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 ミーヌさんからラフォン様が祝福持ちだと衝撃的なことを初めて聞かされて衝撃を受けたのはあたしだけじゃなかった。


 ジゼルもそのことを知らなかったみたいで、ミーヌさんにあれこれと質問を始めていた。


「ラフォン様はどのような祝福をお持ちで? それより、このことは陛下に説明をしなくては」


 慌てて人を呼びに行ったりと慌ただしいので、あたしもちょっとだけ混乱が落ち着いて来た。 


 自分より慌ててる人がいると、人間って結構落ち着けるんだって初めて実感した。


「落ち着いてください。グレースの王にはこの間会った時にラフォン様のことも私のことも伝えています」

「ミーヌさんも何か祝福を持っているんですか?」

「ええ、そのお陰でラフォン様のお側に侍らせていただいておりました」

「じゃあ、ゼランは? ゼランも何か祝福があったの?」


 ユリアの質問に頷いたミーヌさんに今度はあたしが尋ねる。


「いいえ。ゼランは剣だけで生きて来た男です。私の考えとグレースで聞いた話を考えると、ゼランには祝福がなかったから殺されてしまったと考えるべきでしょう」

「そんな……」


 祝福があるかないかで殺されてしまうとかあり得ない。


 もうあんな国なくていいんじゃないかって気さえしてくる。


 あたしはあの国の王子だけ殺れればいいと思っていたけど、こうなってくるとあの国自体が諸悪の根源だ。


 あたしもグレースの王に今までみたいな協力の仕方ではなく、もっと役に立てるアピールをしてこの件に関わらせてもらわなくちゃ。


 あたしが今後の計画を立てていると、部屋のドアがノックされた。


 そういえば、さっきジゼルが人を呼びに行ったから来たのだろう。


 だけど、ミーヌさんが事前に話していたのならもう話すことはないんじゃないの?


「どうぞ」


 ジゼルがドアに向かって声を掛ければ、グレースの王が護衛をつけて入って来た。


 あたしたちは立って挨拶をすれば、陛下は一つ頷き座るように促して来たので、座り直す。


「もう体調はいいのかね」

「ええ、先ほども聞かれたのですが、すっかりよくなりました。これも城で休養するようにおっしゃってくださった陛下のお陰でございます」


 ぺこりと頭を下げるミーヌさんに陛下は楽にするようにと伝えて侍従にお茶を淹れるように指示した。


 お城のお菓子はおいしいけど、王様がいる時はもっと美味しくなるから好きだ。


 でも、早々会える人でもないし、あたしもあまり用はないからめったに食べれないんだよね。


 あ、そうだ。この間ジゼルにお願いしていたこと陛下にもお願いしてみようかな。


 でも、ジゼルの前で聞くのもジゼルを信用してないみたいで、それはどうかな。


 ちょっと悩んでから言うのをやめた。


 その間に、ミーヌさんとラフォン様の祝福の力についてジゼルがミーヌさんに聞いている。


「二人は何の祝福を持っているんだ?」

「私は結界のような祝福です。自分や知り合いに掛けて気配を消したり、一応攻撃を防いでくれたりするのですが、不意討ちをされてしまえば、今回みたいにやられてしまいます」

「へぇ」


 あたしみたいにこそこそ逃げ回っているような人間にはかなり便利そうな祝福みたい。


「ラフォン様の祝福は公にされていないので、あまり言いふらさないでもらえると有り難いのですが」

「約束しよう」

「僕も約束しよう」


 陛下とジゼルが頷くのを横目に眺める。


 あたしたちも頷くべきか悩んだけど、あたしたちが話すのはジゼルかグロリアぐらいだから頷いても頷かなくても変わらないし、ミーヌさんもあたしたちのことを気にしている素振りを見せてないので、別にいいのだろう。


「では、ラフォン様の祝福は人形使いです。その人形を人間のように動かしたり出来ます。ラナが出て行った時もラフォン様は人形を沢山動かして、私の祝福で誤魔化していたんですよ」

「え」


 何それ知らなかった。


 そんなことしてくれていると分かっていたら、この間会った時にお礼を言っていたのに、どうして教えてくれなかったのか。


 ここでミーヌさんを責めるのは違う。


 ラフォン様を助けられた時にお礼を言おう。


 ミーヌさんにもっとあれこれ聞きたい欲求はあったけど、疲れているだろうからと途中で切り上げて戻って来た。


「ラナはまだ聞きたいこともあるかもしれないけど、それはまた今度にしてくれ」

「うん」


 別にそれには異論はないから気にしないで欲しい。


 あたしが今気になるのは、あの国の城に忍び込めるかどうかだけ。


 だからはやくジゼルが何とかしてくれるのを待っているだけ。だから、ミーヌさんとそんなに喋れなかったとしても気にはしてない。


 どうしても気になるならまた別の日に訪ねればいいだけよと、気にしているっぽいジゼルを宥める。


 その内元気を取り戻したジゼルはユーリスに仕事だと連れて行かれてしまった。


「ねえ、お姉ちゃん」

「ん? どうかした?」

「あたしたち知らないところで色んな人たちに助けられているんだね」

「そうだね」


 ラフォン様たちだけじゃない。沢山の人たちのお陰であたしたちは今ここにいられる。


 この恩に報うためにもあんな国あっちゃいけない。

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