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「……ここはこの国の施設の一つっぽいな」

「あたしたちに役立つ情報はある?」

「というか、何の施設だったんだ?」

「今探してるよ。お前ら口を動かしてないで体を動かせ」

「へーい」

「探してるじゃない」


 あっという間に五人で森の中にあった怪しい建物を制圧してしまった。


 あたしは五人が倒して気を失った人たちを縛っていってる。正直、あたしの存在って必要あったのか疑問に思えてくる。


 捕まえた人はかなりいて、この建物の中に何人いたのか、縄が足りるか大丈夫か心配しそうになる。


 同じようなことを繰り返してると思考が何か変なところに行くのは何でなんだろ。誰か分かる人がいるかな?


 四人と再び合流したあと森の中の建物に近付いた時に、あたしがうっかり転んじゃって見つかってしまった。


 失敗した。怒られると思ったのに、メーシャさんと四人は怒ることもなく、警備の人たちが剣を抜いて走って来るのを迎えうち、次々に気絶させていった。


 あたしが五人の強さにあっけに取られていたら、ミスカに気絶させた奴らを縛っておくようにと言われて縄を渡されたので、慌てて縛っていたけど、ずっと同じことをしているからか頭だけ暇になって来た


 あんなに沢山の警備の人間をあっという間に制圧して、建物の中を物色までする余裕すらある。 


 あたし、剣術を習ったから強くなったと思ってたけど、五人と比べたら全然強くないどころか、めちゃくちゃ弱いんじゃないかって気がしてきた。


 というか、あたしの腕なんて役に立つのかな? それとも、この五人が特別強いとか?


 それだったらあたし必要なくない? あたしをスパイとして送り出したのって人数合わせだったんじゃないの?


 さっきだって転んで見つかっちゃったし……いない方がよかったんじゃないかとすら思えてくる。


 でも、ここ見つけたのあたしだし、多分役には立っているはずだよね?


「何やってんの! そんなにユルユルに縛ってたら逃げられちまうよ! こうやってやるの……やってみな」

「あ、はい! すみません」


 落ち込んでいたらリュージュさんに背中をバシンと叩かれて、ちょっとびっくりしていたら、縛り直しをされてしまった。


 そうだ。今は余計なことを考えている場合じゃなかった。


 捕まえた人たちを縛って行かないと行けないんだった。ちゃんとやらないとまた怒られちゃう。怒られたくはないので、しっかりとしなくちゃ。


 リュージュさんにはその後も途中で何度かちゃんと見ているかと睨まれるしで、怖かった。リュージュさんは馬車の中では眠っていることが多かったし、ここに来てからも無駄口はたたかない人だと思っていたけど、怒らせると怖いかも。


 しっかり見て覚えなきゃ。


 リュージュさんに教えてもらって縛り直せば、リュージュさんは満足したかのようにあたしの頭を撫でて行った。


 どうしてみんなあたしの頭を撫でたがるのか。


 気にはなるものの、気絶させた人たちはまだたくさんいる。


 その人たちも縛り上げなければ、怒られちゃうかも。それは嫌なので、ちゃっちゃとやっていこう。


 あたしが縛ってる間に五人は建物の中を物色しているのか、姿が見えたり、見えなかったりで、慌ただしそうにやり取りをしている。


 ところどころしか話が聞こえて来ないから、全部は分からないけれど、ここはこの国の何か研究施設のための建物らしい。


 何の研究施設かは分からないけれど、こんな場所に隠れるようにあるんだから、ロクな研究ではなさそう。


 あっちこっちに動き回る五人を横目に縛っていると、思った以上に体力を使うからか汗だくになってきて手が滑りそうになる。またリュージュさんに怒られたくないので、服で手汗を脱ぐって作業に戻る。


 途中、目を覚ましそうになる人がいてどうしようか焦っていたらコルベルがどこからかやって来て、あっという間に再び気絶させていた。その素早い動きにびっくりしてしまった。


 あたしもあれやってみたい。教えて欲しいとお願いしたら教えてくれるかな?


「どうする?」

「手がかりっちゃ手がかりだけど、俺らが必要な情報は書いてねえな」

「無駄足だったの?」

「そういう訳じゃねえよ。とりあえず、一旦国に情報を持ち帰るとして、こいつらどうする?」

「このまま放っといたらこの国のお偉いさんにチクっちまうかもしんねえからな。後で処理するか?」

「先に何人か起こして知っている情報全部吐かせようぜ」

「そうだな。ラナ」

「あ、はい!」


 真剣な話し合いをしていたから黙って聞いていれば、急に名前を呼ばれてびっくりした。


「……とりあえず、今日見つけた情報を国に持って帰る。これが祝福持ちたちを救うためになるかは分からないが、お前のお陰だ」

「そうよ、喜びなさいよ」

「は、はい」


 自分でも役に立てたとは思っていたけど、五人の目覚ましい活躍の前では、全く役に立ってないんじゃないかって落ち込みそうになっていたから、そう言ってもらってちょっとじゃないぐらい嬉しかった。


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