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 あたしの叫びに怯んだ騎士たちを一人、二人と叩きのめしていく。


 戦えなくして、情報を得るためには毒も飲ませてたまるもんですか。


 奴らが毒を飲むのはいつものことだ。その前に気絶させて口の中の毒を飲ませないようにすれば、情報を得られるかもしれないと何度も挑戦しているが、捕まえた後も毒に犯されて死んでしまうので、もしかしたら遅効性の毒を飲まされて行動しているのではないかという話になっている。


 戻って解毒剤を飲むとかね。


 そっちの方があり得そう。


 毒が回り切る前にこいつらから情報を吐かせなくちゃいけないのに、口を開くどころか重い攻撃ばかり繰り出してくる。


 その度に剣を避け、剣を交え、毒に犯されているのなら息が上がって来たりしないのかとか期待するが、今までは捕まえた後でしか何かしらの反応を見せなかったから多分無理かな。


 相手は五人もいるから長期戦はしたくなかっけど、すぐに倒せなかったあたしが悪いと言われたらそうだけど、怪我しているのにこいつら強すぎるのよ。


 今までのシェスタ・マーベレストの奴らが雑魚だとしたら強敵なのよ。


 怪我をしているのに何でこんなに強いの?


 二人はやっつけたのだけれど、グランディーナさんはまだ向こうに倒れている。縛られているみたいで動けないみたいで、さっきから逃げるように促してくるけど、こんなところで逃げられる訳なんかないじゃない。


 ここで諦めたくなんてない。


 情報もまともに手に入れられていないのに、グランディーナさんを置いて逃げたらあたしはそれをずっと後悔し続ける。


 ラフォン様を見つけられなかった時に散々後悔したのに、また同じように後悔したくない。


 だから、あたしは逃げない。


 戦って一つでも情報を手に入れてやるんだから!


「だから、お前たちがこんなことをする理由を吐け!」

「ぐっ……」


 負けるもんか! あたしはこいつらに勝つ!


 勝って情報を手に入れて、あの国に侵入してラフォン様を助ける。そして、あの国に拐われた人たちも助けてあたしは復讐を果たす。


 だからこんなところで負けている暇なんてない。


 しつように目的を吐けと言っているのに、シェスタ・マーベレストの騎士たちは目的を吐こうとしない。


 何か言えない理由でもあるっての?


「どうせあんたたちは任務で失敗すれば死ぬってのに、そんな情報がいつまでも後生大事なのか!?」

「何を言ってるんだ?」

「しるか! それよりも、あの女を連れて行け!」

「あ、ああ……」

「あ、待て!」


 残った三人の内の一人があたしに背を向けてグランディーナさんが転がっている方へと行こうとするので、慌てて腰のポーチからナイフを取り出して投げつける。


「ぎゃ!」


 運よくナイフが背中に刺さったのか、あたしに背を向けた騎士が悲鳴を上げて倒れていく。


 やった! あと二人。


 倒れた騎士は起き上がる気配もないから絶命したと思われる。


「くそっ! お前何なんだよ!」

「グレースの者だ! これ以上祝福持ちたちを連れ拐われる訳にはいかないんだ! グランディーナさんに手を出すな!」


 何だじゃない。というか、あたしたちからしたらあんたらの方が何なんだ。


 こんなことばっかりしてるからシェスタ・マーベレストは他の国からいらないって言われているのも気付いてないとか馬鹿過ぎる。


 元々はそんな国の民だったことが恥ずかしい。


 シェスタ・マーベレストの騎士の剣を弾き、剣を突けば二人残った内の一人の脇腹に剣が突き刺さった。


「ぐっ……」

「くそっ」


 あと一人。


 でも、まだ情報を洩らす気はないようで、隙あらば攻撃してくる。


 早く情報を洩らしてくれればいいのにと思うのに、こいつらがくれるのは鋭い剣先と罵声。


 そんな物なんかいらないからさっさと情報を渡しなさいよ!


 何度も情報を寄越せと言っているのに、どうしてこいつらは喋らないの?


 何も知らないだけ?


 分からない。こいつらがちょっとでも情報を洩らしてくれたら何か分かるのに。


「くっ……」


 あと一人なのに。予想以上の重い剣に歯を食いしばる。


 トマスたちとの戦いでかなり消耗していたはずなのに、どこにこんな力が残っているのよ。


 五対一の戦いは思った以上に体力を消耗して、息が上がってくる。


 でも、それを悟られたくなくて我慢する。


「ぐぁ……!」

「な、何だ? ぎゃー」


 最初に戦えなくした奴らが呻き出し、それに気を取られた最後の騎士の首に剣を叩き込めば、悲鳴を上げ、倒れ込んだ。


 無力化した騎士たちが悲鳴を上げているのは、いつもの毒なんだろう。


 それじゃあ、もう情報を得ることは出来ない。グランディーナさんを助けて戻ろう。


「グランディーナさん立てますか?」

「え、ええ助かったわ」


 グランディーナさんを縛っている縄を外して起こして上げれば、グランディーナさんはちょっと強ばった顔をしていたけど、起き上がれた。


 あたしにべったりついていた返り血がグランディーナさんにもついてしまったけど、帰り道でもついてしまうからグランディーナさんには諦めてもらおう。


「とりあえず戻りましょう。話は後で聞きます」

「……分かったわ」


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