「カラス」 「斧」 「白」2
「時も炎も操れなくたってよおおおお! てめえを這いつくばらせる『能力』は持ってんだぜえええええ、こっちはよおおおおおおおおおお!!」
脚を思いっきり高く上げ、そして振り下ろす郷田。かかとが目の前に迫る。俺の頭蓋を砕こうと不可抗力の重力以上の力で。
「うおおおおおおおおお!! 俺は親友を簡単に『ゴミ』にしてしまえる『能力』者だああああああ! こんなの普通の人間にはできやしねええええええええ!! 『特別』なただ一人の俺だあああああああああ!!」
世界がスローになる。俺の両手は凶悪な靴の裏には届かない。カラスが空を羽ばたいた。
骨の砕ける音が響く。静寂の隙間に差し込まれた暴力的な振動。俺の目の前、郷田の頭のてっぺんに深々と突き刺さった斧。
「ほひょっ?」
郷田はぴたりと動きを止め、俺にロックオンしていた視線をぐるぐるとさまよわせている。振り下ろさんと力を込めていたかかとが俺の頭を逸れ、どさりと肩に落ちる。
「こんな『能力』、使うまいと思ってたんだがな……」
カーカーとけたたましい鳴き声が頭上に響き、ばたばた羽音と共に黒い影が地面に落とされてゆく。
「『カラス』を『斧』に変える『能力』」
地面を飛ぶ影の鳥が形容しがたいフォルムへと変貌していく。幾重にも重なるつんざく風切り音が間断なく地上への衝突へと変化していく。やつの体中の骨が頭蓋に続けとばかりに重い金属の塊に次々に砕かれ断たれていく。残った部位ですら砕けたアスファルトのショットガンに蹂躙されていく。
「特別なお前の『能力』よりも俺の『能力』の方が強かったらしいぜ」
立ち上がった俺が踵を返すと、ぐしゃりと地面に倒れる音が響いた。