表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/122

82追跡者5

「まだ見つからないのか!」


 ドンっと机を叩く音がうるさい。


 返事をしながらため息を吐きそうになるのを我慢するが、こんなのに仕えなきゃならねえとか、あの時判断を誤ったか?


 ランプル芸団を追い出された後、この国をさ迷っていた時に、あいつの顔を見かけたと思えば、指名手配されているという人相描きだった。


 本人に似てなくもないが、隣に置いてみても似てるか? と微妙に首を傾げたくなるもので、これを描いた奴は絵が下手くそなんだろう。


 だけど、あいつを蹴落とすことが出来る情報を手に入れることが出来たのはよかった。


 あいつが何をして指名手配されたのかは分からないが、あいつが犯罪者だと分かれば、みんな考えを改めてくれるはずだと、指名手配の紙を引きちぎって、みんながいた場所に戻った時には既にみんなの姿はなくもぬけの殻だった。


 何でいないんだ? 移動するまでにはまだ日があったはずだが、みんなに何かあったのか? もしかして、あの女がみんなをそそのかしてみんなに何か吹き込んでどこかに行っちまったのか?


 俺は完全にみんなに捨てられたのか?


 みんながいなければ、あいつが悪い奴だって教えてやることもできないし、あの女から助け出してやることも出来ない。


 あいつは俺が思っていた以上に悪い奴だった。仲間が危ないのに、それを教えてやることも出来ないだなんてどうしたらいいんだ?


 いや、出来るか?


 とりあえず、この国の騎士だかに接触して俺が知っていることを話してあいつを捕まえてもらえばいい。


 上手くいけばあいつに賭けられた懸賞金を手に入れて、その金を持って行けば、またランプル芸団に戻れるかもしれねえと思って騎士のところに行ったらこいつがいた。


 こいつは、この国の王族らしい。


 黒髪に紫色の瞳。すらりと高い身長に、涼しげな目元。すっと通った鼻筋は女たちが喜びそうな顔だなと思う。この国の王族の特徴なんて知らないが、特有の傲慢さがにじみ出るどころかが、もうお貴族様っぽくて嫌だ。


 ちょっとぐらいしまっておけと言いたくなるぐらい酷い性格をしているんだけど、誰かどうにかしてくんないか? どうせこういう奴はワガママ放題に育ったに決まってる。


 目的があいつを捕まえることじゃなければ、こいつに仕えるとか絶対にしなかった。


 こんな奴が次の国王とかこの国終わってんな。俺ならとっとと別の国に逃げてるところだぜ。誰が泥船なんかに乗るかって言うんだよ。


 目の前でぎゃーきゃー騒ぐ様子は見た目はよくてもかなり醜く見える。せっかくいい顔持ってんのに、中身がこんなのとか宝の持ち腐れだろ。俺に寄越せ。無理ならどっか埋めてこい。


 見ているだけでムカついてきやがる。


 俺はこいつにラナを見つけたことと、しばらく俺がいたランプル芸団のことを話せば、こいつはすぐに国境を閉鎖し、国内に散らばっている旅芸人の劇団を一つずつ尋問していった。


 性格は終わってるが、金払はいいし、手腕はそれなりにあるらしくて、それなら使える内は使ってやる。


 あいつに復讐するまではこいつのことを利用してやればいいが、この性格に。


 用が済めばこの国なんかさっさとおさらばしてやるのに、あのクソ女のせいでこうしてこんな性格破綻者に使われてなきゃならねえとかクソ過ぎる。


 そもそもあいつの存在は最初から気に食わなかった。


 妹が怪我したから助けてくれと現れただけでも気に食わねえと言うのに、そのままうちに居座り続け、団長やらリズをあっという間に取り込むし、忠告してもなかったことにして俺のことを追い出すように仕向けた。


 どうせ怪我なんか嘘に決まってるのに、みんな何であんな奴にコロッと騙されやがって。


 絶対にあいつは許さねえ。


「おい、聞いているのか!」

「聞いています。ランプル芸団にあいつは潜伏していました」

「それは聞いた。お前が言っていた芸団はとっくにこの国を出ているし、国境付近ではそこの芸団にそれらし少女はいなかったと言うではないか!」

「……どこかで出て行った?」


 俺を追い出したのに、自分はあっさりと去っただと?


 去るんだったら俺が手を下す前にさっさと出て行ってれば、俺はあそこを追い出されずに済んだのに!


 俺は追い出されず、こんな奴の下で罵声を浴びせられることなんてなかったのに……。


 自分はあそこで好き勝手して俺を追い出すだけ追い出して自分は知らん顔で俺が大事に守りつづけた場所に居座るでもなく出て行っただと?


 そんなの許せる訳がねえ。


 あいつを殺すだけじゃすまねえ。あいつの妹もあいつが大事にしている奴がいるんだったらそいつらも見つけて不幸のドン底に突き落としてやんなきゃ気が済まねえ。


 そして、それをあいつに見せて絶望の底に落としてやる。


「まあ、いい。国境を出ていないのだったらまだ国内にいるはずだ。お前は国内を探しに行け」

「……かしこまりました」

 

 それまではこんな奴でも従ってやるよ。せいぜい首を洗って待ってやがれ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ