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「おい、これ本当にラフォン様に報告するのか?」

「するしかないでしょう。ごちゃごちゃ言ってないで行きますよ」


 部屋の外から声がする。数日離れていただけだが、異国の地では安心出来なくはないが、どうしてあいつらはここで揉めているのか気になる。


 やはり結果は芳しくないとみていいのか。


 とりあえず、報告を早く聞きたいので二人を部屋に招き入れ、報告を聞くが、二人の報告はグレースの人々の言っていることよりもさらに酷い物だった。


 彼らは私を思ってオブラートに包んでいてくれたらしいことを悟って頭が痛くなる。


 誘拐に隠蔽。それだけでも許せないのに、さらに被害者を増やそうと画策しているのか、最近では国境付近での強盗まがいのことまでしているんだとか、これはゼラン自身も見ているので間違いがないとか。


 今までこんなことになっていただなんて思ってもみてなかった。


 これを放置する訳にはいかないだろう。


「……まだ調べ出してから数日しか経っていません。これが嘘の可能性もあります。もう少し時間をくたされば」

「いや、これ以上調べたところで結果は変わらないだろう。ありがとう」

「これからどうするんですか?」

「国に戻ったところであの陛下がまともに取り合ってくれる訳がありません」

「最悪こんなことを知った我々の命が狙われてしまいますよ」

「分かっている」


 興奮してるのか、声が段々と大きくなっていく二人を宥めつつ返事をする。


 二人がまとめた書類を見ても報告とそう変わりがない。


 ちょっとした休暇のつもりだったのに、とんだ誤算だ。


 対策を取ろうにも国が行って来たことがあまりにも酷すぎて、他国との関係悪化も仕方がないのだろう。


 むしろ、国内でこの話が知られてないことの方が不思議で仕方がない。


 どうやって統制しているのか。従姉妹殿の祝福は会話までは分からないはずなんだが、他に有能な祝福持ちが数人いる可能性もある。それは帰ってから調べた方がいいだろう。


 ため息しか出て来ない。


 この話をしたとして一体どれだけの人間が信じてくれるのかも未知数。これを足掛かりに王位を手に入れることが出来るか、出来たとしても地に落ちた評判を取り戻すためにどれぐらいの時間が掛かるのか。


 いっそのこと他国に国の情報を売って自分の命乞いをした方が得策なんではないかとすら思えて来る。

  

 だが、私にも王族としてのプライドがある。


 他国の者たちに渡してしまうのなら、自分の手で幕を降ろす方がよっぽどましだろう。


「グレースの王へ謁見を申し込んで来てくれ」

「よろしいので?」

「ああ、構わない」


 しばらくはここの者たちの道化にでもなってやるさ。


 ミーヌが出て行った後ゼランが何か言いたげにこちらを見てくる。


「すまないな。お前はラナに会いに来たようなものなのに」

「ラフォン様の護衛としているんです。ラナと会えるかも分からなかったですし、こうなってしまった以上、会えなかった方がよかったのかもしれません。ラフォン様が気にする必要はありません」

「そうか」


 私はお前たちがいなかった間、何度かラナに会いに行こうかと考えていたがな。


 ミーヌが戻って来るまでゼランに休んでいるように伝えていると離宮に客がやって来た。


 ここに来る者なんてグロリアぐらいだろ。ここ数日は来なかったのにタイミングが悪いな。


 しかし、ここを去るのなら彼女にも挨拶ぐらいはしておいた方がいいだろう。


 グロリアがいなければ、ラナが今どんな風に暮らしているかなんて分からなかったのだから。


 離宮の使用人に案内するように頼むとすぐに予想通りグロリアがやってきた。


「お元気そうだね……そっちの顔は久々に見るね」

「どうも」


 グロリアに座るように促せば、使用人がすぐにお茶を淹れて退室した。


 どうやら彼は私たちの話を聞くつもりはないようだ。それならそれで別にいいが、彼らは私にというか、私たちによい感情を持ってる。


 下手したらどこかの貴族に我々の話を盗み聞きぐらいしてくるように言われていたっておかしくはないのに、そんな素振りすら見せないのは、我々の情報はいらないということなのか、それとも、この国の人間の方が真面目なのか、優しいのか。


「我々はそろそろ国に戻ろうかと思う」

「それなら、なおさらラナに会った方がいいのでは? 行きましょう」


 そんなことを考えながらグロリアに戻ることを告げれば、そのまま連れて行かれそうなグロリアに困惑する。


「いや、しかし、君たちは我々の国をその……」

「それはある。けれど、彼の国の全ての人が悪い訳ではない。ラナみたいな子もいるし、それにあなただって喋ってみたらあの国の人にしてはかなりまともに見える」

「まとも……」

「褒めてるんだから喜んでください。ラナはあなたたちに迷惑を掛けてなかったかと心配してました。それに、急にいなくなったから驚かせたとも」

「そんなことはありません」


 むしろラナが捕まらなければいいとあれこれ手を尽くして来た。彼女が我々に迷惑を掛けただなんて思ったことはない。


 ただ、彼女が無事であればいいと願っていた。


「だったら安心させてあげればいいんじゃないんですかね」


 その後もごねてみたが、グロリアは譲らずにラナがいる屋敷へと連れて行かれることになってしまった。


 最後の抵抗としてミーヌが戻って来たらと条件を付けたので今日のところはグロリアは引き下がってくれたが、後日ラナのところに会いに行くのは決定してしまった。


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