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 王様に二つ目の課題を教えてもらってからあたしは毎日マナーの特訓を朝から晩までやらされている。 


 しかも、前にジゼルから手配してもらった先生じゃなくて、王様直々に手配してくれた先生が数人。


 厳しい先生なのかなと思っていたが、先生たちはわりかし優しい人たちでよかったけど、授業はしっかりとしたものでへとへとになってしまった。


 へとへとになりながらもマナーを勉強していると息抜きにとダンスの練習までさせられたんだけど、これって必要なの?


 ダンスはあたしが音楽を聴きながら動くっていうのが壊滅的に駄目だったので、半分諦めてる。


 音楽がなければある程度は動けるんだけど、先生たちが音楽をしっかりと聴きながらと言うので、練習相手のユーリスの足を踏みまくって逃げられてしまった。


 さすがにこれはあたしが悪いので謝りに行ったけど、あたしの練習相手に戻ってくれることはなかったので、変わりにジゼルが相手になってくれたが、ジゼルの足も踏みまくったせいか、歩き方がちょっと変になってしまった。ごめんね。


 マナーはなんとかなるかもしれないが、問題はダンス。上手く踊れなくて嫌になっちゃう。


 あたしにはダンスは向いてなさすぎる。


 貴族の人たちはどうしてこんなことするんだろ。こんな面倒臭いことあたしには無理。こんなことできる貴族の人たちってすごいね。


 これを二つ目の課題にする意味が分からないと王様に尋ねてみたが、あたしはあの国に戻る時にこちらの使節団に混じって行くらしいというようなことを長々と説明してもらった。


 使節団に混じれば国境は簡単に通れるし、ロクなチェックも受けずにすんなり城に入れるはずとのこと。


 王様の話が長すぎたため、お城で聞いている時はよく分からないまま聞いていたが、話がくどすぎて半分も耳に入ってこなかった。


 そのため、後でジゼルに聞いたら呆れていたけれど、あたしが理解するまで根気よく何度も噛み砕いて教えてくれた。


 使節団というのはちょっと分からなかったが、ジゼルの口振りだと王様のお使いってことでいいのかな?


 何度も話してもらったのでこれ以上聞くのもどうかと思ったが、ジゼルは教えてくれた。


「ざっくり言えばそうだけど、使節団は国の顔だから高い水準を求められているんだ。ラナにもその基準をクリアしてもらわないといけないんだよ」


 一人だけマナーが悪かったりしたら悪目立ちするもんね。それは仕方ないけど、ダンスはタイミング悪く怪我をしたとかで避けられないかな。無理だよね。


「じゃあ、あたしはまだあの国に行けないの?」

「そのためのマナーだから頑張るしかないね」

「うへぇ……」


 しかも、あの剣を扱えるようにしておくようにと王様に言われている。


 それについてはジゼルが女の子に剣を持たせるなと怒っていたが、あたしはようやく剣の練習が出来ると喜んだ。


 今から剣を習ったところでタカがしれてるかもしれないけど、復讐するためには剣が扱えた方がいいもん。


 ジゼルが何て言ったってあたしは剣を握りたかったんだから、この機会を逃してたまるかとジゼルを無理やり納得しに掛かった。


 最初は難色を示していたジゼルだったけど、あたしがしつこかったからか


 あの剣は別の人が使うのかなと思っていたが、あたしが取って来たからあたしが使うべきだとのこと。


 持って行っていいのかな?


 そりゃ、祝福持ちたちを助けに行くんだから、相手も祝福持ちの見張りなりなんなりいる可能性もあるから持って行った方がいいのは分かるけど、使節団なのに武器はいいんだろうか?


 その辺の感覚が分からなくてモヤモヤする。


 誰かに聞けばいいんだろうが、連日のダンスで迷惑を掛けたから聞きにくい。


 しかも、それだけじゃなくてマナーの特訓の合間に剣の稽古までつけてもらっているから、毎日へとへとになってベッドに倒れ込む毎日で話してる余裕すらない。


「お姉ちゃん大丈夫?」

「くたくただよ~」


 そろそろ休みたいけど、マナーも剣も全くついていけてないので、休んでいたらあの国に戻るのが遅くなってしまう。


 休んでる暇なんてないよ。


「でも、そんなにやってたらボロボロになっちゃうよ。ジゼルに頼んでしばらく休めるようにしてもらわない?」

「したいけど、それじゃあいつまで経ってもあの国に行けない……」

「お姉ちゃん……お姉ちゃんねの変わりにあたしが動けたらよかったのにごめんね」

「何言ってんの!」


 ユリアはあいつらに狙われている。


 それなのに、連れて行ったらあいつらの思うつぼじゃん。そんなの駄目過ぎる。


 それだったら、今が辛くてもあたしが頑張っていれば、なんとかなるはずだ。


 痛いことも辛いことも全部あたしが引き受けるからユリアはジゼルのところでゆっくりと過ごして欲しい。


「あたしはまだ大丈夫だから」

「でも……」

「大丈夫!」


 にこりと笑ってみせれば、ユリアは困った顔のままだったけれど、もう一度笑ってみせれば、それ以上言って来なかった。


 あたしはその日からもマナーと剣術をがむしゃらにやり続け、ようやくジゼルからオーケーが出たのが半年以上経ってからだった。

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