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私と幼馴染  作者: 穂菜
6/7

私とドーナツ

 ドーナツの穴から覗いた幼馴染の頭に立派な犬の耳が生えていたので、私は今日のおやつを諦めた。髪と同じ真っ黒な毛の生えた犬の耳をぴくつかせながら、穴の向こうの幼馴染はドーナツを齧っている。その目はスマホの画面にしか向いていないから、ドーナツの穴を必死で覗いている私の行動はバレていないはず。

 ならばと私は立ち上がり、幼馴染の後ろへ回った。ドーナツの穴から外れると幼馴染の頭はいつも通りに戻ってしまうけど、また覗けばやっぱりそこには黒い犬の耳が生えている。一度深呼吸してからその後ろ姿をドーナツの穴に収めてみた。大きな尻尾が軽やかに左右に振られていた。ふさふさで黒くて大きい尻尾が、リズミカルにわっさわっさと。耳もぴくぴくと動いている。なにこれ可愛い。

 思い切り吹き出してしまって、流石に幼馴染はこちらを向いた。

「そろそろお前の奇行を観察日記として書き留めておいた方がいいんだろうか」

 今は確実に君の方が面白いよ。と返したけど、通じたかどうかは分からない。笑いすぎて苦しい。どうにか呼吸を落ち着かせてから何を見たのかを伝えると、幼馴染の眉間に深い皺が刻まれた。尻尾は神経質そうに床を撫でている。それはそれで可愛い。

「ドーナツの穴とはなんなんだ。ドーナツは無いのに穴はある……」

 幼馴染が謎の思考にはまってしまったせいで、私は放置されることになった。暇だ。パクリとドーナツにかぶりついてしまってから、やってしまったと後悔した。

 穴がなくなってしまったからあの耳はもう見られない。写真撮っておけばよかった!

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