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 トマスたちの怪我は後数日もあれば、よくなってまた国境付近を捜索出来るようになるらしい。


 グランディーナさんと二人で行くのはさすがに無理なのはあたしも理解しているので、宿や国境の街で過ごしている。


 あたしだけでトマスたちの欲しい物とか包帯とか買いに行く。グランディーナさんは宿にいてもらった方がいい。


 前々から国境辺りで祝福を使ってもらっているためシェスタ・マーベレスト側に顔を知られているから一人で出歩くのも危ないかもしれないからと言って宿に留まってもらっている。


 グランディーナさんは細々した用事なら自分がするって言い張っていたけど、国境付近は危険が多いし、狙われたばかりなんだからグランディーナさんは宿で大人しくしていて欲しいとお願いした。


 だって、グランディーナさんに何かあったら大変なんだもん。


 それに、もう誰も酷い目に遭って欲しくない。


 トマスたちも同じ考えだったのか、グランディーナさんが出掛けるのは反対していたので、グランディーナさんはさすがに分が悪いと思ったのか、それ以上言わなくなった。


 そのことにホッとしたけど、シェスタ・マーベレストのことが解決した訳じゃないのだからまだまぢ気を引き締めていかないと。


 だけど、この問題はいつ終わるんだろ。


 何年後? 下手したら何十年後だってあり得る。こんなに進まないのなら戦争してしまった方がいいんじゃないかって思う時もある。


 だけど、ジゼルたちがそれをまだしたくないと言っているのだから、あたしもそこまで強行するつもりもない。


 今こうして国の中枢にまで入り込んでいるのに、好き勝手行動させてもらっているのはジゼルたちのお陰だもん。


 だからみんながしたがってないことはあたしもしない。


 あたしに出来ることは少ないけど、それでも出来るだけみんなの役に立ちたい。


 そんなことを考えながら街中を歩いていると、あたしの隣を馬車が駆け抜けた。


 いつもなら気にしないのだけれど、何故だか引っかかりを覚えた。


 シンプルな馬車は暗い緑色をしていて、貴族のお忍び用と言われれば、そうなのだろうけど、どことなく違うようにも見える。


 この違和感がどこから来るのか分からなくて、その馬車をじっと見つめてしまう。


 路地を曲がってしまったら馬車がどこに行くか分からなくなる。


 トマスたちに頼まれたお使いの入った紙袋をちらりと見る。


 早く帰った方がみんな喜ぶだろうけど、ごめん。あたしはあの馬車が気になる!


 トマスたちには後で謝っておけばいい。


 違和感をそのままにしておけば、あとで取り返しのつかないことになるかもしれないから気になるのならあの馬車がどこに行くのか、ついでに乗っている人の顔も見れないかと期待する。


 いや、乗っている人見たってどうせあたしの知らない人なんだろうけど、気になるから見たいんだよ。


 どっかから見れないかなと思って走って馬車を追いかける。


 国境の街は前より人が減って、馬車に気付かれるかなと思ったけど、御者も中にいる人もあたしのことには気付いてないのか、馬車が止まる気配はなかった。


 そのことに安堵しつつ、誰が乗っているのかと気にする。


 今は国境が封鎖されているし、わざわざシェスタ・マーベレスト側の国境に来る必要が分からない。


 そう思ったら段々とあの馬車が怪しく見えてきた。


 今は祝福持ちたちを狙うシェスタ・マーベレストの奴らもいて、物騒になっている。


 国境付近の人たちも少しずつだけど、引っ越しをし始めていて前よりは人は減っている。


 だけど、それでもそれなりに残っている人もいる。


 そういった人たちの生活もあるのだから、あの馬車の中の人物が怪しい行動をしないように見張るのもアリだよね。


 後でみんなに帰るのが遅いって言われるかもしれないけど、気になる馬車がいたって伝えれば問題ないでしょ。


 それに、あたしが感じた違和感がただの杞憂だったら、それはそれで笑い話に出来るから別に問題ない。


 そうこうしている内に馬車は国境の街の外れに来てしまった。


 これ以上追いかけるのなら馬がいるけど、それだと目立つし、どうしようかなっと迷っていると外れの宿の前で馬車が止まった。


 弾む息を整えてから、中から人が出て来た時に誰なんだ? と目をこらすものの、相手はローブを纏い、しっかりと顔を隠して見えなかった。


 そりゃお忍びなんだから隠すかもだけど、何で深めに被っているのよ。


 顔はどんな風なんだとついイラついてしまったのは悪くないと思う。


 宿に着いて行けば、顔が分かるかなと思って宿に近付くと強めの風が吹いて、全身ローブに包まれた人物のフードが脱げて顔が見えた。


「っ!」


 あれは、ユリアから聞いていて、ジゼルが肖像画を取り寄せてくれてようやく見たシェスタ・マーベレストの王子の姿に瓜二つだった。


 あたしは叫び声を上げないように口元を押さえつけ、宿に向かっていた足を止めて、慌てて違う路地に入る。


 路地から彼らの様子を窺うと、ローブが脱げたことに気を取られていたらしく、あたしの存在には気付いてなかったみたいで、今頃キョロキョロとして慌てて宿に入って行った。


 あたしはそれを見送って慌ててトマスたちと泊まっている宿に戻った。


 シェスタ・マーベレストの王子がグレース側にいるだなんて聞いてない!


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