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「何!? それは本当なのか?!」
「……ええ」
グランディーナさんはさっきの今で疲れ切った顔をしていたけれど、捕まってからあたしが来るまでに得た情報をあたしたちに教えてくれた。
「あたしも聞き違いかと思ったのですが、何度も同じ話をしていたので、間違いないかと」
グランディーナさんの話では彼らはこのことのために集められた民間人で、彼らはシェスタ・マーベレストのやっていることは殆ど何も知らないけれど、こちらが対策していることは知っているみたいで、それ用の訓練は受けさせられているんだとか。
しかも、祝福持ちを連れて来たら褒賞金が出るとかで、皆やる気に満ちているらしい。
どうりで何度も吐けと言っていたのに、何も言わない訳だ。
知らないものは吐けないよね。でも、本当に何も知らなかったなんてあり得るのかな?
あんなことを続けていたらいつかはどこかで知ることになっていただろうけど、使い捨てならば知らなくてもどうでもいいの?
しかも、あの動きも訓練受けてからこっちに来るんだもん。そりゃ、一般人の動きじゃないなって思ったのは理解出来た。
「あいつらはどうやって出入りしているとか言ってませんでしたか?」
「ええっと、まだ遠いと……それと、日中じゃないとみたいなことを言っていたので、どこかで休憩するつもりだったみたいです」
「休憩?」
日中にしか開かない扉でもあるの?
でも、あたしたちも散々探したのに見つからないのだから、そんなのはないと思うんだけど。グランディーナさんの話によると違うらしい。
どういうことなんだと頭を悩ませるけど、答えが出る訳じゃない。
今日は色々あったし、グランディーナさんは連れ去られそうにまでなったのだから、一旦休もうということになった。
あたしもあんなに戦うとは思ってなかったからクタクタだ。日中寝ておいてよかったかも。
「ごめんなさいね」
「え?」
何でグランディーナさんが謝るんだろ?
グランディーナさんが謝る理由が全く分からなくて何て答えるのが正解なの?
どうするべき?
意味が分からなくてグランディーナさんをじっと見つめていたら、グランディーナさんもあたしが理解していないことを察してくれたらしく、説明してくれた。
「あなたに説教までしてしまったのに、あたしが捕まって面目ないわ」
「そんなこと。それにグランディーナさんのお陰で分かったこともありましたし」
「でも、そんなに役に立ってないでしょう」
「いいえ。今まで全く情報らしい情報も得られなかったんですから、一つだけでも分かっただけでもかなりの進歩ですよ!」
ここ数年あいつらを倒しても倒しても一向に減らない奴らに癇癪を起こすことはあったけど、情報を得たなんてことはなかったから本当に今までで一番の成果だったんじゃないのかって思っている。
だけど、グランディーナさんの立場からしたら、落ち込んでしまうのも分からなくはない。
あれだけあたしに無茶したらよくなるものも悪くなるって言ってたのに、自分は捕まるし、トマスたちも怪我をしてしまったもん。
あたしがグランディーナさんの立場なら皆に会うのが恥ずかしい。だけど、恥ずかしくても何でも復讐するまでは止まらないと決めたんだもん。
あたしはもう何があっても止まるつもりはない。
だから、グランディーナさんのことを察することは出来たけれど、そこでくよくよしてしまうことは納得出来ない。
「グランディーナさん」
「どうしたの?」
「あたしはラフォン様を助けてあいつらに復讐するまで止まるつもりはないんです。だから、この数年全く変わらなかった状況がグランディーナさんのお陰で動いたんです。だから、グランディーナさんは誇った方がいいです!」
「そうなのかしら? あたしでも役に立っているの?」
「もちろんです!」
どこかきょとんとしながら言うグランディーナさんに力強く頷く。
あたしには祝福なんてものはない。だから、あたしだけじゃあいつらは出て来なかった。
今回の情報はグランディーナさんが捕まらなければ得られなかった情報だ。
トマスたちは怪我をおったけど、グランディーナさんは無傷で取り戻すことが出来た。
それだけでも、あたしたちからしたらかなりの成功なんだ。
グランディーナさんはまだ納得はしてなさそうだったけど、あたしは喜んだ方がいいと無理やりグランディーナさんに納得してもらった。
翌日グランディーナさんから得た情報を王都に持ち帰る騎士を見送ってトマスたちの怪我が治るのを待つ。
王都に戻ったのはあたしと一緒に宿で留守番をしていた騎士。あの人なら怪我もしてなかったから多少無理したところで問題はないだろうと本人が言い出したから。
それだったらあたしでもいいんじゃないかって言い出そうとしたんだけど、気付かない内に切り傷がたくさん出来ていたので、断念した。
あたしは行ってもいいんじゃないかって思ったけど、注意されたばっかだし、またあちら側の奴らが動き始めた時に、あたしもその場にいたいから残りたいから。
あたしが残ると言い出したことに反対意見は出なかったので、みんなの怪我が治るのを待ってから再び行動を開始した。