夢想花
『地球のアップデートが完了しました』
ある日の正午きっかりに地球上の全ての人の脳内にAI音声の様な声でこの文言が流れた。
「へ?」
と、間の抜けた声を上げてしまったが部屋にはオレ1人しか居ないので別段気にする必要は無い。
しかし、幻聴にしては余りにもはっきりと聞こえて来た。
「うーん・・・」
普段ならば気にも止めなかったかもしれないが暇を持て余しベッドの上でスマホをイジっていたので開いていた画面を閉じてSNSで検索を掛けてみた。
すると、トレンドはそれ関連のモノがずらっと並んでいた。
「え?やっぱマジだった?」
食い入る様に呟きを読み進めていく。
「ス、ステータスオープン」
恥ずかしい気持ちを押し殺し口にしてみたがやっぱり小っ恥ずかしい・・・。
冗談半分で信じてはいなかったが予想に反して目の前にゲームで見慣れたステータスウィンドウが現れた。
「マジか・・・」
──────────
窓岡広志 Lv.1
HP10 MP10
体力:1[+]
力:1[+]
知能:1[+]
敏捷:1[+]
残りSP0
skill:瞬間移動
──────────
SPってのは多分ステータスポイントで、[+]ってのはレベルが上がったらSPが入って自分で好きなステータスに割り振れるって感じだろう。
トン───。
『スキルポイントが不足しております』
「うん」
一応、押してみたけどやっぱりそんな感じか。
と言うか・・・物理的に触れた・・・すげぇ・・・。
「瞬間移動」
あれ?何も起こらない・・・。
「レベル上げないと無理とかか?う~ん・・・」
トン───。
「お?」
──────────────────────────
目的地を正確に思い浮かべ瞬間移動と唱えると発動する。
一度でも訪れた事がある場所のみ発動可。
──────────────────────────
瞬間移動をタップしたらスキルの説明文が書かれたウィンドウがポップアップした。
「なるほど」
とりあえず1階のリビングにでも移動してみるかな。
今日は家に誰も居ないはずだし。
「瞬間移動」
ドン───。
「おぉ・・・」
本当に瞬間移動する事が出来た。
この能力を有効活用するにはどうすれば良いだろうか?
とりあえず浮かぶのは高校の通学時間が一瞬になるから睡眠時間が15分長く取れる事だ。
それ以外は何だろうか・・・?
と、考えながら歩いて部屋に戻っていた。
「あ・・・折角なんだから瞬間移動で戻れば良かった」
ただ、直ぐ浮かぶだけでこのスキルの危険性はいくつかある。
瞬間移動した先に物があった場合。もしかしたら壁の中にめり込んでしまったり、身体と物が融合してしまう可能性もある。
融合はしないまでもぶつかった衝撃があるかもしれない。
スキル説明にも『目的地を正確に思い浮かべ』とある。
正確じゃなかった場合、発動しないのなら問題無いが見当違いの場所に飛ばされる可能性もある。
とは言え、危ないからと使わない訳にはいかない。
これから世界は一変する。
その新しい世界に取り残されない為にも早い段階で使い熟し適応していくべきだ。
「よし・・・」
瞬間移動で玄関に向かい靴を取り、着替えも済ませ髪の毛も整えた。
リビングや玄関に移動した時よりも長くしっかりと思い浮かべ唱える。
「瞬間移動」
「続きまして。先日起きた世界同時多発テロは瞬間移動能力者による事故だった事が判明しました」
「地球というのは自転してまして。赤道上が最も速く、時速で言いますと約1700キロメートル。日本のある辺りで1500キロメートルくらいになります」
「なるほど」
「分かりやすく言いますと、赤道上から南極点に瞬間移動した場合」
「はい」
「時速1700キロメートルで移動していた状態から、ほぼ0キロメートルの状態になるので」
「はい」
「瞬間移動を終えた瞬間に1700キロメートルで吹っ飛びます」
「それは・・・」
「逆の場合もです」
「はい」
「止まっている状態から時速1700キロメートルの地面に着地する訳ですから」
「はい」
「どちらにせよ即死ですねぇ」
「と、という訳で○○大学の篠原教授に解説して頂きました。ありがとうございます」
「はい」
「続きまして次のニュースです」
細々と書いてはいるんですが久々の投稿です。
思い付きで練らずにササっと書き上げないと最後まで書ききれない今日此の頃。
お読み頂きありがとうございます(`・ω・´)