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 国境に着いてからすぐに、あたしと一緒に行動してくれる騎士たちに挨拶したが、いかにも騎士らしい格好ではなく、町民に混じったような格好をしていた。


 顔合わせは、国境の街にあった宿屋の一室だった。


 ただ、みんな顔がいいので貴族のお忍びにしか見えないのだけど、それでも、祝福持ちがいれば向こうは気にしないのかな?


 グロリアはあたしが挨拶を済ませるのを見届けると、自分は別行動だからと行ってしまった。


「えっと……」

「俺たちが国境をうろつくのは夕方だ。もう少しあるから落ち着きなさい」

「あ、はい……」


 どうするべきなんだろうと口を開き掛ければ、このチームのリーダーのオレイオさんに言われて大人しくその辺に空いていた椅子に腰掛けた。


 腰掛けた後、みんなの顔を見る。


 まず、リーダーのオレイオさん。精悍な顔立ちのがたいのいい40代ぐらいのおじさんだ。


 オレイオさんは青い瞳に短い金髪を刈り上げている。鋭い視線で時たま外を覗いたり、メンバーに声を掛けたり、掛けなかったりしながら時間を潰しているみたい。


 オレイオさんに一番声を掛けられているのは、赤い髪の女性。


 その人の名前は確かマティーナさんだったかな? キリリとした顔は女性なのに格好よく見える。こういう人が女騎士だと頼もしそう。


 マティーナさんの隣にいるのが、フィーという名前の男の人。年の頃はマティーナさんと同じぐらいの二十歳前後で、この人は焦げ茶の髪に黒い瞳をしている。


 フィーさんは二人の会話には殆ど加わらずに、手帳に何事かをガリガリと書いている。


 何を書いているのか気になるけど、話し掛けてもいいものなのか悩んでやめた。


 任務に必要なことだったら後で教えてくれるだろうから。


 で、最後の一人、あたしに一番近い場所に座っているオレンジ色の髪に緑の瞳のほっそりとした40代ぐらいの女性、グランディーナさん。


 この人はたまにお菓子を食べたり、お茶を飲んだりと一番リラックスしている。この人は騎士ではなく、文官らしい。


 みんな旅人に紛れるためなのか、オレイオさんとフィーさんとあたししか剣を持ってない。


 マティーナさんとグランディーナさんは町人の女性と同じような格好をしていた。


 あたしはお転婆な女の子って感じなのかな?


 よく分からなくて聞いてみれば、あたしたちは家族という設定であたしは騎士に憧れる末っ子という設定らしかった。


 あと、あたしたちは商家の一家で、家族で商品の買い付けにシェスタ・マーベレストに行くっていう設定らしい。


 グランディーナさんは祝福持ちが足りないからと駆り出されたんだそう。


 この人が祝福持ちらしい。


 何の祝福か聞いたところ、蝶を生み出すことが出来るらしい。


「でもね、残念なことにあたしの祝福は生み出すだけで、この蝶を操れる訳ではないのよ」


 蝶だけであっちが反応するの? と思っていたら、あの国はどんな祝福の力でも狙うらしい。


 昔拐われた祝福持ちの中には、書いた文字が綺麗になるだけの人とか、壁に描いた落書きが踊り出すなんて人もいたそう。


 それが、何の役に立つのかは分からないが、役に立つのか立たないのか分からない祝福まで必要とする理由は分からない。


 ただ、何の祝福持ちでもいいのなら、グランディーナさんが呼ばれたのも分からなくはない。


 ユリアにも話があったらしいけど、ありがたいことに怪我を理由にジゼルが拒否してくれたらしい。


 ユリアは怪我しているからだだけじゃなくて、あいつらが狙っているってことをグレースの人たちは分かっているのだろうか?


 それとも、あたしが家族だからユリアの身の安全をと身内の安全を考え過ぎていると言われたら、そうなんだけどさ。


 でも、グランディーナさんは怖くはないのかな?


 守ってもらえるとはいえ、狙われることには違いないんだし。


 その事を後でこっそり聞いてみたら、それ以上にあの国には強い怒りを抱いているからときっぱりと言い切られてしまったので、どれだけ嫌われている国なんだろうかってちょっとだけびっくりした。


「そろそろ時間だな」


 オレイオさんの言葉にハッと顔を上げれば、みんな立ち上がっていたので、あたしも慌てて立ち上がり、みんなに続いて部屋を出た。


 国境を通る時、あたしたちの関係は家族だとオレイオさんが国境の兵士に説明しているのが聞こえた。


 家族と言える程似ているとは思えないが、国境の兵士は特に気にする様子もなく、すんなりと通してくれて拍子抜けした。


 もっと疑わなくて大丈夫なの? と問いたくなったが、毎日たくさんの人が行き来するので、いちいち気にしていられないのだろう。


 あたしなんか指名手配されていたはずなのに、そんな人すら通れるとはと呆れるしかない。


 でも、簡単に入れるのなら別にあれこれ言うことじゃない。シェスタ・マーベレスト国側の兵が怒られるのならば、怒られればいい。


「とりあえずこのまま道なりに行く。他の通行人が減った辺りで祝福の力を」

「分かりました」


 グランディーナさんがしっかりと頷いたのを見て、あたしたちはシェスタ・マーベレスト国側の国境の街には留まらず、すぐに出発した。


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