俺には聖女のオーパーツが必要だ
神代から続く皇国の地に大量に眠るオーパーツ、発掘は続いている。
その強力な兵器を前に、この国は常に劣勢なのだそうだ。
クラスごと異世界に召喚されたのは中学2年の春だ。
俺の適職は『暗殺者』、食傷気味のテンプレだった。
戦場で使い道がないと2年も放置されていたのに、皆の食べ残しを入れた器と共に、謁見の間へ行くよう申し渡された ――
無詠唱で常時発動型の完全回復範囲魔法・エクストラリヴァイブ、狂った性質の魔法を見出され皇国史上唯一『聖女』の称号を持つ女の誘拐、最低限そいつが護る魔宝を奪ってこいと命令された。
俺は『逃げ出す口実ができた』と内心ほくそ笑んだが、今は違う。
想い描いた地へ至る門を現出する、魔宝。
それが本当なら、異界との行き来も可能。
「何者ですか!」
「凄腕暗殺者だ」
これが聖女か。
若い、ガキだ。
見たとこ。
十代前半?
「凄腕とか自分で言う?」
「職業欄に表示されたんだよ」
召喚された俺の適職は暗殺者。
奴等はガッカリ、他の連中は派手な肩書きに大喜びしていたが、すぐに幾分マシだったと理解した。戦場で虐殺、魔物から毒や呪い、戻ってくるたび肉体も精神も疲弊していく同級生。
聖女様を誘拐して一発逆転ねぇ。
2年も冷や飯を食わされて、立派にお仕事するか?
その上から目線が劣勢の根本原因じゃねぇのかよ!
スッと移動し背後にまわる、擦れ違いざまに放った短刀の一閃は薄暗い大広間を切り裂く風の刃となり、聖女の左足首をスッパリ切断。
「これ以上、痛い目にあいたくなけりゃ 魔 宝 ――
左足は繋がったまま?
「相性悪かったね~打撃や魔法は死ぬほど痛いのに」
回復魔法か、クソッ!
二本目の短刀を左手で抜きながら一気に距離を詰めて滅茶苦茶に斬り付けると手足が周囲に散らばった、最後、真一文字に薙ぎ払う、驚愕の表情がズルリと下がり胴体と泣き別れになる。
ゴッ!
煉瓦敷きの冷たい床に頭蓋骨が落ちる音。
人 を 殺 し た ?
全ての感覚が麻痺していく。
2本の短刀が落下する音が、2度響いた。
「 痛 ぁ い !! 」
……え?
目の前の聖女を押し退けると、頭を抑えて恨めしそうに見上げている聖女を4人の聖女がナデナデしている。じゃ、この俺が両手で持ってる聖女は、誰?
聖 女 × 6 ?
「範囲が2ミリの完全回復で、勝手に治るの」
「それ治るってレベルか? 増えてるだろ!」
「なぁんだ、精々高校生じゃん」
「中学生に言われたくねぇよ!」
ん?
「「 召 喚 者 ? 」」
瞬時に理解した、魔宝で元の世界に戻れない。
なんか用意するわ~と2名の聖女が出て行く。
茫然自失。
「毎日ビーガンさせられてて」
「ビーガン。宗教的な儀式?」
「バッタみたいに草食なのよ」
その言い方。
ズッと啜る。
懐かしい味。
五臓六腑に沁み渡る……お味噌汁?
「俺さぁ」
「なに?」
「コッチに鞍替えしていい?」
6名の聖女は「お好きにどうぞ」とニッコリ微笑む。
決意した、 も う 帰 ら な い 。
「範囲魔法の範囲が2ミリじゃ使い道ないよなぁ」
伝説級の回復魔法が使い物にならないとわかり、冷遇どころか塔に押し込められたまま一歩も出歩いたことがなかったという。食事用のナイフでやっと脱獄して、ばったり出くわしたのが暗殺者。ツキに見放されているとしか思えない。
「困った……治るどころか6人に増えちゃったし」
「いきなり問題発生か?」
「ベッド1つしかないの」
お姫様っぽいベッド、天蓋をペラリとめくるとシングルサイズにしたって横幅が足りない。1mもないから寝相が悪ければ一人だって妖しいくらいだろう。7人が並んで眠るのは、根本的に無理と思える。
「どうやっても3人が限界だ?これは面積の問題、いやぁ大問題だな~♪」
「じゃ3、3、暗殺者かな」
「余裕持って2人ずつは?」
「2、2、2、で。暗殺者」
……いつかは最後も複数形ッ!!