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「ドキドキしてきた……」

「王宮には何度も足を運んでいるのに?」

「それとこれとは別なの!」


 だって、ようやく剣を見つけた喜びと、次は何をさせられるんだろうと考えたら誰だって緊張するでしょ!?


 それに、何度も足を運んだと言ったって久しぶりなんだからそんなにおかしいことじゃないじゃん!


 あたしがおかしい訳? 


 そんなことはないよねとお城に足を踏み入れれば、相変わらずの冷たい視線。


 しかし、こちらに話し掛けて来る訳でもないし、近寄ればあたしたちを避けるように動いて行く。


 ジゼルは自分のせいだと言うが、多分それはないと思う。ここの人たちが変だけだ。


 けれど、ここの人たちが話し掛けてくる訳でもないのだからと、あたしもこの視線には慣れた。


 どうせ小さい頃からロクな待遇は受けて来なかったんだ。暴力を振るわれることもなければ、何か言ってくる様子もない。それだったら、放っておいておいていい。


 ジゼルの後に続いて王様のところに行く。今回も案内の人がいたので、ここはそういうところなんだろ。案内の人に続いて歩いてく。


 ユリアも来ればよかったんだけど、邪魔になるからと遠慮されてしまった。


 でも、ユリアの祝福であれが祝福を無効化させる剣だって分かったんだから、ユリアも来ればよかったのに。


 それに、王様に偽物か疑われてもユリアが祝福の力を見せれば、すぐに偽物か本物かは分かるのにと食い下がろうとしたら、ジゼルにユリアの気持ちを優先させてあげようと言われてしまった。


 ユリアのことはあたしが一番知っていると思っていたのに、ちょっとショックだった。


「帰りには何かお菓子でも買って帰ろうな」

「……うん」


 あたしよりユリアのことを知っているジゼルに悔しくなったけど、いつかはあたしもいなくなる。それなら、あたし以外の人がユリアのことを知っていてくれていた方がいいと納得させてあたしはお城で王様に会う。


 例の剣はユーリスが持ってあたしたちの後ろを歩いている。


 剣の柄はジゼルが手配した職人さんのお陰で真新しい物へと変わっていた。


 ピカピカの柄に大きめの宝石がついていてかなり目立っていたけど、いいのかなあれ。


 剣の飾りに疑問を持ちつつも、出来上がったそれをあたしが持つって言ってたんだけど、ジゼルの家に迷惑が掛かるからとよく意味の分からないことを言われて持たせてくれなかった。


 メンツがどうのこうの言われても、持って帰ってくるように言われていたのに、いいのかな?


 それを含めてドキドキする。


 もし、駄目だったら怒られるかもと思ったのに、久しぶりに会った王様は挨拶もそこそこに剣を見るなり「これが……」と呟いたっきり黙ってしまった。


「ユリアに祝福の力を使って確認させて来たので本物ですよ。心配ならばこちらでも確認していただければ」

「うむ……」


 怒られない? 大丈夫な奴? よく分からなくてジゼルの顔とユーリスの顔を見比べていたら、ジゼルに頭を撫でられた。


 これは宥められているってことでいいのよね?


 怒られなかったことはいいことなんだろうけど、何も言われないのもそれはそれで気になる。


「ねえ、ジゼル」

「ん? 休憩するかい?」

「別に疲れてないからいいよ。それより、王様黙っちゃったけどいいの?」

「ああ、あれね。別にいいんじゃない?」

「でも……」


 次は何をするか言われると思っていたのに、これはしばらく話にならなさそうだとジゼルに屋敷に戻ろうかとまで言われてしまった。


「陛下、我々はそろそろお暇させていただきます。それが本物かどうかは次に来るまでにそちらで検証しといてください」

「……すまない。つい、これがあの剣かと思ったら。検証はすぐにさせよう」


 王様の言葉に部屋に控えていた男性が剣を持って行ってしまった。


 どこで検証するんだろう?


 あたしには教えてくれないのかな?


「結果が出てから言うべきなのだろうが、とりあえずお疲れ様と言っておこうか」

「ありがとうございます。それで……」

「こちらの方は話はまとまった」

「じゃあ!」

「うむ、二つ目だが、君はマナーはどこまで?」

「マナー? ええっと、どうだっけな……」


 いきなりマナー?


 意味が分からなくて首を傾げたけど、答えないといけないよね。


「えっと、ラフォン様のところで習ったのと、ここでちょっと習ったぐらいです」

「ここでのマナーなら僕が答えますよ」


 何をしたとか詳しいことは、山に入っている間に結構忘れてしまったから、答えてくれるのはありがたいけど、多分マナーはやり直しさせられる可能性の方が高いんだよなと二人の会話を聞きながら考える。


 マナーはやりたくないけど、ジゼルのところにいるのならいるし、こうやってお城にも来るようになったもん。もっと必要になってくるはず。


 嫌だけど、ここで弱音を吐いている暇はないよね。


「……とりあえず、あの剣の確認についてはもう少し時間が掛かる。ラナには先に二つ目の頼み事をしてもらおうか」


 来た!


「あたしは何をすればいいんですか?」

「マナー」

「え?」

「マナーだ。頑張ってくれ」


 喜び勇んで聞けば、王様はにこやかな笑みを浮かべてマナーだと言われてびっくりして聞き返したけど、同じことを繰り返すだけだった。


 何でマナーなの? 誰か教えて!


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