私と星空
私の幼馴染は頭が良くて、私には分からない世界で生きている。棒状のスナック菓子を見てなぜ宇宙の始まりに話が飛ぶんだろうか。分からない。
頭だけじゃなくありとあらゆる才能に恵まれた幼馴染はとても突拍子がなくて、気が付いたら知らないところに連れてこられているのは日常茶飯事だ。なぜ断らないのかとよく聞かれるけれど、面白くないことになったことがないからとしか言いようがない。
今だってそう。真っ黒なインクに大粒のラメが散りばめられた空に浮かんでいるなんて、夢で出てきたらラッキーだなあって思うくらいのものを見ている。
「すっご。宇宙だ」
「宇宙には空気がないから星は瞬かない」
「いっぱい光ってるよ?」
「お前がいるからな」
見渡す限りの星空に、地面になるような場所はどこにもない。足元にはしっかり立っている感覚があるのに、一歩でも踏み出したら落ちていきそうな寒さがある。繋いだ手をぎゅっと握ったら痛えと文句を言われた。嘘だ、りんごだって握りつぶせるくせに。今日もジャムの蓋が開けられなかった私程度でどうにかなるわけないの、知ってるよ。
しばらくそのまま足元の空を見ていたら、突き飛ばされた。落ちた。部屋の床に。
私は落ちてきた。空からじゃなく、ベッドから。
顔の横に駄菓子のゴミが落ちている。ちゃんと捨ててって毎回言ってるのになあ。