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 ラフォン様はあの国に帰ってしまった。


 行かないで欲しかったけど、ラフォン様はこっちに来たことは誰にも言わずに来たため、戻らないといけないと言った。それに、こっちのスパイを引き入れるのも手伝うんだそう。


 あたしも入れたらいいけど、まだ駄目だって王様に止められている。


 復讐するのに協力してもらってるから仕方ないけどさ、でも、もうちょっとだけあたしの意見も考慮して欲しいんだけどなぁ。


 ジゼルやグロリアにはもっと強くなれるチャンスだと思えばいいんじゃないかって慰めてもらえるんだけど、あたしはあいつに復讐がしたいんだってば!


 確かにあたしがやられちゃえば、意味がないかもしれないけど、でも、少なからず強くはなっているはずなんだから多分ただではやられないと思いたいんだけど、どうなんだろ?


 稽古ばっかじゃよく分かんないや。


 実戦形式で戦えることがあればいいなと考えていたら、それは思ったよりも早くやって来た。




◇◇◇◇◇◇


 


「えっ、盗賊退治?」

「そう。盗賊と言ってもあのシェスタ・マーベレスト国の騎士たちなんだけどね」


 グロリアの話では、年々酷くなるシェスタ・マーベレスト国の誘拐事件は定期的に見回りをしているけど、それでも追い付かなくなってきている。


「あいつらは騎士じゃなくて野党だって言い張ってるけどね、統率された動きに剣のさばき方とか見てたらその辺の盗賊な訳ないし、盗賊にしては退治してもすぐに別の奴らが沸いてくる。あんなに盗賊になる人数が多いのなら、あの国の法律をさっさと変えた方がいいよ」


 グロリアはかなり不満が溜まっているのか、ムスッとした顔をして鼻を鳴らした。


 あたしにはグロリアの機嫌を元に戻すような言葉は持っていないけど、言っている内容はグロリアに賛成するしかないような内容だったため、相づちを打った。


「じゃあ、あたしも討伐隊に参加すればいいの?」

「ああ、危なくなったらあたしたちの後ろに隠れていたらいいから」

「それだと、強くなったか分からないよ」

「それもそうだな。ならば、騎士たちにはラナのサポートにまわるように伝えておこう」


 グロリアの言葉にようやく実戦に出れると喜びそうになったけど、グレースや、他の国の祝福持ちたちのことを考えると、喜んでる場面じゃないので、グロリアの話を大人しく聞いておく。


 グロリアの説明だとグレースとあの国の国境に赴き、表向きは盗賊退治であの国の騎士たちを追い払うんだとか。


「いつくるか分からないからこまめに休息は取るけど、疲れたらはやめに言ってね」

「うん」

「無理して寝不足のまま足手まといになる可能性もあるから適当に返事をしないこと」

「は、はい」


 適当に返事をしたつもりはなかったんだけど、でも、確かにちょっとぐらい無理しても平気なんじゃ? とは思っていたから、それを見透かされていたみたいで、慌てて返事をすれば、グロリアはしばらくあたしを黙って見つめた後で軽くため息を吐いた。


「分かってくれるのならいいけど、そうじゃなきゃ参加させられないところだったよ」

「分かってます! ちゃんと気を付けるし、具合が悪くなったら近くの騎士に言うから!」


 危ない。適当に答えていたら、連れて行かないって言われるかもだった。


 グロリアの話に震源に耳を傾けていたら、グロリアもあたしが態度を改めたことに気付いたのか、さっきより小言が減り、どういう風に動けばいいとかあれこれと話し出したので、多分大丈夫なんだよね?


 内心冷や汗を掻きながら真剣に耳を傾ける。


 当日あたしと一緒に行動する騎士は三人。


 他の人たちは別のところで行動するらしいので、分隊にして旅人のフリをして少人数で行動するとのこと。


 あっちが出て来るかは分からないので、チームには必ず祝福持ちが一人入るようにするので、誰と組むのかまだ分からないけど、数日以内には決まると。


 あたしはそれを待ってから出発なのかな? と思っていたけど、すぐに出発して欲しいと言われた。


 ユリアたちに声を掛ける間もなく、出発した。


 さすがにちょっとぐらいは大丈夫なんじゃ? とも思わなくもなかったけど、向こうがいつ来るかも分からないからとグロリアに馬車に押し込められてしまえば、文句を言ってる暇もなかった。


 せめてユリアに一言ぐらい言っておきたかったのに、それすらする暇もないなんて。


「とりあえず、この剣は持って行きなよ」

「え?」


 グロリアが渡してきたのは祝福の力を無効化する剣だ。


 この剣はあたしの部屋に置いていたのに、いつの間に持って来たんだろうか?


 というか──


「これ持って行ってもいいの?」


 味方の祝福の力も消してしまわないのだろうか?


「いいと思うよ。あっちだって祝福持ち捕まえるのに、祝福持ちを出してくるはずだから持って行った方がいいよ」

「そうなんだ」


 さっきそんなこと言ってたかな?


 全然覚えてないんだけど、でも、そんなことを言ったらまた話を聞いてないと思われるかもと思って頷いておいた。


「今回はこの剣の効果がどれぐらいかとか調べるのも目的だから、ラナも気付いたことがあればどんどん言って」

「分かった」


 その後はしばらく会話もなくなってしまったから、あたしは外の景色をのんびり眺めたり、時々グロリアに質問したりして時間を潰したりしていた。


 他の人たちは既に出発していたからグロリアは急かしていたらしい。


 あたしたちは一番最後に出発だったの? それならそうと最初から言っておいてくれたらよかったのに。


 何であたしが聞くまで黙っていたのよ。


 グロリアの秘密主義みたいなところは好きになれそうにない。


 他にも何か隠していることがあるかもしれないと、あれこれと質問している内に数時間経っていたらしく、休憩するために外に出た。


 馬車の外は、あの国から逃げて来た時と変わらない国境の街があった。


 あの時と違うのは、国境を通る人の顔ぶれが違うってことぐらいかな。

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