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 グレースの王太子に呼び出された。


 王太子は今まであたしとは全く関わりがなかったのに、一体どういった風のふき回し何だろうか?


 今さらどこかに所属しろとか言われたりするんだろうか?


「急に呼び出してすまないね」

「いえ、あの、今日は」

「その前にお茶にしよう」


 王太子は今年20歳になられるんだとか。金色の髪は太陽の光でキラキラと輝き、同じように輝いている青い瞳は宝石みたいに輝いている。


 人の顔なんて目と鼻と口があることが分かってればいいやといつもなら思っているところだが、この人の美貌は神様が端正込めて作ったと言われても納得しそう。


 涼しげで優しそうな顔には笑みまで浮かんでいる。


 巷でイケメンと噂されているだけあって、目の前にいるとキラキラし過ぎて眩しく感じる。確か名前はフランツ様だったかな?


 あんまり見ていたらこれは目を悪くしてしまいそう。別のところを見ていた方がよさそうだ。


 王太子の私的な部屋という訳でもなく、場所は執務室。


 部屋の中には本が沢山あるし、執務用の机も立派な物。


 この部屋の中身を全部売ったら四人家族の平民が数年? もっと? よく分からないけど、かなり楽出来そう。


 お茶を飲みつつ、目の前の王太子や室内を観察しながら、今日呼ばれた理由はやっぱりあたしの立ち位置をはっきりさせて、どこかに所属させることかな? と考える。


 一応ジゼルかグロリアに任せておけば、何とかしてくれるって言ってたから王太子の命令でもある程度は逃げられるのかな?


 それとも強制なんだろうか?


 別にどこかに所属するのはやぶさかではないけど、それで復讐が出来なくなると言われたらキレる自信はある。


「そう固くならなくても大丈夫ですよ。今日あなたをお呼びしたのは、以前あなたがジャスティンに頼んでいたことです」


 一瞬ジャスティンって誰だっけ? と首を傾げそうになったけど、すぐにそれがジゼルのことだと思い出す。


 普段みんなジゼルって呼んでるんだもん。耳慣れない名前の方だったから記憶の彼方に追いやっていた。


 というか、ジゼルに頼んでいたことって何だっけ? 何か頼んでいたっけ?


「君が例の国の王宮に忍び込みたいと言い出したんじゃないのかい?」

「え? あ! ああ!」


 すっかり忘れていた。


 あれから二年経ってたから無理だったのかと思ってたから。


 でも、どうして王太子がそのことを?


「ジャスティンに前に頼まれていてね。準備が整ったから呼びに来たんだ」

「え。でも、あの国は今入れませんよね?」

「そうだね。でも、あいつらはこちら側に入りたい放題だ。どこかに通路があるはずなんだけど」

「なら、それあたし探します!」


 そこから侵入すれば、王太子の助けを借りてあの国の中枢に潜り込める。


 ここ二年八方塞がりでどうすればいいのか分からなくて、目の前のことをただこなすしか出来なかったけど、これを何とかすれば、ラフォン様にまた一歩近づけるかもしれない。


 だから、この仕事何が何でも失敗する訳にはいかない。


「そういってくれて助かるよ。君がこの任務を成功させるため、こちらからも人を出そう」

「ありがとうございます」


 王太子の後ろに騎士が数人現れた。


 どこに隠れていたんだろ。ミーヌさんみたいな祝福持ちが他にもいたんだろうか?


「とりあえず、今日はこの五人を連れて行って。詳しいことはこのトマスに聞いてくれ」

「よろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げるトマスたち五人と共に王太子の執務室を出る。


 移動した先は先ほどの王太子の執務室から少し離れた部屋。


 ここは彼らの待機場所らしい。


 本当なら王太子の護衛はもう少しいるらしいんだけど、今は休憩中なのかいなかった。


 トマスたちと国境付近の地図を見ながら、奴らがよく出てくる場所を話し合っている。


 ここで規則性とかあれば、あいつらが出てくる場所が分かるかもしれない。


「……あまり規則性はないようですね」

「現れる場所もまちまちですし、このままならしらみ潰しに探して行くしかないですね」

「出来たらそれは避けたいのだが、ラナだったな? そなたは国境に何度も足を運んでいるのだろう? 何か気付いたことはあるか?」

「えっと、そうですね……」


 そう言われても、あいつらはあちこちに出てくるし、騎士服の時もあれば、そうじゃない時もある。


 こっちは祝福持ちを守らないといけないから、今までのあいつらの行動の共通点とかまで気を使ってられない。


 あたしが分かる共通点なんて、負けたらあいつらは毒を飲むか、何されても黙りを決め込んでるかだ。


 あの国にそんなに忠誠を誓う価値なんてあるのか疑問だけど、あたしだってユリアを見つけるまでは、あの国で何も知らないまま暮らしていたのだから、もしかしたら彼らも何も知らないまま祝福持ちたちを狙っている可能性もあるんじゃ?


 もし、何か知っていたとしても、それはあの国のしていることの一部だけとか。


 そのことをトマスたちに聞いてみる。


「その可能性は十分にあるでしょう。しかし、今我々に必要な情報はそれではありません」


 その後もああだこうだと話し合ったけど、結局目星になるような場所はこれといってなく、しらみ潰しに国境付近をうろつくことが決まっただけだった。


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