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 ミーヌさんが現れたのだ。


「ミーヌさんが来たって!?」

「今怪我の手当てさせているから落ち着いて」

「でも……」


 この一月王都を探し回っても全く手掛かりらしき手掛かりもなかったのに、いきなり現れたんだもん。


 驚くなという方がおかしい。


 それに怪我しているって結構酷い怪我なのかな?


 あたしはあたしたちが泊まっている宿に飛び込んで、廊下に出てきたばかりグロリアに飛び付いた。


 怪我の状態が分からなくて、自分の目で確認した方がはやいと思って言っているのに、グロリアは待ったを掛けてくる。


 どうして見ちゃ駄目なの?


 かなり重症でもう助からないとか?


 でも、それなら手当てなんてしてもしなくても変わりないんじゃないの? どういう意味でグロリアはそんなことを言ったの? とグロリアの顔を見れば、落ち着いた表情をしていたので、大丈夫なのかな?


「落ち着いた?」

「うん。ミーヌさんの怪我は?」


 グロリアが口を開くより先に、あたしたちが泊まってる部屋がカチャリと音を立てて開く。


 中から出て来たのは、見たことのない白衣を着たおじさん。


 多分医者なのだろう。


 この医者はグロリアの姿を認めると、グロリアに声を掛け、いくつか指示を出して薬まで渡して行った。


 二人の会話を聞く限りそこまで酷い怪我でもないのかな?


「とりあえず中に入って話をしよう」

「あ、うん」


 そうだった。ここはまだ宿の廊下だった。


 誰も通らなかったからよかったものの、誰が聞いているかもしれない場所で迂闊なことをいうのは駄目だ。


 グロリアが落ち着くようにいったのもようやく理解出来そう。


 あたしがようやくその考えに至ったことに、グロリアは一つ頷くとドアを開けた。


「怪我はもう平気?」

「はい、ご迷惑お掛けしました」

「ミーヌさん怪我は? 大丈夫!?」


 グロリアの背中から顔を出す。


 ミーヌさんは体のあちこちに包帯やらガーゼやらを付けていたものの、ベッドから起き上がって話をしていた。


「ラナもいたんですね」

「ミーヌさん怪我大丈夫ですか?」

「ええ、逃げる時にヘマしただけです。致命傷ではないので、その内治りますよ」

「早速で悪いんだけど、何があったのか教えてくれないかな」


 ホッとしたのもつかの間、グロリアは椅子に腰掛けてベッドに座るミーヌさんに問いかける。


 もう少し休ませてあげた方がいいのでは? と思わなくもないが、あたしもラフォン様に何があったのか知りたいし、ゼランの姿がないことも気になる。


 ミーヌさんの体調を優先するべきなのは分かっているけど、あたしも何があったのか気になるので黙って二人の会話に耳を傾けた。


「私も全てのことは分からないのですが、ラフォン様は陛下にお会いになられた後、行方が分からず、ゼランは処刑されました」

「え」

「私も危なかったのですが、セリーヌのお陰で何とか城を抜け出すことが出来たのですが、このザマで……」


 ラフォン様だけじゃなくて、ゼランまで?


 ミーヌさんも怪我しているし、みんな大変な目に遭ってたなんて思ってなかった。


 いや、ラフォン様と連絡が取れないと聞いた時から何かあったのかもとは考えていたけど、予想の何倍も悪い。


 どうしてこうなったのか。


「──ラナ、ラナ!」

「え?」


 体を揺さぶられてハッとなる。


 ハッとしたらグロリアとミーヌさんの視線があたしに注がれていた。


「あ、ごめんなさい」

「いいよ。びっくりしただろう」

「そうですね。後は私たちだけで話し合いをしますよと言っても私に話せることは少ないですが……」

「いえ、大丈夫ですすみません」


 考えるのは後でいい。今はミーヌさんの話を聞かなくちゃ後悔してしまうかも。そんなの嫌。


 あたしは大丈夫だからといえば二人は心配そうな顔をしたけれど、しっかりと二人の顔を見詰めれば納得してくれたっぽく話を始めたのでホッとする。


「それでは話を続けますが、お二人はこれからどうしますか? 私は出来たらグレースに助力を求めラフォン様の救出に協力してもらいたいです」

「……今はこれ以上の情報はなさそうか?」

「申し訳ありません。私を逃がしてくれたセリーヌがどうなったかすら分からないので、私にはこれ以上のことは何も言えません」

「……分かった。一度国に戻ろう」

「えっ」

「ラナ、あたしたちに今出来ることはない。それならこの情報を持ち帰って方針を決めた方がいい」


 グロリアの言い分は分かる。


 分かるけど、分かりたくない。


 だってミーヌさんの話ではラフォン様がかなり危険な状態ってことでしょう。


 だったらラフォン様のことを助けたい。でも、どこにいるのか分からないからグロリアの言う通り、今はすることはないんだろう。


 納得しなきゃいけないんだろうけど、納得したくない。でも、上手い考えが思い付く訳でもないからグロリアに言われたとおりついていくしかない。


「……とりあえず、ミーヌの怪我がよくなるまではこっちにいるからそれまでにラナもそれまでに覚悟を決めといてよ」

「……わかった」


 まだちょっとだけ猶予があるのならそれまでにラフォン様を見つければいい。


 ミーヌさんの話ではどうなったか分からないけど、王都から移すのならそれなりに目立つはずだから多分まだ王都の中か城の中にラフォン様はいるはずだ。


 城の中に侵入出来るか分からないけど、何もせずにグレースに戻りたくはない。


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