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 グレースに戻ってきてすぐに移動の疲れからかミーヌさんが熱を出してしまった。


 移動するのはやっぱりまだはやかったんじゃ? とも思わなくもなかったけど、もうグレースに来てしまったものは仕方ない。


 あたしとグロリアだけグレースのお城に行き、ミーヌさんが教えてくれたことを説明する。


 ミーヌさんはグロリアの屋敷で休んでいる。


「……」


 あたしたちがもたらした情報にグレースの王は頭が痛いとでもいうかのように額を押さえて目を瞑っている。


 この場にいるのはあたしとグレースの王とグロリアのみ。


 急いでお城に来たから、他の人には後日陛下から説明してくれるんだそうだ。


 それは嬉しいけど、陛下のこんな顔を見ていたらやっぱり悪い状況よね。


 グロリアには止められたけど、あの国の城の中に潜り込んでおけばよかったんじゃないかと後悔しそうになる。


 行かないと最終的な判断を下したのは、自分なのにね。


 それなのに、まだああすればよかった。こうすればよかったってうじうじしちゃってどうにかならないのかと思うけど、グレースの王を見ていたらうじうじしない方が変だ。


 せめて反応が違ったらもう少しマシな気分だったかもしれないのに、現実は厳しい顔した陛下が出迎えてくれた。


「……とりあえず、二人共ご苦労だった。しばし休むといい。それから、ミーヌだったか? あの者の怪我の容態は?」

「かなりよくなってきていたのですが、移動の疲れで熱を出してしまい、今はあたしの屋敷で休ませています」

「それならば、熱が下がり次第その者からも話を聞きたい」

「かしこまりました」


 あたしは下がっていいと言われたので、先にジゼルの屋敷に戻って来たけれど、本当にこれでよかったのかとモヤモヤしてしまう。


 久しぶりにジゼルとユリアに会ったのは嬉しいけど、ラフォン様の無事が分からないままだから落ち着かない。


 王様に会った時にあの国の城に入れないか相談しておけばよかった。


 今からでも相談出来ないかな。


 あたし一人じゃ会いにいけないかもしれないから、ジゼルに相談してみよう。ちょうど目の前にいるし。


「ジゼル、今いい?」

「どうかした?」

「あのさ、ラフォン様のこと探しに行ったけど、ミーヌさん見つけて、ゼランが亡くなったったってことが分かっただけで、肝心のラフォン様は見つかってないし、思ったより大事になっちゃったじゃない」

「それはそうだけど、それはラナが気にする必要はないよ。私たちで彼を見つけるか」

「待って、まだ話は終わってないの!」


 話をちゃんと聞いて。


「あ、そうなの。じゃあ、どうぞ」

「それで、ラフォン様の情報は無理ならあの姫の情報ならと思ったんだけど、王都の人たちも詳しくないみたいで、それで、お城に調べに行きたいんだけど、協力してもらえないかな?」

「あの国の城に……」

「あたしだってバレないようにするからお願い!」


 ジゼルは考え込むように黙ってしまった。


 でも、ここで引いてしまったらあの国の城の中に入れるチャンスは二度とないかもしれない。


 そうなったら、あたしはラフォン様のことも分からなくなってしまう。


 そりゃ、復讐も大事だけどラフォン様はあたしにとっては大事な恩人だ。


 恩人の一大事にいつまでものんびりなんかしてられない。


 だからジゼルにお願いしてみているんだけど、ジゼルの顔が段々と険しいものに変わって来ている。


 これは無理かもしれないな。


 でも、城に潜入出来たらもう少し何か分かるかもしれない。グロリアに止められたことはジゼルに言わなくてもいいだろうけど、あたしがあそこで情報を集めたがっていることは伝えておきたい。


 ジゼルの返事がないのは気になるけど、急かして悪い反応だったら嫌だから大人しく待っているとようやくジゼルが口を開いた。


「そのこと陛下には?」

「陛下? まだ伝えてないよ」


 伝えるタイミング逃しちゃったから先にジゼルにお願いしようと思ってと伝えれば、ちょっとホッとしたような顔をされてしまった。


 この顔はもしかしなくとも陛下には伝わらない方がよかったってことよね。


 そりゃ、他の国の城に入り込むのは難しいかもしれないだろうけど、あからさまにそんな顔をしなくともいいじゃないのよ。


「この件はしばらく僕に任せて欲しい。ラナの欲しい答えじゃないかもしれないけど、とりあえず何とかしてみるから」

「……分かった」


 ジゼルがどうにか出来なければどうなるかなんて考えない。


 だって、あたしじゃ何一つ出来ないんだもん。お任せするしかない。


 あたしも貴族だったらジゼルみたいにあれこれと出来たかもしれない。でも、そんなこと夢のまた夢だ。


 あたしに出来ることは、出来る人たちにお願いすることだけ。


 歯痒いけど、出来ることがないんだもん仕方ないよね。


「この話は一旦終わり。それより、最近王都で流行りのお菓子を買ったんだが食べるか?」

「え? あ、うん」


 急に何でと聞きたくなったけど、ジゼルはこの話題が終わりってことで、話を変えたんだろう。


 あんまり深く言ってジゼルを困らせるのもあれなので、急な話題変換でもそれに乗っかった。

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