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 国に戻ってすぐは、出かけていたことがバレてしまってた可能性もあると内心警戒していたが、私の人形は優秀だったお陰か、泳がされているのかは分からないが、誰かに何か言われることもなく日常に戻ることが出来た。


 私たちが不在だった間のことをセリーヌから聞き出す。


 特に何もなかったとは思うが、何かあるかと聞けば、セリーヌはちょっと考えたような顔をしたが、すぐに答えた。


「あ、そうでしたわ! 殿下がいない間に何度か尋ねてきた方がいらっしゃいます」

「それは誰だ?」

「ギリウム伯です」

「ギリウム伯か……」


 ギリウム伯の顔を思い浮かべる。確かかなり肥えた体型に頭の方も薄い中年の男だったような気がする。


 彼は確か、子息を従兄弟殿の取り巻きの一人にしていたはずだが、私の方にはあまり興味なさそうだったのにどうしたことだろうか?


 従兄弟殿に何かあったのか? と思うものの、それだったらセリーヌも教えてくれるだろう。


 だとすれば、他に何か思惑があるのだろうが、心当たりになりそうなことは全くない。


「とりあえず会おうか。日程を決めておいてくれ」

「はい。それと、ここ最近のギリウム伯について調べておきましたので、後で目を通しておいてください」

「助かるよ」


 後で頼もうと思っていたのに、相変わらず有能なことで。


 ギリウム伯についての調書はそれなりにあったので、後で読もう。


 他にも報告があったので、それを聞いてからあちらであったことを簡単に話す。


 ただ、何も知らないセリーヌも巻き込むのはどうかと思って、あちらで見たことの特産品やら、この国との違いとあちらにいた彼女のことを伝えるとセリーヌは涙ぐんだ。


 セリーヌも彼女のことは気にしていたので、今回のことで教えてあげられたのはよかった。


 従姉妹殿の目がどこで見ているか分からない以上、それ以上言うのは憚られたが、彼女にはそれだけでも充分そうだった。


 あれこれと話をしたいが、とりあえずは一旦ここで話は終了。


 いなかった間にたまっていた仕事もしなければいけないし、もう少ししたらグレースの者も忍び込んで来る。その前に私もやることをしなければ。


「従姉妹殿に面会を希望しておいてくれるか?」

「姫にですか?」

「ああ、無理か?」


 従姉妹殿に会うこと自体少ないのに、わざわざ会いに行こうとしているのは、陛下に何かあるんじゃないかと疑われるだろうが、別にいい。


 既にラナが出ていった時にも疑われていただろうし、それは知らぬ存ぜぬで貫き通したので、何かあるのだったら既に言われているか、泳がされているかのどちらかなので、泳がせてくれているのならば、もう少し私に出来ることが増えそうだ。


 ならば、先に探りを入れた方がいい。


「セリーヌはミーヌの仕事を手伝ってくれ」

「かしこまりました」


 とりあえず、ミーヌの通常業務はセリーヌに任せて、ミーヌにも動いてもらおう。


 ミーヌもその辺りのことは分かっているのか、一つ頷くとセリーヌにあれこれと指示をし始めた。


 従姉妹殿に会う前に、陛下と一応従兄弟殿にも会うべきだろうか?


 あの方たちに会うのは疲れるのだが、従姉妹殿だけに会おうとするのは変に思われかねない。それならば、彼らにも会った方が無難だろう。


「それが、最近バタバタしているみたいで近寄れないのです」

「近寄れない?」


 そう考えたのに、セリーヌの返事にどういうことだと視線を向ければ、セリーヌの顔色は曇っていた。


 詳しく話を聞いてみれば、いつもは従姉妹殿の部屋のある辺りは閉ざされているとまでは言わないが、他のところよりも厳重な警備になっている。


 従姉妹殿の祝福を考えたら彼女の警備が厳重なのは理解出来るので、今まで深く考えたことはなかったが、もしかしたら、従姉妹殿が逃げ出さないようにしているのでは? とふいに思い至った。


 だが、従姉妹殿がこの国の事情を知らないはずはないのだから、逃げ出そうとするのだろうか? という疑問は残る。


 それに、従姉妹殿は前から人前に出るのを嫌がっていたのだし、もしかしたら何かがあって癇癪を起こしているだけの可能性もある。


 今は下手に触れない方がいいのかもしれない。


 セリーヌの話では警備が厳しいというだけで、申請すれば普通に通れるのだが、今はそれも出来ないらしく地味に不便なことも増えているのだとか。


「理由は分からないのか?」

「申し訳ありません。探ってみたのですが、全く……」

「そうか、ならば別の方法を探そう。陛下と従兄弟殿の方は出来るんだな」

「え、ええ……そちらは普段通りですが、殿下の方は時々出かけてらっしゃっているので、殿下の方はいつになるかは分かりません」

「それは……そうか」

「お二人にもお会いしますか?

「一応そうしようかな」


 多分、従兄弟殿はユリアを探しているのだろう。


 彼女の持っている情報で、彼の地位は揺るがされるかもしれないと考えているのだろう。その考えは合っているが、もう手遅れだろうな。


 そろそろ私も本格的に動かなければ。

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