 ここの人たちを納得させられる言葉なんて持ってないけど、それでも、ラフォン様のために出来ることをしなくちゃ。


「今すぐ開戦するべきです! これ以上調査をしたところで、あの者が我らの味方である可能性なんてほぼあり得ないでしょう!」

「ラフォン様はそんな人じゃないです!」


 思わず机を叩いて叫んだ。


 あの国のことは悪く言ってもいいけど、ラフォン様のことを悪く言われるのは、やっぱり無理。


「ラフォン様はあたしみたいな孤児の話もしっかり聞いてくれるすごくいい方です! そんな人が急に連絡が途絶えただなんてあの国か何かしたに決まってます!」

「だが、それを我々は知らない。だったら、あの者共さっさと見切りをつけた方がこちらのダメージは少なくて済む」

「じゃあ、あたしがラフォン様を見つけたらいいですか?」

「何?」

「あたしがラフォン様を見つけます! だから、それまでラフォン様を信じて待っていてください!」

「そんなのいつまでも待ってられる訳ないだろ!」

「そこまで」


 あたしと、言い合っていた人たちが段々とヒートアップしていたら、王様からストップが掛かった。


 あたしたちは王様の方に視線を向けて、王様の言葉を待つ。


 王様が言い終わった後、ラフォン様のこと悪く言った奴らのことは殴る。


 大抵のことはジゼルが庇ってくれるって言っていたし、一発ぐらいは殴っても問題ないはずだ。


「ならば、ラナはこれからシェスタ・マーベレストに向かい、ラフォン君を探してくれ」

「陛下!」

「分かりました!」


 殴れなかったのは、残念だけどラフォン様を探すためだ。仕方ない。


「それから、ここにはこの子に対する不信感を持つ者もいるみたいだから、人をつけよう」

「それならあたしが行きます」


 声を上げたのはグロリアだ。


 グロリアの言葉に辺りはざわついたが、誰も反対する者はいなかったため、その場はお開きになった。

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