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この章はラフォン視点で進行します。


「……誰が来たと?」

「グレースの使節団の方ですが、追い返しますか?」

「いや、会おう」


 ここ何年かはグレースもだが、周辺の国との関係も段々と悪くなって来ている。


 始まりはなんだったのかは、知らない。


 その頃は私が小さかった頃だったからか、大人たちは私の耳に入らないようにしていたようにも思う。


 大人になってからも周辺の国の情報を手に入れようとしても、陛下が中々許可を出してくれなかったため、私が持っている情報なんてタカが知れている。


 理由もおっしゃらないため、子どもの頃の私は自分で他の国を旅してみたいと強く憧れを持つようになったが、それはあっさりと却下されてしまった。


 あの頃は何も知らない子どもで、阻止されてしまったことにかなり憤りを感じていた。


 今回のグレースからの使節団に関することも私は関わってないのだから、向こうから来る理由が分からない。


 向こうが何を目的としているのか知らないが、グレースの事情を知るいい機会になるかもしれないな。


 ミーヌに連れて来るように伝えて、応接室へと移る。


 別に執務室でも構わないと言いたいところだが、今は人形が何体かある。 


 それを見られるのは少々どころか、見る人が見れば私が何をしているのかが、分かってしまうかもしれない。


 そうではなかったら少女趣味の変態だと思われてしまうのか……それは避けたいな。この年にもなって変態だと言われるのはかなり傷付く。


「待たせてしまいましたか?」

「いいえ」


 応接室へ行けば既に使節団の人間がいた。


 返事をするのは、グロリアと名乗る年若い女性。ドレスではなく、男性のような格好をしていることから、気の強そうな女性の印象を受ける。


 同年代ぐらいなので二十代前半くらいだろうか? 室内には彼女の護衛と思わしき男性が後ろで控えているが、他に人は連れて来ていないらしい。グレースの者はいつもこうなのだろうか?


 それは分からないが、彼女は既にお茶は出ていたので、それを飲んでいたらしい。


 ミーヌに私の分も淹れてもらい、グロリアと雑談をいくつか交わしていたが、この女の腹の内が分からない。


 どうして私のところに来たのかも不明だし、何を言いたいのかも分からない。


 どうにも私はこういう女性は苦手だ。ラナぐらい分かりやすければ、もう少し対策が取れるというのに。


「──先ほどからこちらの様子が気になっている様ですが、あたしの顔に何か?」

「いえ、そういう訳では……」

「そうですか」


 私の返事を聞いたグロリアは興味なさそうにまたお茶を飲み始めた。


「私はこういうのは苦手なので、そろそろ私のところに来た理由を教えていただけませんか?」

「知り合いが面白い物を拾ったらしくてね。その子たちに会ったんだけど、確かに面白そうだったよ」

「そうなんですか」


 本題ではなく、ペットの話をされて一瞬面食らったが、話を反らされたことをどうするべきか。従兄弟殿であれば、無礼だと怒り、外交問題に発展していてもおかしくはない。


 だが、私は従兄弟殿程愚かではない。だから、従兄弟殿みたいに喚き散らす程愚かにはなれないので、彼女の話を大人しく聞いている。


「その子たちの内の一人にはあたしは興味はなかったんだけど、もう一人にはあんたも興味あるかと思ってね」

「それはどういう?」


 犬猫ではないと? 彼女が何を言いたいのか理解出来なくてミーヌと視線を交わすが、ミーヌにも分からないみたいで、そっと目を反らされてしまった。


「ああ、その子がラフォン様ラフォン様とあまりにもうるさいからどういう人物か気になって見に来た」

「それは……」


 もしかしなくとも……ミーヌを見れば、同じことを考えていたらしく、目を見開いていた。ここにゼランもいればかなり喜んだかもしれない。


 あいつはラナのことを最初は怪しいと騒いでいたが、いつの間にか絆されていたのか、ラナがいなくなった後はあいつが一番落ち込んでいた。


「その子は今どうして」

「気になるんでしたら我が国に来てください。あなたでしたら多分陛下も歓迎なさいますよ」

「グレースに……」


 他国との関係の悪化の件を調べるには丁度いい機会かもしれないが、陛下が何て言うか。多分お許しにはならないだろう。


 だが、これを逃せば一生他国との件を知らされないまま過ごすことになりそうだ。


 何とか陛下にバレないように行ける方法があればいいのだが── 


「お返事は我々が帰るまでに。では」

「え、ああ、ミーヌお見送りしろ」

「必要ありません。ゆっくりと考えていらしてください」


 グロリアはそう言うと去ってしまった。残った我々はゼランを呼びこのことを伝えた。


「行きましょう!」

「お前ならそういうと思っていた。が、どうするか」

「普通に頼みに行かれては?」


 行ったとしても、他国のことを調べるのすらまともに許してくれなかったのに、直接出向くのも許してくれるはずがない。


 どうにかして行けるようにしなくては。


 それから彼女たちが去る日までに私がいなくともバレないようにあれこれと画策をし、彼女たちと一緒に国境に向かった。


 私たちの常識が全て崩れるとは思わずに。

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