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急いで町に戻って森で見たことをメーシャさんに報告した。
「確かに怪しいね。調べたいけど、もうすぐ祭りがあるし……ちょっと待ってて」
「何するんですか?」
話を聞いたメーシャさんはちょっと考えた後、荷物をごそごそと漁り出した。
何してるんだろ? 気になって問いかける。
「あいつらに連絡するんだよ。もうちょっと待って」
「……連絡取れるんですか?」
あたしがいるからメーシャさんは、てっきり国に戻ってからじゃないと連絡取れないんだと思ってたけど、違うらしい。
そのことに驚きつつも、メーシャさんの行動を見守っていたら目的の物を見つけたらしく、何かを取り出していた。何だろう。あたしの位置からじゃ見えない。
見たいけど、メーシャさんはすぐにでも部屋を出て行きそうな勢いだ。
「そりゃ、取れるさ。じゃなきゃあたしらだけ何も知らないことになるからね。あたしらが王都に行けないのは、あんた捕まりたくないんだろ?」
「え?」
「王都はさすがに警備が厳しいからね。あたし一人じゃあんたのこと守ってあげられないから」
「そうだったんですか」
てっきりあたしが足手まといだし、指名手配されているあたしが邪魔なんだと思ってたんだけど、違ったんだ。
あたしのこと気に掛けてくれたらしいと知って胸があったかくなった。
「とりあえず、見つけた建物の場所わあたしも見に行ってくるから宿にいな」
「あたし着いてかなくて平気ですか?」
「んー。じゃあ、案内してくれるなら頼むよ。とりあえず山菜採りに行って迷ったって体にして剣は置いて行きな。それは目立つ」
「分かりました」
すぐにでも部屋を出て行きそうな勢いのメーシャさんを止めてあたしも行きたいとお願いする。
往復で疲れているけど、あの子がどこに消えてしまったのかも気になる。
メーシャさんもそれを気にしてくれてるみたいだけど、自分で言い出したことだもん大丈夫だと答えたが、剣は置いてくのか。
この国に入ってからも素振りぐらいは続けていたのに、どれぐらい出来るようになったか、試すのはまた今度かぁ。
山菜採りの設定だもんね。だから、剣なんていう物騒な物持っていたら変に見えるから仕方ないと言われて諦めた。
でも、変わりにメーシャさんに短剣を渡されて何かあったらこっちを使うようにと言われて、びっくりした。
「女二人だから油断はするだろうからね。何かあったら自分で自分を守れるようにしておくのは当然よ。これはあげるから大事にしなさいよ」
メーシャさんに町娘らしい格好にさせられ、髪は後ろで一本の三つ編みにされ、服の中に短剣を突っ込まれた。
落ちないように服をちょこちょこ直していたらメーシャさんは満足したように頷いた。これで、ようやく出かけられる。
「これでちょっとは姉妹っぽく見えるわね」
「え?」
「えじゃないよ。あたしたち姉妹って設定だったでしょう」
そういえば、そうだったような?
うっかり忘れてしまっていたので、メーシャさんの目を見ることが出来ない。
「……まあ、いいわ。これからは気をつけておいてくれれば」
「……気をつけます」
しょんぼりしていたらメーシャさんにカゴを渡される。
これに山菜を入れるみたい。フリだけなら別に山菜はいらないんじゃと思ったけど、なかった場合見つかったら怪しまれるかな。
森に入ってから適当に草をちぎってカゴに入れながら歩いてる。けど、まだあの建物は全然見えてこない。
「結構歩くわね」
「そうですね」
あたしもそう思う。
先に一人でこの森に入った時は、あたしやユリアに似た女の子を追いかけていたし、荷物もそれなりに持っていたから体感的にはもうちょっと時間が掛かっていたような気がしなくもない。
でも、森の中の景色的にはまだ全然歩いてない。
あたしは前に散々山歩きをしたから慣れているけど、多分メーシャさんが疲れているのは慣れない場所だし、枯れ枝とか石とか落ちているし、変なところでちょっと窪みになっているところとかあったりで、歩きにくくなってるからかも。
でも、まだ森の中の建物はまだまだ遠い。
休憩を何度か挟んでその建物の近くまでたどり着いた時には、メーシャさんが疲れ果ててしまっていた。
あたしも疲れているっちゃ疲れているけど、まだ何とかなりそう。でも、これ移動が馬とかだったらもっと早く移動出来ていたかもしれない。
まあ、今回は山菜採りを装っていたから馬は使えないんだけど、でも、ここが本当に怪しい施設だった場合は馬で駆けつけてもいいんじゃないかな?
「ご、ごめん。ちょっと休憩。もう少ししたら動けるようになると思うから先に建物周辺の見張りの数だけでも調べておいてくれない?」
「分かりました」
そんなことを考えていたらメーシャさんが提案してきたので、あたしは頷いた。メーシャさんも回復したらすぐに動くそうだ。
警備の人数を把握したらここに戻って来るだけでいいって。あたし強くなったと思うけど、それは、他の人たちが来た時にするから大丈夫って言われてしまった。
ちょっとだけ、どれぐらい強くなったか知りたかったんだけどなぁ。残念。