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「確かこっちだったような……」


 宿からどんどんと離れて行くから最初はちょっと焦ったけど、それでもあたしの足でも何とか追いかけられる足の速さで助かった。


 ユリアに似た誰かは足早に町を通り過ぎ、森の方に入って行く。


 あの子は何でこんなところに入ってくの? 森の中に家でもあるの? あんまり遠くまで行くと帰るのが遅くなっちゃうんだけど、どこまで行くんだろう。


 もしかして、あたしが追いかけていることに気付いているとか?


 どうやって? 足音が聞こえるとか? 


 葉っぱがそこかしこに落ちているからするだろうけど、自分の足音の方がうるさいから遠くの人のなんて気にするかな? 


 後ろを振り返る様子もなかったから、もしかしたら、あの子も何かしらの祝福を持っていると考えていいかも。でも、この辺りの祝福持ちはナディアさんぐらい。


 最近引っ越してきた? もしくは、隠れているとか? 何のために? よく分からない。


 国外の人は連れ去られてしまうけど、国内の人ならば、祝福持ちはさらわれないだろう。だから、隠れて住む必要がないはずだ。


 なら、あの子は囮であたしは誘い出された? もしかしたら、あたしには見えない位置に仲間がいて誘い込まれるのをてぐすね引いて待っている可能性もある。


 考え過ぎかな? でも、気をつけるのはいいことだよね?


 メーシャさんたちから色々と話を聞いていたからか、過敏になってしまっているのかも。考え過ぎるのもよくないと、一回この思考を頭から追い出す。


 あんまり遠くまで行くのなら、途中で引き返そう。迷子になって帰れなくなったら困るもん。


 あたしがするべきことは別にある。ここまでつけて来ただけでも余計なことだったかもしれないのに、まだ行く必要があるのかな?


 もうちょっとだけ後をつけて、何もなかったら帰ろう。一応あの子のことはメーシャさんに報告しておいた方がいいかな?


 そんなことを何度も考えながら、歩いていた。


 もういっそのこと話し掛けた方がいいんじゃない? とか、引き返すなら早い内がいいとか思うんだけど、何となく引き返す気がしなくて、ずるずると歩き続けている。


 だいぶ歩いたから足が痛くなってきたけど、目の前の少女の足が止まる様子がない。


 あの子は普段からこんな距離を歩いてるの?


 あたしだって山歩きとか、剣術の稽古とかでかなり体力がついたと思うのに、目の前の女の子と比べると全然体力がついてないような気がしてきた。まだまだ体力が足りないような。


 これ以上体力を付けるためには何をするべきか。最近素振りだけしかしてないから、体力が落ちているのかもしれないなぁ。


 帰ったらまた訓練する時間を増やそうかな。


「あれ?」


 見失った?


 さっきまであたしの前を歩いていたと思っていたのに。どこに消えた?


 考え事していたから見失ってしまった? うっかりしすぎじゃない。もし、あの子が本当に怪しい人だったら失態じゃん。まだ遠くに行ってないはずだと、さっき見た位置まで走る。


 どこに消えたんだ? と辺りを見回していると人形が近くに落ちていた。


「人形?」


 それは水色の髪色をした可愛い人形だった。


 でも、あたしが探しているのはこれではない。さっきまであたしの前を歩いていた女の子だ。


「どこに行っちゃったんだろ……」


 辺りを見回してみたが、全く見当たらない。


 やっぱりあたしの正体がバレてこんな場所まで誘き出されてしまったと考えるべきなんだろうか?


 襲われる前に逃げた方がいい。


「あれ?」


 回れ右して駆け出そうとした時、何か視界に入ったような気がしなくもなくて、声を上げてしまった。


 慌てて口を押さえたが、誰かがこちらにやって来る様子もなくホッとする。


 あの子を見失ったのはちょっと失敗したかもしれないが、誰もいないのならば気にする必要はないよね?


 それよりも、さっき視界に入ったのは何だったんだろ?


 危険がないのならば、探してみようかな?


 しばらく様子を窺っていたが、誰も現れる様子はないので大丈夫そう。大丈夫よね? 油断してから現れてぐさりとやられたりしないよね?


 気になったので、もう少し動くのをあたしは気になった方へと向かった。


 あたしの視界に入ったの無機質な建物だった。


 森の中にひっそりと建つようなそれは人目を避けるようにあるので、怪しく見える。


 怪しいか怪しくないかは一旦置いておいて中を見れないか。


 入り口は鍵が掛かっていて開けられなかった。


 窓には蔓草が張っていて長く使われてないようにも見えるけど、何となく気になるので、どこか破れた場所がないかとうろうろとしていると人の話し声が聞こえて来てびっくりして慌てて木の陰に隠れて、声のしてきた方をこっそり覗き込む。


 話の内容までは分からないけど、二人男の人がいる。


 年の頃は中年ぐらい?


 二人共帯剣してる。


 建物自体は古そうだけど、わざわざこんなところに住んでる?


 でも、建物自体は古びたお屋敷というよりは、役場とか無機質な建物っぽい。


 気にはなるけど、あんまり深入りし過ぎて見つかるかも。


 メーシャさんに話して調べた方がいいかも。

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