106
グレースに戻って来てからしばらくが経った。
ミーヌさんは熱が下がってすぐにお城に移され、色々聞かれているそう。
一度ジゼルがミーヌさんの様子を見に行ってくれたら、待遇は悪くなかったと教えてもらえた。
あたしもミーヌさんに会いに行きたかったんだけど、今はミーヌさんのところに沢山の人が話を聞きに行っているから、もう少し落ち着いてからの方がいいんじゃないかって言われてるからまだ顔も見ていない。
ジゼルの話ではだいぶよくなっているみたいだけど、あたしだってミーヌさんが無事なのをちゃんと見たい。
グロリアもちょくちょくミーヌさんのお見舞いに行っているみたいなのに、
ミーヌさんをジゼルの屋敷に連れて来ればよかった。
そしたらミーヌさんの様子も人づてに聞く必要もなく、自分の目で確認出来るのに。
でも、結局はお城に連れてかれてしまったから、ジゼルの屋敷にいてもそう大して変わらなかったかも。
あたしはジゼルにお任せしたら後はすることがなくて、体を鍛えるかユリアとおしゃべりするかしかしていないような気もする。
その間にグレースのことを勉強したり、屋敷の雑用も手伝ったりと何事もなく、ちょっぴり退屈な日々を過ごしていた。
「え、あたしもミーヌさんに会いに行っていいの?」
「そろそろ落ち着いて来たからいいらしいけど、行く?」
「行く!」
ジゼルに元気よく答えれば、笑われてしまった。
ミーヌさんの様子気になっていたのは知っているのに、ちょっと失礼過ぎじゃない?
ジゼルに文句を言いながら馬車に乗って移動する。
今回はユリアも一緒だ。
ラフォン様と一緒に会いに来てくれた時に、ユリアもミーヌさんから色々話を聞いていたりしていたから気になるのだろう。
お城には一回行ったきり近寄ろうともしなかったのに、ユリアもしばらく会ってなかった内に色々と変化があったみたい。
その辺りのことも気になったけど、そろそろお城に着くからまた今度。
今日もお城にいる貴族の人たちに冷たい視線を向けられるのかと思っていたのに、今日はみんな慌ただしい雰囲気を漂わせあっちこっち走り回っているので、誰もあたしたちに注目している人なんていなかった。
「今日何かあるの?」
「ん?」
「なんか城の中慌ただしいんだけど」
「ああ、それは他の国から大使が来るから忙しいんだよ」
「へぇ」
ジゼルに聞いてみればそんな返事が返って来た。どこの国なんだろと聞いてみたけど、全く知らない国だったからあたしには関係なさそう。
あたしたちはミーヌさんのいる部屋へと向かえば、ミーヌさんの部屋の前には二人の兵士が見張りをしていた。
ジゼルはその二人に声を掛け、中に入れるかどうかの確認をしている。
事前に約束とかしてるんじゃないの? 後で聞いてみたら先に来ている人がいるかもしれないからと言われてしまった。
ミーヌさんのところに人がよく出入りしていたのは知っているけど、あたしたちが来た時は人の出入りが少なくなってきたからだって聞いたから来たのに、まだ結構な人の出入りがあるってこと?
それも聞きたかったけど、ジゼルは兵士との話を終えるとすぐに部屋の中に入って行くので、あたしたちも慌てて部屋の中に入った。
「ああ、皆さんお久しぶりです」
「楽にしてくれていいよ」
ソファーに座って本を読んでいたミーヌさんはあたしたちの姿を見つけると、立ち上がろうとしていたので、それをジゼルが止めてあたしたちもソファーに座った。
「怪我はどうだい?」
「もう殆ど治ったので、そろそろ動いてもいいと医者に言われので、最近は散歩も始めたところなんですよ」
もう少ししたら体を鍛え始めるとのこと。
ミーヌさんはゼランと違って補佐というイメージだったから体を鍛えているイメージはなかったので、ちょっとびっくりしてしまった。
けど、ミーヌさんは呑気に話しているからあたしが知らなかっただけで、多分普段から鍛えていたんだと思う。
「ところでラナ」
「あ、はい」
そんなことをのんびり話していたのに、急に話を振られてびっくりしてしまった。
「ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。それより、私が寝込んでる間ラフォン様を探してくれていたんですよね。ありがとうございます」
「いえ、結局ラフォン様は見つかってないですし……」
あの国の姫の情報も全く手に入ってない。
それなのに、お礼を言われる謂れはないと返事をする。
あたしが必要な情報を集められるか、簡単にお城の中に潜入出来たらよかったのに、実際は何も出来ないまま戻って来ただけだもん。
もっと、有能な人材になれたらよかった。
「いえ、ラナは立派ですよ。本当なら妹さんの復讐をしたいところでしょうに、我々のことを気に掛けていただいているのだから」
「……」
何か言わなければと思うものの、結局言葉にならずに口を閉ざすしかなかった。
「それに、ラフォン様の身は保証されていると思いますよ。あの方も祝福持ちですから」
「えっ?!」
何それ聞いてない。
どういうことだとあたし一人が慌てふためいていた。




