表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Code-Y/T The Beginning Of War  作者: ワタ コウ
3/6

第一章 2話 出会い

 彼が逃避生活を始めてから三ヶ月が過ぎようとしている。。ユウタが逃避生活をする理由は二つあった。


 ひとつは、ホログラフィックニュースで事件の目的がユウタ自身だと発覚してから、毎日のようにマスコミが家に押しかけてきて、そのせいでろくに身動きもとれないような状況が危険だと思ったこと。


 もうひとつは、あの朝のような嫌な予感がして、家にいたら不味いと誰かがささやいているような気がしたからだ。


 両親が死んでしまったことに対する悲しみは決して消えはしなかったが、以前ほどひどく打ちひしがれる事もなく、その事実と向き合えるようになっていた。


 そんなわけで現在絶賛逃避行中のユウタは、所持金が尽きて本格的に困っていた。


「さて、今日は何を食べるか・・・。」


薄い毛布から這い出したユウタは500WPの財布を見て、


「今日もフルトミーガム・・・。」


と小さく呟き、軽くため息をついた。


(トミーガムかぁ・・・。安いし一つでお腹いっぱいになるけどフルーツ系の味しかないし、ずっと食べてると吐き気してくるんだよな・・・。ま、そんな文句言ってらんねーか・・・。)


ユウタはゆっくりと立ち上がり、近くに建っているオートマチックスナックストアに200WP入れた。


チャリンチャリーン、ガタッ。


「おつりなし、金額ぴったり。」


そう言いながらユウタは回収口に手を突っ込んだ。


(この包装紙を手にするのも、もう何回目だろう・・・。)


それから、出てきたルービックキューブ程の大きさの箱を開け、大量に詰まっているガムの一つ手に取り食べた。


彼は、吐き気をこらえながらなんとかガムを飲み込んだ後、改めて自分の周りを見渡してみた。


「気が押しつぶされそうになるほど高いビル、何もない狭いT字路、前には第三地区の実験廃棄倉庫入り口、右はテルース観察望遠鏡の操作室へと続く階段、左はスナックストア・・・。完全に裏口。ここならだれに見つかることもなさそうだ。」


そう呟いて、再び彼はうたた寝を始めた。


(ここなら、このまま寝ても問題なさそうだし・・・。とりあえず今日もここで寝るか。)


そう思って目を閉じかけ、安全を確認してからもう一度目を閉じ、今度こそ寝た。



 目を覚ますと、真夜中だった。

とはいっても、テルース勢力では、一日中テルース星が空のほぼ中央をうごめいているので、一日を睡眠10時間活動20時間の計30時間として作動している街灯で、昼間かどうか判断していた。


「昼飯食えなかったなぁ・・・。ま、食費削減になったからいいか。」


ユウタは特別腹を空かせていたわけでもなく、しばらく探索してから何か食べることにした。


(まず、一番気になるのはテルース望遠鏡だよな)


 まだ生まれたばかりの頃に、アポロン勢力の人間に襲われたユウタは、アポロンやテルースに関しての事柄をよく聞かされた。そして、テルースの話を聞くうちに、空の真ん中を八の字に動く溶岩の惑星に興味を持ったのだ。


足早に階段を駆け上ったその先には、ウラン原子のデータ配列によりロックされている原子錠があった。


幸い、ユウタは科学者であった父の唯一の遺品であるエレメントアンロッカーで原子錠をかんたんに解除することが出来た。


プシュー!


加圧ロック式のドアが開いた。


ドアの向こう側からは冷たい空気が流れ込んでくる。


ドアの向こうには、10メートルほどの金属のトンネルがあった。


ユウタはそこへ迷わず突き進んでいった。



今の彼は、テルースを知りたい一心で動いていた。

なぜテルースは馬鹿にされるのか。

なぜテルースはあんなにも弱々しく光るのか。

そして、なぜ自分たちはテルース勢力なのにテルースに住めないのか。

考えれば考えるほどユウタの足取りは早くなっていった。



「ここだな。」


ユウタが立ち止まった先には暗証番号を入力するキーパッドとごつごつとしたドアらしきものがあった。


「これは・・・マックゥエーロー・ロックか!」


ガチャガチャ


ユウタがキーパット外のカバーを金属製の棒で外した。

その後、マックゥエーロー・ロックのメモリー部へ2粒のハンダをハンダ付けした。


(確か、マックゥエーロー・ロックは素粒子で構成され、量子力学に沿ってつくられていて、シュレンディンガー方程式に乗っ取った確率論で確立されているクォーク錠だっけか?)


そんなことを考えながら彼は、二つの電極にエレメントアンロッカーを取りつけた。


ウィーン、ピピピピッピ!

ガシャン!シュー。


「開いた!開いたぞ!」


彼は喜びながら操作室へと駆け込んでいった。


目の前の椅子に腰掛け、観測装置を起動した。

すると、画面の電源が入り、望遠鏡の保護カバーが外された。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

      テルース観測装置ver3 操作コマンド一覧


        テルースズーム:望遠鏡拡大率・高

        テルースアンズーム:望遠鏡拡大率・低

        テルーズムーブビュー(座標入力):表示範囲変更

        テルーズショウビュー(画像形式):画像表示

         ・

        ・

        ・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(これはバージョン3なのか、じゃあ初代じゃないんだな・・・。)


「とりあえず、テルーズショウビュー、実行!」


カタカタカタ、タン!


ユウタがコマンド実行キーを押した。すると、次の瞬間、



ピロピロピロピロ、ピーッピー!



鼓膜を劈くような音量で、警報装置が作動した。


どうやらこれはトラップだったようだ。


(クソ、警備機関にバレたらBTOSにバレたも同然!さっさと脱出しないと!捕まったら何されるか想像もつかない!)


急いで部屋を出た彼は通路にでかいゴミ入れらしきものがあることに気づき、その中に飛び込んだ。


ドンッ、ガンッ、ガンガン!ドンッ・・・。


ドスン!


彼は散々身体をぶつけまくった末に、ようやく倉庫らしきところに脱出した。

「ッテーな!どこだここは?」

色々とごちゃごちゃ置いてある一辺10m程のコンクリートの部屋。

彼が辺りを見回すと、一つの張り紙を見つけた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

|テルース勢力第三地区実験廃棄倉庫|

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ここは・・・廃棄倉庫か!?」


そう、あの穴は第三地区の実験廃棄倉庫につながっていたのだ。


(廃棄倉庫と言うだけあってすごい数のガラクタだな。)


ユウタはゆっくりと立ち上がり、一つ一つのガラクタを細かく見ていった。


「これは結晶化しかけたクォーツ属性の物質。まだプ二プ二してるゼリー状の部分が残ってる。向こうにあるのは未完成のエアーバイクのエンジンかな?にしても円錐型のエンジンなんてあったのか。どんな風に動くんだろう?それで、これは・・・!?。」


彼は思わず目をそらした。


(まさか・・・。いくら実験だからってさすがにあり得ない・・・はず・・・。)


もう一度見てみる。


すると、そこには確かに小柄な少女が横たわっていた。


腹には浅い30センチほどの傷があり、そこから血がジワジワと染み出していた。


(とにかく、出血を止めないと)


ユウタはよっこらしょと立ち上がると、少女のところへ歩いていった。


(死んでは・・・いないよな。)


彼女の鼻先に指をあてる。


かすかにだが、まだ息があった。


「ひとまずは大丈夫そうか・・・。よかった。」


そういって彼は、自分の着ている服を脱いで裂き、それを包帯のように彼女の傷跡へ巻き付けた。

「後はここを固く結んで・・・。」



ピリリ!



(!?)


ユウタは一瞬、自分の息が止まったような気がした。


(なんだ?今のは。)

(まぁ、いいか。それよりもこっちをさっさと仕上げないと。)


ギュッ。


彼が最後の結び目を結び終えた瞬間、



ゴオォォォ!

ヒューーーン、ビューーーーー!



彼の背後で、あの日の爆発じゃ比べものにならない程の勢いでまわりを吸い込む直径1m代の黒い球があらわれた。


ユウタは驚き、そして叫んだ。


「なんなんだこれは!」


(テルースの新型武器か!?いや、それは無いか。敵味方かまわずすべてを飲み込むだ・・・なん・・・・・・て・・・。)


 廃棄倉庫の空気をほとんど吸われ、ユウタは気を失った。

 ユウタと謎の少女は黒い球体に吸い込まれ、想像を絶する速度で黒い球に落ちていった。

 彼らの身体は既に量子の何倍も細かく分解され、黒い球に向かって落ちていった。

 ただ不思議なことに、いくら落ちようとも彼らの破片は決して球上に触れることはなかった。

 そして、もはや黒球に向かう一筋の光にしか見えなくなった彼らの身体は第三地区廃棄倉庫から消えた。



 ヒュオォォォー。



 彼らが穴に吸い込まれた直後、用がなくなったかのように黒球は消えていった。

 誰もいない10m程の地下室は、ただガラクタと段ボールがいくつか散らばっている静かな部屋へと戻った。

 第三安全警備機関、Aクラス職員率いるアルファ・犯罪捜査部隊がそこへ突入したのは、そのわずか数秒後だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ