表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/122

101

 シェスタ・マーベレストに入って一月程経った。


 その間にラフォン様の屋敷から騎士たちが減ることはなく、王都は依然様々な臆測が飛び交っていて、何が本当のことなのか分からない。


 ある時はラフォン様が平民と結婚するのに失敗して、駆け落ちしようとしたのを見つかって、屋敷から出られないように見張りがつけられているとか。


 ある時はラフォン様が悪いことをして捕まっているから屋敷の方にも調査の手が伸びているとか色々と言われている。


 耳に入れるのもおぞましい噂まであって、本当に何を信じればいいのかも分からない。


 そういう噂は耳にしたくないけど、本当のことだったらラフォン様の命はもうないかもと考えたら、恐ろし過ぎてじっとしてられない。


 何度もそういう噂ばかり耳にするので、気がおかしくなりそうだ。


 交錯する情報の中に手掛かりの一つや二つ転がってないのかと、地団駄を踏みたくなる。


「ここまで情報に一貫性がないと、本当に分からないね」

「一回帰るにしても、また来ると結構掛かるから戻りたくないんだけど」

「それは分かっている。誰か内情を知る者がいればいいんだけど、連絡つきそうな人はいる?」

「分からない」


 ちょっと考えてみたけど、本当にあたしには分からない。


 ラフォン様のお屋敷は包囲されているから近付けないし、それ以外だとあたしはお城ぐらいしか分からないけど、あっちはラフォン様のお屋敷以上に近寄れない。


 向こうはあたしを捕まえようとしているから、ノコノコ行けば簡単に捕まってしまうかもしれないし、出来たらそれは避けたい。


 まだ復讐も果たしてないのに、捕まるなんて絶対に嫌だ。


 あの王子は絶対に酷い目に合わせるけどね。あたしはこの国が滅んだって構わないと思っていたけど、ラフォン様たちが無事ならばこんな国どうでもいい。


 滅ぶのなら滅べばいいし、続くのなら別の人が王位につくのならそれはそれでありだと思う。


 でも、あの王子だけは論外。


 ユリア一人幸せに出来ない人が国民のことなんか考えられる訳がない。


 だから、ラフォン様が王位についてくれたらいいとは思っていた。


 でも、ラフォン様がどうなっているのかも分からない今、


 それ以外だと出入りの業者の一部をちらりと横目に見たぐらいで、名前なんかは分からないので、多分役に立たない。


 というか、そっちにも捜査の手は伸びている可能性もある。


 そっちはグロリアが行ってくれると言うので、お任せする。あたしは地道に噂とか、ラフォン様のお屋敷から誰か出てこないかと定期的に見張っておく。


 だけど、見張りの騎士が変わるだけで、ラフォン様のお屋敷は依然として静まり返っているだけで、中の様子を窺い知ることは出来そうにない。


 何も分からないまま時間だけが過ぎていくのは、不安が膨らんでいくみたいで、気持ち悪い。 


 まるでお腹の中に石が詰まったような気になる。この不安が杞憂であればいいけど、そうじゃなかったら?


 もしももしもと悪い方に考えてしまって本当に落ち着かない。あちこち動いても悪い噂ばかり耳に入って来ちゃって、気が滅入る。


 でも、何もしないのはしないで不安になる。


 今は悪い噂でも何でも集めなくちゃ。


 本当にラフォン様の身に何か起きてるんだろう。


 ちょっとだけでもいいから誰か教えて欲しい。


「お城はまだ考えなくていいよ。それは最終手段だからね」

「うん。ラフォン様は無理でも、ミーヌさんかゼランに連絡が取れればいいんだけど……」


 誰か屋敷から出て来れないかな。


 こんな時どういう風にするとか決めてなかったのかな?


「ねえ、ラフォン様と連絡取れなくなった時はどうするとか決めてなかったの?」

「ああ、うん。しばらく待ってもあの人から連絡がなければ、失敗と見なすとは言ってあったけど、みんなあんな風になっちゃったでしょ」


 言われて確かに騒ぎになってしまっていたなと思い出す。


 だから、あたしがラフォン様を探すと言ってもわりかしすんなりと出てこれたのは、よかったと思う。


 だけど、対策も何も分からないまま出て来たってことになるから、これからどうしていいのかも分からない。


 グロリアはとちらりと視線を向ければ、何事か深く考えているみたいで、あたしの視線には気付いてなかった。


「どうするの?」

「まだ諦めるにははやいよ」


 それは分かってる。


 だからあたしもあっちこっち足をのばしてみたり、何か手掛かりらしきものはないかと、王都の人たちに声を掛けたりしている。


 でも、こんなに情報かないと不安になるなっていう方がおかしい。


 ラフォン様の傍にいたらこの不安も違うものだったかもしれないけど、それはそれで違う心配とかがあったのかも。

 

 何をするのが正解なのか。


 この不安をなくすには、何か新しい情報を得られればいいのだけど、そんなの都合よく転がっている訳なんてないでしょと考えていたら、その新しい情報は向こうから飛び込んできた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ